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 生体アミン神経系の機能障害から子供の脳を守る
 ―精神遅滞・発達障害と乳幼児突然死症候群の発症機構―

岡戸信男、成田奈緒子、成田正明
筑波大学基礎医学系・神経生物学研究室

■ 要 旨

 ダウン症やフェニールケトン尿症などの多くの小児神経疾患やストレスなどの環境要因によって脳内生体アミン濃度が低下することが知られていた。その生体アミンは、シナプスを形成維持する機能をもつことを明らかにした。その結果、小児神経疾患や環境要因による精神遅滞や発達障害は、特に生後1年のシナプスが過剰に形成される臨界齢に脳内シナプス密度が低下することにより発症すると考えられる。さらに乳幼児突然死症候群(SIDS)でもセロトニンは発症機構にかかわる物質であることが明らかになった。セロトニントランスポーター遺伝子のプロモーターの多型性にはS、L、XLがあるが、SIDSではLとXLが多い。さらにSIDSの危険因子の多くはセロトニンの機能を低下させる要因となりSIDSの発症の一因となると考えられた。生体アミン機能を賦活して精神遅滞や発達障害をなくし、セロトニン神経機能を高めることによってSIDS を予防できるような研究をすすめることが今後の課題である。

■ 1. 脳とコンピューターは何がどう違うのか


図1 拡大図はこちら
 脳とコンピューターは信号を特定の標的に伝える点対点型回路を使っている。これがなければ計算や論理回路の機能は果たせない。点対点型の回路に加えて、脳には広範投射型の回路(?)がある(図1)。広い範囲の不特定な標的に線維を送る投射系である。点対点型回路における神経細胞間のつなぎめであるシナプス(図2)の電子顕微鏡観察では、シナプス小胞をもつ前シナプス構造の直下に後シナプス構造があり、前と後構造が厳密に1対1の対応をしている。一方、広範投射系では比較的少数(注1)の神経細胞からでた軸索が、限りなく分岐を繰りかえして、広い範囲の脳部位に投射する(注2)(35, 123)。広範投射系は神経伝達物質(生体シグナル分子)として生体アミンとよばれる物質を含有している。生体アミンには大きく分けて、アセチルコリンとモノアミンがある。更にモノアミンはインドールアミンとカテコールアミンに分類される。インドールアミンにはセロトニンとヒスタミン、カテコールアミンにはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンといった物質がある。


図2 拡大図はこちら


 生体アミンはどれもよく知られている病気や症状に関連してしばしば話題になる。アルツハイマー病や老人性痴呆では脳内のアセチルコリンが減少し、これが痴呆の原因のひとつと考えられてきた。鬱病の原因として、また攻撃行動、ストレス、不安、拒食症などの精神症状にセロトニンが強く関わっていることが色々な事例で示されている。また精神分裂病の主要な治療薬はドーパミンとセロトニンの受容体拮抗薬であることから、精神分裂病はドーパミン・セロトニン系の異常に原因があるとの考え方が強い。生体アミンの脳内での変化はヒトの精神状態や動物の行動変化と強い結びつきがあることから、これまで大いに注目されてきた。

 上に述べたような、これまでに見い出されてきた生体アミンの機能に加えて、生体アミンが広範な脳部位でシナプスの形成維持機能を果たしていることが、私どもの研究によって明らかになった(15, 16, 81, 99, 103, 106)。このことにより、以前には発症機構の不明であった小児神経発達障害のなかで、生体アミン神経機能低下が原因する病態の理解が可能になった。また、原因が不明であった乳幼児突然死症候群の発症機構にセロトニン神経機能の低下が原因していることを強く示唆する結果を得ている。この稿ではこれらの話題を中心に話をすすめたい。


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■ 2. セロトニンによるシナプス形成維持機能


図5 拡大図はこちら
 生体アミンに関する研究のスタートとして、ニワトリ脊髄に分布するセロトニン線維の個体発生を、セロトニンに対する抗体を利用した免疫組織化学法によって調べた(72, 122)。延髄にある細胞体からでた少数のセロトニン陽性線維は、8日胚になって、はじめて腰髄にたどり着く。発生が進むにつれてセロトニン陽性線維の分布密度が増加し、孵化後1週目には、細い線維が細胞体の間に高密度に観察された。しかし、孵化後2週目までには陽性線維の分布密度は低下していた。成体では運動ニューロンの細胞体を囲むように、大きな膨らみをもつセロトニン陽性線維が観察されるが、孵化後1週前後に観察された細胞体間の細い陽性線維はほとんどなかった(図5)。セロトニンがニワトリ脊髄の発達過程で孵化後1週をピークとして一時的に増加することは、高速液体クロマトグラフィー法でも確かめられた(図6)(107)。


図6 拡大図はこちら


 ニワトリ脊髄以外でも、セロトニン線維が発達の過程で一時的に増加することが報告されている。ネズミの類は鋭敏なヒゲを持っている。あのヒゲ一本一本の感覚はそれぞれのヒゲのために用意された特定の大脳皮質の部位に運ばれる。ヒゲの配列と同じ模様が大脳皮質にある。その模様に一致して生後10日をピークに一時的にセロトニン陽性線維が増加し、生後2週半ばまでには減少して、成熟した大脳皮質の状態になる(23, 34)。その後の研究によると、その一時的に増加するセロトニンはセロトニン神経線維の中にあるのではなく、大脳皮質に感覚情報を伝える視床皮質投射線維に一時的に発現するセロトニントランスポーターによって取り込まれていることが明らかにされた(75)。視床皮質投射線維に取り込まれたセロトニンは、線維結合形成に関与すると推測されている。


図8 拡大図はこちら
 一時的に増加するセロトニンはどんな役目を果たしているのか、この点を明らかにするために次の研究を進めた。数種類のセロトニン神経毒やセロトニン代謝阻害剤を使って孵化後1週間ニワトリのセロトニン濃度を大きく低下させた。電子顕微鏡で観察すると、脊髄の各層(注3)でシナプス数が減少していた。シナプス密度を定量化すると、最大で69%もシナプス密度が低下していた(図8)(15, 103)。抗セロトニン抗体を利用した免疫電子顕微鏡法で観察すると、セロトニン陽性のシナプスは全シナプス数の1%以下である。従って、セロトニンをなくしたときに減少するシナプスのほとんどは、セロトニン以外の伝達物質をもつ一般的なシナプスであると考えられる。ニワトリの小脳(図8、CR)にはセロトニン線維はほとんどない。そうしたセロトニン線維の非標的領域では、セロトニン濃度を低下させてもシナプス密度に変化はなかった。

図9 拡大図はこちら
孵化後一週をピークとして一時的に増加するセロトニンは、シナプス数を増加させていたのだ(図9)。脳が発達する過程で、シナプスが一時的に過剰に形成されることがこれまでにも報告されており(53-55, 113)、そのことが発達過程の脳に可塑性(注4)を与えていると考えられてきた。しかし、シナプス数を調節したり、シナプスの過形成を促進する物質としてこれまでに報告されているものは、ここで述べるセロトニンが最初である。


図10 拡大図はこちら
 それでは、セロトニンは成体でシナプスにどの様な影響をもたらしているのだろうか。孵化後6ヶ月のニワトリにヒナの場合と同じように薬物を投与し、セロトニンをなくしてみた(103)。1週間後にシナプス密度を定量化すると、セロトニン線維が多く分布する部位で特に大きく、シナプス密度は低下していた(図10)。ニワトリ脊髄III層にはセロトニン線維はわずかしかないが、そこではシナプス密度はほとんど変化しなかった。成鶏脊髄でもセロトニン線維の分布する領域では、シナプスの維持にセロトニンが必要なようだ。成体ではシナプスの作り替えのためにシナプス形成が必要なのだろうか。恐らく、シナプスは一度できたらそれ以降変化しない静的な構造ではなく、可塑的な脳部位ではたえず作り替えられる、動的な構造だと考えられる。

