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CHILD RESEARCH NET FORUM


子そだてクリニック Q&A


[KOSODATE: 00443] /一覧へ戻る
題 名: アドバイス:天気に対する不安と恐怖が登校の障害に(小3男)
投稿者: はじめっちの母
日 付: 1999年 09月21日(火) 09:58:32

私は7ヶ月の男児の母で育児休業中ですが、児童を専門とした精神科をやっております。悩める母さんの記事を拝見して、このフォーラムの性質上、私からは医学的な治療上のアドバイスはできませんが、以下の点が指摘でき、今後の手がかりになるのではとの印象を持ちました。参考にされて下さい。
1) 文中、情報がやや足りないのですが、お子さんはカウンセリングを受けていたとのこと。そこはどういう方針で治療をしていたのでしょうか。そこでの効果はありましたか。
2) 「学校恐怖症」「登校拒否」という状態でお子さんを考えているようですが、文章の内容を客観的にみると、「分離不安」「「強迫性障害」「不安性障害」といった症状に近い様子も伺えます。以下の点で思い当たるところは、ありますか。

@ 3歳迄の間に入院生活が繰り返され、「母子分離」が頻繁、長期にあった。
A 一日中「天気」の事を気にしていたり、天気が悪いことに関する様々な空想や想像は、いくら周囲の人が気にしないように働きかけても、その考えが頭を離れないようすである。
B 基本的に引込み思案、怖がり、不安を訴える事が多い性格。または、心配事について、過度の保証をもとめる。または時々孤独を訴えるか、独りでさびしそうにしている。
C 登校以外にも親と離れることに関して不安を抱く。(例:母親が長距離の旅行をするとか、長時間の外出から帰ってこない時など)
D 不潔なものに対する恐怖や、手洗いをしつこく繰り返す行動がなかったか。
E 悪夢、チック、夜尿、遺尿、夜泣き(夜驚症も含む)などの症状うち、どれかが出た時期があった。
F 「不眠」や「食欲低下」「引きこもり」などの状態。
G 心室中隔欠損症の治療の制限や注意のため、親子間に「緊張」や「不安」を背景としたコミュニケーションがされ、その結果、「厳格ぎみ」か「過保護ぎみ」の親子関係が続いていた可能性。(実際には小児科で慢性疾患の治療をうける子どもにはよくあることなのです)

学校の先生が変わってから症状が再燃してきたというニュアンスで記述されていましたが、「分離不安」や「強迫性障害」「不安性障害」は何らかの生活ストレスで増悪することが多いのです。
私が気になったのは「天気が悪い」と「不安」や「恐怖」を感じる心理状況です。子どもは自分の気持ちを論理だてて考え、言葉にして表現する能力が未熟なため、心の中に問題があっても、ある意味で「象徴的な外界のもの」に恐怖や不安を感じる傾向があります。悩める母さんの息子さんは本当に風や雨が恐いのでしょうか。お母さんにしっかり抱きしめられていても風や雨や暗い空が恐いのかなあ。一人ぼっちで小児科に入院していた時のことを思い出すから?それとも「恐い世界で一人になること」を想像するだけで不安になるのかなあ。「こどもの世界観」にたっていろいろと考えてみました。
悩める母さんは息子さんが「恐い、恐い」とパニックになって訴えていたら、「大丈夫だから!」と叱咤したり、自分自身が動揺して、何とか学校に行かせなければと必死になっていませんか。これはもう試されていらっしゃるかも知れませんが、まず、抱きしめてあげ、「そうなんだね、恐いんだね、」と穏やかに目をしっかりみつめて繰り返しきいてあげる事も大切だと思います。もちろんこの対応は根本的な治療にはならないかもしれませんが、一般にも、分離不安の子どもをしかって無理に引き離しても、あまり効果はないようです。むしろ、本人が不安に耐えていた体験を「よくがんばったねえ、つよいねえ」と、プラスの体験として方向づけてあげ、本人が「不安を感じる自分を受け入れてもらった」「不安を感じてもいいんだ」「それを我慢できる自分がしっかりあるのだ」と自覚できる状況をつくってくことが有効な場合もあります。
悩める母さんの記事からはかなり情報が限定され、ひょっとしたらお子さんの状況にそぐわない表現もあるかもしれません。ですが、ここまで問題が長期化し、症状がはっきりしている以上、「しつけ」や「教育」といった領域では根本的解決にならないのではと思いました。周りが振り回されて疲れはじめ、本人もそれによってもっと追いつめられるという悪循環がおきていると思います。漫然と対処法を考える前に、「なぜ」「どの様に」という部分の分析がしっかりあったほうが良いと思います。既にどこかでコンサルトされているのでしたら心配ないのですが、もしためらっているのでしたらやはり一度、児童専門の精神科にコンサルトされた方がいいと思います。本人が病院にいくのを嫌がる場合は、まず保護者のみの相談から解決の方法を考える事もできます。特に「強迫性障害」「不安性障害」では薬物療法が有効な場合もあり、カウンセリング(低年齢の子どもには描画や箱庭療法なども行います)、親へのアドバイス(親指導)と併せて本人の生活上の症状をいかに緩和するかを目標にしていくことになると思います。