 シナプスの数がそんなに短時間のうちに変化するのだろうか、という疑問に度々出会う。常識的な理解では、シナプスはむしろ静的な構造であろうと考えられてきた。しかし、そんな常識とは異なる研究結果がある。一つはニワトリによる研究である(24)。孵化直後のヒナは床にあるものを嘴でつまんでは、食べられるものを見分ける学習をするらしい。そんな行動を利用した実験がある。直径3ミリぐらいのきらきら光るビーズに大変に苦い液体をつけて、床にまいておく。ヒナがそのビーズをついばむと、頭を激しく振ってもがく。その苦いビーズを体験し学習してから一時間後には、ニワトリ脳の学習中枢、それも右側だけでシナプス数が70%ほど増加する。しかし、24時間後には右側の学習中枢のシナプス数は元の値に戻る。一方、左側の学習中枢のシナプス数は24時間後には増加する。シナプス数が短時間で変わることを示した研究がもう一つある。シベリア地リスが冬眠からさめた直後、海馬でのシナプス数の変化を調べた研究である(115)。冬眠から醒めて2時間後には、シナプス数が六十数パーセント増加したと報告されている。

 神経伝達物質が神経伝達以外の役割を果たしていることは、これまでにも度々報告されているが(25)、そうした非伝達物質機能に関してはセロトニンについての報告が多い。最初にLauder とKrebs(74)はセロトニンは神経増殖を調節する因子であることを明らかにした。シナプスに関しては、セロトニンはミズスマシの電気シナプスの形成を抑制するとの報告がある(47)。一方、ラット胎仔大脳皮質の培養細胞にセロトニンを加えると、シナプス形成が促進されることを明らかにした研究もある(17)。しかし、発達過程だけではなく、成熟した高等脊椎動物や哺乳類でも、脳の広範な部位でセロトニンがシナプスの形成維持機能を果たしていることを生体レベルで明らかにしたのは、ここで述べる一連の研究が初めてである。このようなセロトニンの機能は脳の可塑性を考える上で重要な視点を与えてくれる。

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■ 3. シナプスの形成維持機能を介在するセロトニン受容体

 セロトニンによるシナプス形成維持機能を介在するセロトニン受容体サブタイプの同定を行った。セロトニン受容体は現在までのところ14種類のサブタイプが報告されている(注5)。それぞれの受容体サブタイプを選択的に機能阻害する拮抗薬と機能を亢進させる相働薬を使って、セロトニンによるシナプスの形成維持機能を介在するセロトニン受容体サブタイプを調べた(99)。この実験にはニワトリ胚を用いた。


図11 拡大図はこちら
 孵卵開始後11日から17日までの間、1日1回薬物を投与して、孵卵開始後18日の時点で、脊髄IX層でのシナプス密度を多数の電子顕微鏡写真から定量化した。その結果、2A型受容体の拮抗薬であるketanserinを投与すると、薬用量依存的にシナプス密度が低下した。更に実験に用いた最大薬量のketanserinにくわえて、2A型受容体の相働薬であるDOIを投与すると、DOIの薬用量依存的にシナプス密度が上昇した(図11)。実験で用いた最大薬量のDOIを投与したときには、シナプス密度は正常値を超えた。

 14種類報告されている受容体サブタイプのうちでセロトニンの2A型受容体は、最もメジャーなサブタイプの一つである。アルツハイマー病では大脳皮質の2A型受容体が激減したり(89)、加齢によって減少することが知られていた(120)。また、2A型受容体を介してセロトニンは、分泌型アミロイド前駆体蛋白を増やす働きがあり、Aβドメイン分解の調節をしていることが報告されている(101)。精神科領域では、うつ病(51)やストレス(82, 132)で2型受容体の脳内変化が常に問題になる。また、精神分裂病では大脳皮質の2A型受容体のmRNAが減少するが、治療薬のハロペリドールによって正常近くまで復することが知られている(13)。また、セロトニン2A型受容体は生理にともなう変化とも深い関わりを持つと考えられている。エストロジェンはセロトニン2A型、ドーパミンD2型受容体の脳内濃度を上昇させる機能がある(28)。かくもセロトニン2A型受容体は脳機能にとって数々の重要なはたらきをいろいろなところで果たしている。

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■ 4. セロトニン2A受容体の脳内分布とグルタメート作動性シナプスの拡散型調節機構

 セロトニンの2A型受容体は大脳皮質の機能を考える上で大事な受容体サブタイプであることが解ったので、抗受容体抗体を作ることにした。従来用いられてきた形態学的方法であるオートラディオグラフィー(4, 109)やin situ hybridization法(86, 114)では、解像力が低く、受容体の分布はせいぜい虫眼鏡で観察した程度のことしか解らない。細胞レベル、さらには電子顕微鏡レベルでの受容体分布パターンを調べるためには、免疫組織化学法を使わなければならない。

 2A型受容体は7回膜貫通型の蛋白である(59)。2A型受容体のC末またはN末のペプチド配列に対する特異抗体を作製した(44)。この抗体を使ってラット大脳皮質での受容体の分布を調べてみると、ほぼ100%の大脳皮質ニューロンが2A型受容体を発現していた。特に大脳皮質錐体細胞の細胞体と先端樹状突起に強く発現していたが、こうした所見は大脳皮質第5層の錐体細胞を電気生理学的に解析したAghajanianの結果と一致する(1)。


図12 拡大図はこちら
 免疫電子顕微鏡法を用いて、ラット大脳皮質でのセロトニン2A型受容体の分布を調べた。すると、典型的な非対称性シナプスにあるシナプス後膜の直下にセロトンン2A型受容体の反応産物が観察された(図12)。Hunt等の研究により、セロトニン2A型受容体が後シナプス構造に接触して存在することが示唆されていた(52)。彼らは後シナプス構造からpostsynaptic density protein 95なる蛋白を明らかにし、その蛋白の分子構造の特徴からセロトニン2A型受容体が近接して存在することを予想していた。大脳皮質の非対称性シナプスは興奮性シナプスと考えられており、更に興奮性シナプスの大部分がグルタメート作動性シナプスであるので、2A型受容体はグルタメートの神経伝達調節にも関わっている可能性が考えられた。


図13 拡大図はこちら
 セロトニンが2A型受容体を介してグルタメートの神経伝達を調節している可能性について述べたい。生後6週齢ラットに薬物を投与してセロトニンをなくして1週間後に、グルタメート受容体の結合実験を行った(129)。すると、NMDA受容体に変化はなかったが、AMPA受容体は大脳皮質で約30パーセント増加していた(図13)。受容体サブタイプ別の変化を免疫反応で調べると、GluR1は25%ほど減少していたが、GluR2は25%増加していた。セロトニン2A型受容体の拮抗薬であるketanserinを投与しても同様の結果を得たので、セロトニンによるGluR受容体サブタイプへの作用は2A型受容体を介しているものと考えられる。


図14 拡大図はこちら
 これまでにGluR2はサブタイプのうちで唯一、カルシウムの細胞内透過性を低下させる働きをもつことが明らかにされている。即ち、セロトニンをなくすとカルシウムの細胞内透過性が低下して、神経細胞の興奮性が低下すると考えられる。同様の条件でセロトニンをなくすと、頭頂葉ではシナプス密度が30%−50%低下することが知られているので(図14)(16)、セロトニンはシナプス数とカルシウム透過性を維持することにより、脳の可塑性を調節していると考えられる。

図15 拡大図はこちら
脳内でグルタメイトの数千分の一の量しかないセロトニンは、シナプス構造を介することなく細胞間隙に拡散すると考えられる。そのようにして拡散したセロトニンが、グルタメート作動性シナプスの後シナプス構造に存在する2A型受容体を介して、大脳皮質の可塑性を維持しているのであろう(図15)。そうした機構の他にもセロトニンは神経回路とか神経線維によらない調節機構を持っており、セロトニン線維のない部位にもセロトニン受容体が観察される(84)(注6)。

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■ 5. 生体アミンによって維持される正常な数のシナプスが学習記憶の獲得に必要である


図17 拡大図はこちら

図20 拡大図はこちら

図18 拡大図はこちら

図19 拡大図はこちら

 生体アミンがシナプスを形成維持する機能を果たしていることが解れば、従来の神経科学にはなかった新しい研究法の利用が可能になる。即ち、生体アミンの脳内濃度を変化させ、シナプス数を変えた状態で、学習記憶能力や生理機能の変化を調べることができる(81)。学習記憶能力の変化を調べる研究には海馬が頻繁に使われる(図17)。生後6週のラットにセロトニンとアセチルコリンをなくす薬物を投与した。そうすると海馬の主要な回路がシナプスをつくる部位のみで、最大58%もシナプス密度が低下した(図18)。空間学習能力をMorrisの水迷路試験(図19)で調べてみると、シナプス密度が低下したラットは生理的食塩水を投与した対照群に比べ、訓練最終日に浅瀬に泳ぎ着くまで2−3倍の時間を要し、位置学習記憶機能が低下していることが判明した(図20)。


図21 拡大図はこちら
 更に海馬での長期増強現象を記録するために、海馬のスライス標本を作製し、Schaffer側枝を頻回刺激して、CA1の錐体細胞領域から電気記録を行った(図21)。生理的食塩水を投与したラットの海馬からは長期増強が記録された。しかし、シナプス密度の低下したラットの海馬からは、長期増強は記録されなかった(図22)。この長期増強は記録できずにシナプス密度が低下した動物は、確かに食塩水を投与された対照群に比べ学習記憶機能は低下していたが、訓練初日と比べれば最終日には学習・記憶が成立していたのだ。即ち、長期増強がなくとも学習記憶は成立することになる。


図22 拡大図はこちら
 頻回刺激を一度加えると、その後数時間にわたって伝達効率が変化する長期増強や長期抑制は学習記憶の基礎過程であると信じられてきた。これまで学習記憶にかんする研究のほとんど全てが、長期増強や長期抑制の機構解明に向けられてきた。我々の実験だけで学習記憶が獲得される過程に長期増強は必要ないと即断はできないが、長期増強イコール学習記憶といった図式に変更をもたらす可能性もあると考えている。学習記憶の機構に必要なものは、長期増強ではなく生体アミンによって形成維持される正常な数のシナプスかもしれない。

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■ 6. 三つ子の魂百までも、臨界齢でのシナプス過形成と可塑性。


図23 拡大図はこちら

 三つ子の魂百までも。昔は数え年だから、満年齢では1歳半ということになる。その一歳半までの環境や体験は、その後の人生に影響を与え続けると、先人は見抜いていたのだろう。乳幼児期の脳のなかで、シナプスは実にダイナミックな変化をみせる。ヒトの大脳皮質で発達によるシナプス密度の変化を調べた研究がある(53-55)(図23)。視覚領野では生まれてからシナプスの数が増えて、生後約1年でピークに達する。2才頃まではピークと近い値だが、その後5才までにシナプス密度は誕生時とほぼ同じ大人の値まで低下する。前頭葉ではシナプス密度は5歳でピークになり、その後徐々に減少し、20才までに誕生時とほぼ同じ大人の値に落ち着く。しかし、1才までにはほぼピークに近い値になっている。生後1年間、ヒト大脳皮質全体でシナプスは過剰に形成されるのである。ピーク時のシナプス密度は誕生時のほぼ2倍だ。ヒトの脳は約1000億の神経細胞があるとされるが、一つの神経細胞がおおよそ104個のシナプスを入力として受けるとすると、誕生時には1015個のシナプスがあることになる。生後一年でシナプス密度は2倍、脳は2.5倍になるから(125)、過剰に形成されるシナプス数は、ざっと2500兆にもなる。これを365日、24時間で割ってみると、ちょっと信じ難いほどの数、1時間で2850億個のシナプスが作られることになるのだ。

 シナプスが過剰に形成される期間は臨界齢と呼ばれ、こどもの脳が最も可塑的な時期であると考えられてきた。例えば、斜視の例をあげると、極端な斜視の場合は両方の目からの入力を統合して遠近感などを把握する両眼視が出来ない。シナプスが過剰になっている3才頃までに手術を行って斜視を直せば、両眼視する能力を回復できるが、臨界齢以降に手術を受けても、両眼視出来るようにはならないことが知られている(45)。過剰に形成されるシナプスは時として冗長な無駄なシナプスであり、大した意味のないものだと主張する研究者もいるが、これは後に述べるダウン症での大脳皮質におけるシナプスのデータからも誤っていると考えられる。

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■ 7. 氏か育ちか

 シナプスが過剰に形成される時期に、シナプスを形成維持する機能のある脳内の生体アミンが少なくなったり機能が低下すれば、シナプスが必要なだけ作られずに、発達するべき脳に都合の悪いことが起こるのではないかと考えられる。これまでにいろいろな原因で乳幼児期に脳内の生体アミン濃度が低下することが知られている。氏の部分、即ち遺伝的な要因(genetic factor)で精神遅滞や発達障害をもたらす小児神経疾患、例えばフェニールケトン尿症(PKU)(85)、ダウン症(39)、レット症候群(126)、いずれも脳内生体アミンの濃度や機能が低下する。そして育ちの部分、即ちストレス(88, 132)や栄養(73, 117)、薬物(3)などの環境要因(environmentalまたはepigenetic factor)でも脳内の生体アミン、特にセロトニン系が変化する。また自閉症は遺伝的な要因と環境要因がそれぞれ単独で、または一緒になって原因すると考えられているが、自閉症でも脳内生体アミンの機能が低下する。これまで小児神経疾患や環境要因から精神遅滞や学習障害が惹起される機構に関しては全く知見を欠いていた。しかし、生体アミンがシナプスの形成維持を促す機能を担っていることが明らかになった現在、精神遅滞・発達障害の発症機構を解明し脳機能を修復できる可能性を見いだした(106)。

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■ 8. 遺伝的要因による小児神経疾患

 遺伝的な要因による小児神経疾患で精神遅滞・発達障害をもたらすメカニズムについて触れてみたい。セロトニン1A型受容体の発現量は大脳皮質や海馬では妊娠24週前後でピークとなり、その後発達に伴い減少する。しかし、ダウン症ではセロトニン1A型受容体が極めて少なく、正常発達で出現するピーク時の量に比べて五分の一程度しかない(10)。ピーク時にはセロトニンがアストロサイトに作用し、1A受容体を介してS100β蛋白がアストロサイトから分泌され、そのS100β蛋白が栄養因子となってセロトニン神経細胞が分化すると考えられる(145)。即ち、ダウン症ではセロトニン神経細胞が十分に分化していない状態にあると推測される(注7)。また成人のダウン症ではセロトニン以外の脳内生体アミンも著しく低下していることが報告されている(39)。


図24 拡大図はこちら

 ヒトの大脳皮質の錐体細胞を鍍銀法といわれる特殊な染色法を施した標本で観察し、シナプス後構造と考えられる樹状突起棘の密度を定量化した研究がある(11)。正常に発達すると樹状突起棘密度も生後1年でピークになり、生後数年までには誕生時と同じくらいの成人の密度になる。樹状突起棘密度の一時的な増加はシナプスの過形成(53-55)を反映したものと考えられる。ダウン症でも出生時には樹状突起棘密度は正常児とほぼ同じ値である。しかし、ダウン症では樹状突起棘密度は出生時以降増加せず、生後1年までに正常発達で見られる樹状突起棘(シナプス)の過形成がない(図24)。

 PKUではフェニールアラニンを分解する主たる酵素がないので、モノアミンを合成する時に必要な補酵素がフェニールアラニンを分解するために使われてしまい、脳内モノアミン濃度が低下すると考えられている。ラット新生仔期に大量のフェニールアラニンを含んだ餌を与えると、フェニールアラニンを分解しきれずにPKUモデルラットが作れる。このPKUモデルラットは(142)未治療のヒトPKU(85)と同じく、脳内モノアミン濃度が低下する。PKUモデルラットの大脳皮質のシナプス密度を定量化した研究によって、小さいサイズのシナプス密度が著しく低下することが確かめられている(98)。

 レット症候群は女児で生後6−18ヶ月に発症する。徐々に会話ができなくなり、最終的には精神遅滞になるが、ステレオタイプな手の運動が特徴的だ。レット症候群では脳内の生体アミン系の機能が低下する(126)。最近レット症候群の原因遺伝子が報告され、X染色体のmethyl-CpG-binding protein 2をコードする遺伝子に変異があることが解った(6)。

 ここで述べた遺伝性小児神経疾患の子供達は誕生時には普通の子供と変わらないといわれている。しかし、特に出生後、脳内生体アミン系の機能低下が顕著となり、過形成されるべきシナプスが形成されずに、多くの場合1歳までには精神遅滞・発達障害が現れる。

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■ 9. 環境要因による精神遅滞・発達障害:出生前ストレス

 以前から妊娠中、特に妊娠後期、胎盤機能が完成した後に、離婚問題とか、夫との死別などによって厳しい精神的なストレスをうけた母親から生まれた子供は、そうしたことのない普通の母親から生まれた子供にくらべ、行動異常や精神遅滞の発生率が約2倍であることが知られていた(136)。妊娠中の母親の精神状態が、生まれてくる子供の脳神経機能に影響を与える可能性はあるだろうとは想像してきた。しかし、そうした結果をうみだすことになる生物学的なメカニズムに関しては一切不明であったが、最近の研究は少しずつその謎を解きつつある。

 妊娠中のラットにストレスを与えると、生まれてきた仔ラットの脳内セロトニン濃度が変化することが報告されていた(110, 111)。セロトニンがシナプスの形成維持機能を果たしていることを考え合わせると、仔ラット脳内のシナプス数に変化が起こり、学習記憶能力にも影響を与える可能性が考えられた。その可能性を探るために実験を行った(46)。対照群では1つのケージに1匹の妊娠ラットを飼育した。他方、ストレス群は妊娠15日から20日までの間、対照群と同じ大きさのケージに5匹を飼う過密環境で飼育した。加えて1日1回皮下に生理食塩水を注入する疼痛ストレスを毎日与えた。このようなストレスを妊娠ラットに与えると、母ラットは妊娠20日の時点で、ストレスの指標である血中糖質コルチコイド濃度は妊娠15日に比べ有意に上昇していた。母ラットはストレスをうけていたと考えられる。


図25 拡大図はこちら
 仔ラット海馬でのセロトニン濃度を調べた。生後14日と21日ではセロトニン濃度は変わらないが、生後35日になるとストレスをうけた母ラットから生まれた仔ラット海馬内セロトニン値は、対照群に比べ約18%低下した(図25)。

図26 拡大図はこちら
また、セロトニン値の低下とともに、シナプス密度も海馬CA3放射線維層で約30%低下した(図26)。 水迷路試験で位置記憶学習能力を検査すると、学習記憶獲得能力には両者の間に差はなかった(図27)。更に、5日間の訓練最終日の翌日からステージを5日間置いてあった場所の反対側に設置するreverse testを行った。ストレスをうけた母ラットから生まれた仔ラットは、reverse test初日にはステージにたどり着くまでストレスを受けなかった母ラットから生まれた仔ラットの比べ約2倍、余計に時間がかかった(図27)。reverse testは新しい状況に対応する能力を反映すると考えられている。妊娠15日から20日までの妊娠後半期、この時期が重要らしい。妊娠7日から14日までの間、同様のストレスを与えても、仔ラット海馬のセロトニン系には何の変化も現れなかった。

図27 拡大図はこちら


 妊娠中の母ラットへのストレスという環境要因が仔ラット海馬のセロトニン濃度とシナプス密度を低下させ、発達障害をもたらす機構に関しては、まだ十分には解析されていない。母体で上昇した血中糖質コルチコイドが直接に胎仔に影響を与えていたり(140)、妊娠ラットへのストレスが、出生後も仔ラットの視床下部・下垂体・副腎皮質に影響を与え、糖質コルチコイド濃度を変化させ、海馬や大脳皮質のセロトニン受容体密度に変動をもたらすことが知られている(88)。


図28 拡大図はこちら

 過密環境と疼痛ストレスより強いストレスとして筒詰めストレスがある。身動きのとれないやっと入るぐらいの内径しかない筒に妊娠ラットを30−45分押し込む。このストレスをうけた母親から生まれてきた仔ラットは、水迷路試験で学習記憶能力が低く、水面下2cmにある浅瀬に辿り着くまで長い時間がかかる(図28)。特にオスの学習記憶能力の低下が顕著で、メスではそれほど大きな変化がない(100, 138)。学習記憶能力に雌雄差が生ずるメカニズムは不明である。またオスでは性的行動に変化があらわれ、中性化する(80, 148)。

 ここで示したデータからも、妊娠中の限られた期間での母体に対するストレスが、子供の成熟後まで長期にわたるセロトニンを含むストレス反応系に変化をもたらすメカニズムが働くことが明らかである。その他に興味ある報告として、ドップラー超音波で妊娠37−40週の胎盤血流と胎児の脳内血流を計測したデータがある。母親の精神的不安によって胎盤血流、胎児の脳内血流とも変化することが明らかにされている(130)。この事実と結び付けると少々気になる研究がある。妊娠後期での一時的な胎盤血流の低下によって、仔ラット脳内セロトニン値が成熟後も長期にわたって変化することが報告されている(14)。

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■ 10. 環境要因による精神遅滞・発達障害:出生後ストレス

 ストレスを受けると、それを脳の情動機能担当部位である前頭眼窩野や扁桃体で捉え、その情報が視床下部に伝わり、室傍核を介して脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌され血中濃度が上昇する。糖質コルチコイドの受容体は海馬に多くあり、海馬はストレスの影響を特に強く受ける。糖質コルチコイドは海馬神経細胞の神経毒であり、ストレスにより海馬、特に歯状回でので神経細胞死がおこる。ストレスに反応するこの視床下部-下垂体-副腎皮質システムに対してセロトニンは最大の抑制物質として働いている。従って、セロトニン神経系の機能が低下した状態と考えれらる鬱病などでは、より多く副腎皮質刺激ホルモンと糖質コルチコイドが分泌され、ストレスに脆弱な状態となる。

 ストレスによる海馬機能の低下はもうひとつのメカニズムによっても起こっている。神経細胞は胎生期だけ活発に増殖し、出生時には神経細胞はつくり終わっていると以前には考えられていた。しかし、最近の研究によれば、ヒトの海馬で成熟後も神経細胞の新たな増殖があることが示されている(26)。特に海馬の歯状回では、大人になっても多くの神経細胞が新しく作られ、神経回路が更新されている。この海馬での神経細胞増殖を糖質コルチコイドが抑制し、セロトニンが促進する機能を果たしている(41)。即ち、ストレスによって神経細胞は増殖できない状態になる。


図29 拡大図はこちら

 新生仔ラットへのストレス実験として有名なものに、handlingとよばれるストレスがある。生まれてから離乳するまでの生後21日間、一日一回、仔ラットを15−30分間、母親から離すのである(図29)。このストレスは軽度なストレスと考えられている。21日間ストレスを受けたラットも、ストレスがなくなれば血中糖質コルチコイドは正常な値に戻る。しかし、海馬の糖質コルチコイド受容体量は一生にわたって高くなっている(87)。更に別の研究によると、糖質コルチコイドの上昇と共にセロトニンの2A型受容体が海馬で正常ラットの約1/3に、また前頭葉でも30%減少していることが明らかにされている(132)。離乳するまでの21日間のうちでもストレスの影響が強く残る臨界齢がある(86)。それは生後の1週間なのだ。生後2週目だけhandlingを受けた例では海馬での糖質コルチコイド受容体は多少増えているが、生後3週だけのhandlingでは全く増えない。

 新生仔期にhandlingを受けたネズミとストレスを受けずに育ったネズミが成熟後にストレスを受けると、ストレスにさらされたことのあるネズミはストレスに対して強くなる。ノホホンとした環境で育つと、打たれ弱いというのはよく聞く話だ。鉄は熱いうちに打て、諺のような一見良いストレスの効果はそれだけではない、ボケ防止にもなる。若いラットに比べ生後2年の老齢ラットになると、糖質コルチコイド受容体は減少する(124)。受容体が少ないのだから、糖質コルチコイドを益々多く出さねばならない。増えた糖質コルチコイドによって海馬では細胞死がさらに多くなる。生後2年では海馬の神経細胞数が若いラットに比べて40%ぐらい少なくなって、水迷路学習記憶機能も著しく低下している。これは加齢にともない神経細胞が死んだ結果である。一方、新生仔期にhandlingを受けたラットは一生にわたって海馬の糖質コルチコイド受容体が増加することは述べた。即ち、少しの糖質コルチコイドがあれば情報が伝わる訳である。更に打たれ強いということは、ストレスをストレスとして感じない、多少のストレスがあっても糖質コルチコイドはあまり増えない。海馬の神経細胞にとっての毒が少なく、生後2年になっても若いラットと同じ数の神経細胞がある(87)。そんなラットは学習能力も若い時と同じく高い。生後6ヶ月ではhandlingを受けたラットも受けないラットも海馬の神経細胞数は同じであり、水迷路学習記憶機能にも差がない(88)。ここまでの情報から判断すると、鉄は熱いうちに打てという諺のようにhandlingストレスは良いストレスであるようにも思える。

 Handlingに比べ長い時間、一日に3−6時間新生仔ラットを母親から離す、厳しいストレス実験がある。このストレスはmaternal separationという。母性分離とここでは呼んでおこう。このストレスではhandlingストレスと反対の現象が一生にわたって起こる(87)。即ち、海馬の糖質コルチコイド受容体は低下して、血中糖質コルチコイドは増加する。そしてストレス反応を進行させる視床下部-下垂体-副腎皮質系の機能が亢進する。母性分離による仔ラット成塾後の学習・記憶機能に関しての詳しい研究はない。しかし新生仔期の母性分離はラットの一生におよぶストレスに対する脆弱性をもたらしていると考えられる。

 ネズミとヒトとはかなり異なるから、ネズミでのデーターをそのままヒトにあてはめるのは危険である。とはいっても、病院などで子供が生まれると新生児室なるものをわざわざ用意して、一日のほとんどの時間を母親から離してしまうやり方は母性分離と変わらないのではないだろうか。母体への、また乳幼児へのストレスをはじめとする環境要因によって、ヒトでも脳内生体アミン系が永続的に、あるときには一生にわたって大きく変化する可能性が十分に予想される。この点を大いに注目しなければならない。

 この項の最後に糖質コルチコイドの副作用として気になる話題に触れたい。未熟児として生まれてきた新生児は高率に呼吸機能障害を伴うが、その治療として糖質コルチコイドが使われる。そうした治療を受けた子供が未熟児で糖質コルチコイドの投与を受けていない子供に比べて3倍も脳性マヒの発生率が高いことが報告されている(128)。また同様の治療を糖質コルチコイドで受けた子供は、大脳皮質灰白質の体積が35%も減少していた(94)。すでに述べたように、ラットでは糖質コルチコイドは海馬の神経細胞に神経毒として働き細胞死をまねくことが明らかになっている。大脳皮質の神経細胞に対する神経毒性は十分に解明されてはいないが、ヒトではより広範に大脳皮質の神経細胞までにも糖質コルチコイドは毒性をもつ可能性がある。

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■ 11. 自閉症

 現在まで自閉症の原因遺伝子は見つかっていないが、兄弟や家族で多く発症したりすることなどから、遺伝的な要因があることは確かなようだ。自閉症で高率に出現する遺伝子多型にかんする報告がある(57)。Hox遺伝子という哺乳類では延髄や橋の形態形成遺伝子といわれるものがある。いくつかあるHox遺伝子の一部がないと延髄と橋の特定の部位の構造が形成されない。このHox遺伝子には個人個人によって異なる何種類かの塩基配列を持つ部位があり、こうした状態を遺伝子多型とよんでいる。自閉症ではHox遺伝子の特定の遺伝子多型が多いとする報告である。しかし、この遺伝子多型が自閉症の発症に如何に関わっているかについては不明である。またセロトニントランスポーター遺伝子のプロモーターの遺伝子多型性(注8)のうちS 型が自閉症に多いと報告されたが(19)、その後その相関を否定する論文が多い(70)。

 自閉症は遺伝的な要因に加えて後で述べるような環境要因が発症に関わっているが、自閉症の発症率に関しては多いものから少ないものまで色々な報告がある。高い方の数値としては、200人の乳幼児に1人の割合で発症するとされている。男児が女児より4倍多く発症する。以前と今では診断基準や診断の精度が違うために生じた差であると考えることもできるが、最近確かに増えていると感じている専門家が多いようだ。遺伝的背景は変わらないのだから、環境要因が自閉症発症率増加原因の可能性があるのだろうか。

 血中セロトニン値が高くなる機構については不明であるが、自閉症のうち約1/3で血中セロトニン値が高い(144)。脳内のセロトニンに関してはPETを用いた研究で、5歳までの脳内セロトニン合成能が平均して普通の子供の半分程度しかないとChuganiらは報告している(18)。自閉症では細胞外のセロトニン濃度低下をうかがわせる。即ち、細胞外のセロトニン濃度を高めるセロトニン選択的再取込み阻害剤(SSRI)を投与すると自閉症の症状を軽減する。また反対にセロトニンの原料となるトリプトファンを減少させると50%の成人自閉症の症状を悪化させる(20)。セロトニン以外の物質としては、自閉症では血漿中のオキシトシン濃度が低いとする報告もある(91)。

 自閉症は環境要因が主因になることもある。環境要因としてよく引き合いに出されるのがサリドマイドやアルコールである。サリドマイドは1950年代後半に鎮静剤として使われたが、妊娠20−36日の妊婦が服用するとサリドマイド奇形とよばれる数々の異常を持った子供が産まれることが解った。問題の妊娠期間の後半の時期では四肢の奇形が良く知られているが、妊娠20−24日にサリドマイドを服用した母親から産まれた子供の約1/3が自閉症になる(118)。また母親の飲酒が原因であったと考えられる自閉症もある(胎児性アルコール症候群)(119)。他にてんかんの治療に使われるバルプロン酸やによっても同じように高率に自閉症が発症する(57)。ヒトの妊娠22日は体節が7つの発生初期で、ラットでは妊娠8日に相当する。この時期はちょうどセロトニン神経細胞が生み出され分化を始める時期に相当する。

 最近、話題になっている論文がNelsonらによって報告された(97)。その論文では、ペプチドはVIP(Vasoactive Intestinal Polypeptide)とCGRP(Carcitonin Gene Related Peptide)、ニューロトロフィンはBDNF(Brain Derived Neurotrophic factor)とNeurotrophin4/5が、 新生児期に自閉症や精神遅滞児で正常より3−5倍高くなっていることが明らかにされた。特に自閉症は早期診断が難しく、通常親が異常に気付き医師の診断を受けるのは3歳過ぎとなってしまう。モノアミンの機能を高める薬物を投与して自閉症の症状を改善する治療が試みられてきたが、3歳を過ぎた症例ではあまり症状の改善が期待できない。自閉症や他の原因での精神遅滞が早期にわかれば、シナプスの過形成がおこる臨界期から治療が開始できることが期待される。


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■ 12. 乳幼児突然死症候群:遺伝的要因

 乳幼児突然死症候群、英語ではSudden Infant Death Syndromeで、通常SIDSまたはシッズと呼ばれている。日本を除く先進各国では、生後1ヶ月から1年までの乳幼児死亡原因の一位はSIDSである。厚生省の1997年の人口動態統計によると、日本における乳幼児死亡原因の第一位は先天奇形、変形および染色体異常となっている。SIDSは第2位で、1000人の出生のうち0.496人がSIDSで亡くなっている。アメリカではSIDSが乳幼児死亡原因の第一位で、1998年には1000人の出生に対して0.64 人であった。アメリカでもアメリカインディアンの場合、1000人の出生に対して約3人とずば抜けて高い。オーストリアのアボリジニーやニュージーランドのマリオ族では、それぞれ6.10、7.40と驚くべき頻度で、乳幼児がSIDSで亡くなっている。

 SIDSは様々な因子が原因となり、呼吸停止により死にいたると考えられる(68)。生後2−4ヶ月の乳幼児に最も高率に発症し、6ヶ月を過ぎると少なくなる。季節としては冬に多く、時間的には明け方が多い。これといった異常もなく、元気であったこどもが突然、死んでしまう。解剖して調べても、死ななければならないほどの病変は見いだせない。かわいい盛りのこどもの突然の死。家族の、とりわけこどもを奪われてしまった母親が受ける精神的衝撃は計り知れない。SIDSの悲惨さは単に死亡率からだけでは決して推し量れない。

 以前から、SIDSは単一の原因でおこるというよりは、いくつかの危険要因(因子)が複合的にはたらき、発症すると考えられている。危険要因には、遺伝的、時期的、環境の3つがある(27)。呼吸を抑制する3つの要因が重なり、その加算状態がある閾値を越えると、その時に呼吸が停止し、SIDSが発症するのであろう。SIDSの発症メカニズムにセロトニンが関係しているのではないだろうか、以前からそのように考えてきた。理由の第一は、延髄にある呼吸中枢の働きを高める要素うち最大の機能を果たす物質は、セロトニンである(8, 49)。二番目の理由は、SIDSで亡くなった子の兄弟や睡眠中に呼吸停止を起こして助かった子の睡眠パターンに特徴がある。全睡眠時間に占める急速眼球運動相(REM)(深い眠り)が普通に比べて長い(21)。REM睡眠は明け方に多く、SIDSの多発時間帯と一致する。さらに、REM睡眠中のセロトニン神経の活動状態を動物実験で調べた研究によると、セロトニン神経はREM睡眠中にはほとんど休止状態となり、働かないことが報告されている(32)。そのような状態では呼吸中枢の機能は低下しており、その結果SIDSが発症するのではないかと考えた。その他にSIDSではセロトニン濃度が、視床下部で低下(134)、また脳脊髄液では上昇(22)しているとの報告があった。またKinney等の最近の研究は、延髄でセロトニン受容体密度が減少していることを見い出しており(108)、SIDSの発症メカニズムに呼吸中枢でのセロトニン機能の低下が原因している可能性が高いことを指摘している(69)。


図30 拡大図はこちら
 SIDSの発症に関与する有力な遺伝的要因に関して以前には報告がなかった。ここで述べるセロトニントランスポーター(5HTT)をコードする遺伝子のプロモーター(5HTTP)の多型性(注8)に関する研究が、SIDSの遺伝的要因としてはじめての研究である(95)。しかも、この研究によってSIDSの発症メカニズムの中心にセロトニンが関わっていることが強く示唆された。SIDSにセロトニン神経系の何らかの異常が関与しているのであれば、セロトニンの機能をボトルネックコントロールする5HTT遺伝子の5HTTP多型性がかかわっているかも知れない。この点を明らかにするために私どもは分析を開始した。SIDSで死亡した27例と健常乳幼児115例からDNAを抽出して、5HTTP多型性を示す部分のDNA断片をPCRで大量に複製した。そしてそれらを電気泳動で調べると、繰り返し配列の回数の違いによって流れる速度が異なるので、バンドの違いとなって現れる。その様にして分析した結果、SIDS例では健常乳幼児例に比べLアリルが多く、Sアリルが少なかった。また健常乳幼児例では極めて少ないXLアリル保有者(0.9%)がSIDSでは11.1%であった。5HTTPの多型性分布はSIDSと健常者との間で統計学的にも異なることが判明した(図30)。LアリルやXLアリルを持つ5HTTPはSアリルを持つものと比べて、細胞内へセロトニンを運び込む効率が良く、受容体に作用するセロトニンが少なくなると考えられる(77, 95)。LやXLアリルでは、呼吸中枢でのセロトニンによる機能亢進作用が低下し、そのことがSIDSの一因になっている可能性がある。

 SIDSの発症率には大きな人種差があることは述べたが、その背景のひとつとして5HTTPの多型性の違いがあると思われる。人種によってS、L、XLの比が大きく異なる。Sの多い日本人をはじめとする東洋人のSIDS発症率は低い(36)。しかし、後述するように居住環境や衛生状態などの環境要因もSIDSの発症に深くかかわっているので、国ごとに異なる環境要因もSIDS発生率の人種差を生み出す要因となっていると考えられる。

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■ 13. 乳幼児突然死症候群:時期的ならびに環境要因

 生後2−4ヶ月の乳幼児が冬の明け方にSIDSを発症することが多いので、2−4ヶ月、冬、明け方をSIDSの時期的要因としている。セロトニンの神経機能は既に述べたとおり、明け方、REM睡眠とともに低下するが、他の時期的要因でもセロトニンの脳内濃度が低下していることを示唆するデータがある。脳内神経伝達物質の濃度変化は、クモ膜下腔にある脳脊髄液の濃度変化に反映されると考えられている。セロトニン濃度の指標となるセロトニン代謝物の脳脊髄液内濃度の生後発達にともなう変化を調べた研究によると、その濃度は生後2−4ヶ月を境に急激に低下する(48)。これはSIDSが多発する時期に一致する。呼吸中枢へのセロトニンによる機能亢進作用は、生後2−4ヶ月に急降下すると考えられる。もう一つの時期的要因に冬がある。これは後述するように、冬に流行するインフルエンザや風邪などの感染症がセロトニンの脳内濃度を変化させ、SIDS発症の引き金となっているからであろう。

 SIDSを発症させる環境要因(危険因子)は、うつぶせ寝、暖めすぎ、タバコ、低体重出生、シングルマザー、ストレス、感染症、人工乳、心臓・腎臓・松果体の未成熟、心電図の異常、フェノサイアジン、ビタミンB1欠乏、エリスロポイエチンの増加、海抜の高い山岳地帯での居住などがあげられる。これらの環境要因のうち、うつ伏せ寝以外の環境要因は、セロトニンと大きな関わりを持っているようである(105)。

 母体へのストレスと低栄養、喫煙などが低体重出生の原因となる(133)。動物を使って実験的に子宮内での発達を遅らせて低体重出生モデルを作ると、生まれてきた動物の脳内のセロトニン値が低下する(143)。シングルマザーで経済的状況が悪かったりして、母親がストレスを多く受ける状況でも、SIDSの発生率が高い(31)。動物実験の話ではあるが、特に妊娠後半期に母親ラットがストレスを受けると、生まれてきた仔ラットの脳内セロトニン濃度は低下する(46)。また出生前ストレスを模倣して妊娠ラットへ糖質ステロイドを投与すると、仔ラットの延髄で5HTT濃度が上昇する(93, 131)。これらのストレスによって呼吸中枢でのセロトニンの機能に大きな抑制がかかることが推測される。

 妊婦による喫煙、また自らはタバコを吸わないが伴侶の喫煙による、いわば二次的な喫煙も危険因子になっている。妊婦による喫煙では平均の3倍、二次的喫煙でも2倍、SIDSの発生率が高くなる。喫煙をした母親から生まれた乳幼児は、REM睡眠が多くなり、音による刺激によっても目を覚ますことが少ない(33)。また新生仔期ニコチンに曝露されると、生後7日と21日に脳幹部で5HTT 濃度が上昇する(66)。即ち、出生前および出生後での喫煙の影響によって、セロトニン神経の機能が低下し、よりSIDSになりやすい状態となる。

 感染それ自体では死ぬとは思われない程度であるが、SIDSで亡くなった乳幼児の鼻、喉、また時として肺などにウイルスや細菌の感染が認められることが多い(146)。感染がなんらかのかたちでSIDSの引き金になっている可能性がある。動物に細菌やウイルスを感染させると、脳内セロトニン濃度が変化することが報告されている。しかし、セロトニン濃度は上昇したり(102)、または低下したり(43)、脳部位によって異なる。また異なる発達段階で感染によるセロトニン濃度変化が反対になることがある(112)。感染によって呼吸中枢でのセロトニン値がどの様に動くのか、実験的に確かめる必要があるが、感染が脳内セロトニン濃度を変化させることによって、SIDSの一因になる可能性がある。風邪などの上気道感染が増加する冬にSIDS発生率が高くなる、その要因となっているのではないかと考えられる。

 以前アメリカで予防接種後にSIDSが発生したとの報告があり、予防接種がSIDSの危険因子と騒がれた(9)。その後、予防接種のSIDS危険因子説は大方では否定され、予防接種を受けないことによる弊害が強調されてきた(30)。しかし、予防接種は人工的に管理された感染そのものであることには変わりないので、SIDSとの関連は否定できないと考えられる。母乳によって育てられた方が、人工乳を与えられている乳幼児よりSIDSの危険率が低いとされている。母乳には細菌感染を防ぐ免疫グロブリンが含まれていることがその原因であろう(121)。生後2ヶ月頃から急にSIDSの発生率が高くなる原因は、セロトニンの脳内濃度が急激に低下し始める時期に一致するからであろうと述べたが、母乳に含まれる免疫グロブリンの量も同じように生後2ヶ月頃から低下するので、このこともSIDSの時期的要因として働いている可能性も指摘されている(40)。

 特に冬の間、部屋の温度が高すぎたり、着せすぎたりすることもSIDSの危険因子として知られている(42)。生後2−4ヶ月ではまだ十分に体温の放熱メカニズムができておらず、こどもを暖め過ぎると脳内温度が大人に比べて簡単に上昇する。視床下部にある呼吸中枢は温度上昇に敏感で弱く、すぐに機能が停止してしまう(29)。また、体温の放熱メカニズムにはセロトニンが主要な物質として働いており(150)、セロトニン濃度の低下は体温を上昇させる悪循環をもたらす。

 SIDSでは心臓、腎臓、松果体の発達が遅れている。セロトニンの2B型受容体を介して、セロトニンは心臓の形成を促進することが知られている。2B型受容体蛋白を作るための遺伝子をなくしたマウスでは、心臓中隔などができない(96)。胎児の時からセロトニン濃度が低い状態にあれば、心臓の形成が未熟な状態になってしまうのだろう。心電図の異常がSIDSの危険因子としてよく知られている。イタリアで何千人もの新生児から心電図を記録した研究がある。そのなかで、心電図検査を受けSIDSになったこどもは、心電図で心室の収縮期にあたるQTと呼ばれる部分が普通より延長していることが解った(147)。それ以来、SIDSの原因として心臓機能の異常説が唱えられた(83)。しかし、この件に関してはセロトニンによる説明で片づくようだ。薬物でセロトニンの機能を低下させるとQTが延長するのである(151)。腎臓の形成にはセロトニン1A型と2A型受容体が関与しており(62, 65)、セロトニン濃度の低下は腎臓の形成を遅らせる結果となると考えられる(64)。松果体には高濃度のメラトニンがある。松果体ではそのメラトニンが働いて、日中には脳や体の活動が高まるように、そして夜には活動が低下するようにリズムを作っている。メラトニンはセロトニンから作られるので、セロトニン濃度が低下しているSIDSではメラトニンの量は少なくなる(137)。SIDSでは松果体の体積も普通の子の半分程度しかない(135)。SIDSに伴う数々の変化が生じる背景もセロトニン濃度の低下によって説明できる。SIDSが発症する前に元気がなく筋緊張が低下していることが多い。これはセロトニンが骨格筋を支配する運動神経細胞にたいして持続的な興奮作用を果たしていることによると考えられる(139)。SIDSでは延髄に星状膠細胞が増えていることが多い(67, 141)。セロトニンは星状膠細胞の増殖を抑制していることが海馬(2)や視交叉上核(38)で確かめられている。

 フェノサイアジン系の薬物は、精神分裂病などの精神神経疾患の治療薬として広く使用されている。以前は、フェノサイアジンから作られた薬が小児用シロップの風邪薬として使われていた。1979年、7例のSIDSのうち3例がフェノサイアジン系の風邪薬で治療中であったことがわかり、フェノサイアジンはSIDSを誘発する可能性のあることが、はじめて指摘された(60)。更に多くの症例による調査で、フェノサイアジンとSIDSの因果関係が確認され、フェノサイアジンの小児用風邪薬としての使用が禁止された(5)。フェノサイアジンのもつ薬理作用には、セロトニン受容体を抑え、セロトニンの機能を低下させる働きがある(149)。フェノサイジンを投与すると、健常児でさえSIDSをおこしやすくするREMをともなう深い睡眠状態となり、呼吸は抑制される(61)。また、フェノサイアジンを投与すると心電図でQT間隔が延長する(63)。

 SIDSで亡くなった乳幼児の体内にビタミンB1が少ないことが(58)、また赤血球を増やす働きを持つエリスロポイエチンという物質が血液内に多くなることが報告されている(76)。動物にビタミンB1の少ない餌を与えると、脳内のセロトニン値が低下し(82, 92)、血中のエリスロポイエチンが増加する(50)。SIDS とビタミンB1、エリスロポイエチンはセロトニンでつながっていた。スイスでのSIDS発生率をあらわす地図と海抜を示す地図がある。それらによると、海抜とSIDSの発生頻度が一致している(71)。すなわち、高地に居住する家族にSIDSの発生頻度が高い。ラットを海抜の高い状態、即ち酸素のうすい条件で飼育すると、脳内セロトニン値が低下する(113)。高地で酸素が薄いことに加えて、脳内のセロトニン濃度が低下して呼吸機能が低下していると考えられる。

 SIDSの危険因子のうちセロトニンがらみではないと考えられるものについても触れておこう。よく知られているように、乳幼児をうつ伏せに寝かした場合にSIDSが多発することが指摘されてきた。うつ伏せ寝は呼吸を抑制する。そのため1992年からアメリカ小児科学会が先頭になって仰向け寝キャンペーンを行った。喫煙などうつ伏せ寝以外の危険因子に関する認識も高まり、1998年までにはSIDS死亡率はキャンペーン以前より40%低下した。

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■ 14. 生体アミン系の賦活化による精神遅滞・発達障害の修復とSIDSの撲滅


図31 拡大図はこちら

 脳幹にある比較的少数の神経細胞から発した神経線維が脳や脊髄全体に広がり、シナプスの形成維持を行ったり、呼吸中枢をはじめとして多くの脳部位で重要な機能を果たしている生体アミン神経系は、まさにMajor Brain Regulatorと言うことができる(図31)。

 ストレスなどの環境要因や、遺伝的な小児神経疾患による脳内生体アミン系の機能低下が、シナプス数の減少をまねく。その結果として、精神遅滞や発達障害がひきおこされるならば、生体アミン系を賦活することで、シナプスを増やし、脳機能を修復できるかもしれない。生体アミンの相働薬などを補充することが有効と考えられる。現在、発達障害モデル動物に補充療法を施すことによって、シナプス数を回復し、学習記憶能力を正常に復することができるか検討している。ストレスなどの環境要因によっても精神遅滞や発達障害がもたらされる可能性が明らかになったが、その修復にも補充療法が可能であろうと考えている。

 また一方、良好な環境が精神遅滞や発達障害の修復に必要であると考えられる。1996年にカンヌ映画祭で主演男優賞にかがやいたパスカルデュケンヌはダウン症である。彼は精神遅滞になるどころか、豊かな才能を開花させた。彼の母親は演劇や絵画など彼の欲する芸術に積極的に触れさせながら育てたという。豊かな環境が不足した脳の栄養因子を他の因子で代償するのだろうか。環境は脳を育てもし、ダメにもする。この点をもっと詳細に解析する必要がある。

一方、SIDSの原因としてかなり多くの部分をセロトニンが占めていると思われる。もしSIDSの原因をセロトニンで説明できるようになれば、SIDSを予防できる明るい見通しがたつ。セロトニン神経系の機能に作用する薬物は、これまでにも他の疾患の治療に使われている。特にSSRI(注9)は比較的副作用が低く効果は大きい。特にLやXLアリルを持つ人への効果が大きいことが、これまでにも確かめられている。まだどの様な症状や検査結果がでればSIDSになりやすいのか、十分に研究が進んでいないので、すぐにSSRIを使うには時期尚早であるが、いづれそれらの点を解決できればSIDSの予防は現実のものとなるだろう。しかし、少なくとも現在の時点でも、とりわけXLを持つこどもの生後一年までの呼吸監視をすることで、SIDSの減少に貢献できると考えられる。SIDSは過去の病気であると言える日を一日も早く迎えられるようにすることが、私どもに課せられた任務と考えている。

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■ 15. 国家危機管理と研究戦略

 攻撃行動、きれることの生物学に関してはまだ自前のデーターが少ないのでこの稿ではほとんど触れなかったが、攻撃行動のメカニズムとしても生体アミン、特にセロトニンの機能障害として理解できる。加えて、精神遅滞・発達障害とSIDS、生体アミン神経系の機能障害の研究は、子育ての科学の中核を占めると考えられる。

 少子高齢化を迎えた日本にとって、明日を支える子供をどのように育てるかは、国家危機管理の問題であるとする認識をもつ必要がある。同様の認識をクリントンは度重なる公聴会での発達神経学研究者の証言から得た。そして、クリントンは子育ての科学に膨大な研究費を支出した。サイエンスの成果に基づく政策決定がなされている。また、子育ては国家危機管理との認識とその政策的実現は現在でも同様である。一方、日本の科学技術政策の指針には、高齢化社会への対応に関してはよく述べられているが、子育ての科学についてはほとんど記載がない。子供達があぶないとか、教育の抱える問題点がくり返し叫ばれているけれども、それらの問題点の理解と解決にサイエンスを活用する必要性が広く認識されるようにしなければならない。

 アメリカのNIHのホームページを見るとその研究戦略の明確さに驚かされる。NIHの研究機関の一つにNational Institute of Child Health and Human Development(NICHD)がある。子供の健康と発達における問題を解決するためのこの研究所は、明確に6つの戦略目標をかかげている。その中に行動発達メカニズムの解明およびその障害の克服とSIDS の撲滅がある。行動発達の中身は、精神遅滞、自閉症、注意欠陥障害、学習障害、攻撃行動障害などである。その戦略目標を達成するための多くの獲得目標とその戦術レベルの課題が詳細に且つ具体的に述べられていて、システム構築の確かさに驚かされる。

NIHなどの公的な研究費に加えて、アメリカでは民間の団体が寄付金を集め、時として一つの団体が数億ドルにおよぶ資金を集めて研究を助成している。SIDSに関する多くの研究や、自閉症でのHox遺伝子の研究も民間の団体からの研究費によって行われた。またSIDSや自閉症を克服するために国の研究費支出の増額を求める議会活動にも熱心である。SIDSに関してはアメリカのSIDS allianceやSIDS Net、自閉症に関してはNAAR(National Alliance for Autism Research)やCAN(Cure Autism Now)など多くの団体が莫大な資金で研究を支えている。また、彼等のホームページの迫力には驚かされる。病気のメカニズムの解明に関する研究の現状などについて膨大な情報を提供している。必要のない死から子供達を守るために、本気で病気をなくそうという真剣さは圧倒的でさえある。

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■ 注

注1 セロトニンなど生体アミンを含有する広範投射系の神経細胞はそれぞれ数万個ほどである。一見多いように思われるが、ヒトの脳には約1000億個の神経細胞があるので、全体から見れば少数と言える。

注2

図3 拡大画像はこちら
前と後シナプス要素が厳密に1対1の関係にあるシナプスをイメージして脳脊髄液接触神経細胞(図3)と呼ばれている特殊な神経細胞を見ると、後シナプス構造は見あたらない。ニワトリ脊髄中心管周囲にあり、神経伝達物質の一つであるカテコールアミンをもった脳脊髄液接触神経細胞を観察したが、中心管の壁面に網の目のようにカテコールアミン陽性線維が観察された(104)。脳脊髄液接触神経細胞はヤツメウナギなど比較的単純な脳をもつ動物で多く観察される。それらは伝達物質を脳室や脊髄中心管に入っている脳脊髄液中(*)にはきだし、脳を漬け物にして脳機能を調節しているのではないかと想像している(図4)。しかし、脳がもっと厚くなった動物では、漬け物方式だけでは伝達物質が十分に脳のなかまで浸透できないので、広範投射系ができたと考えている。

図4 拡大画像はこちら
* 脳と脊髄の中心部にはそれぞれ脳室または中心管とよばれる空所があって、その中には脳脊髄液という液体が入っている。また脳や脊髄の周囲を覆っているクモ膜と脳・脊髄の間に生じた空間・クモ膜下腔も脳脊髄液によって満たされている。脳脊髄液は脳室の壁にある特殊な装置で作られ、脳室内を満たし、クモ膜下腔へと流れ出る。柔らかく傷つきやすい脳は、頭蓋骨という硬いヘルメットのなかにあるが、ヘルメットに脳が直接ぶつからないように、脳脊髄液で守られている。

注3

図7 拡大図はこちら
大脳皮質で神経細胞がある表層は6層でできている。こうした層構造は核を含む神経細胞体を染めるニッスル染色による染まりかたによって判断された層構造による。層はローマ数字で書くことが一般的である。例えば、大脳皮質の最も表層になるI層は、細胞体がほとんどない。III層とV層には大型の錐体細胞がある。このように神経細胞の形や分布状態によって層や部分を分けることを細胞構築学という。脊髄は10層にわけられる(図7)。I層は小さな細胞体があり、侵害受容感覚を伝える細いC線維がここで脊髄のニューロンにシナプスを形成する。II層はニッスル染色で染まる構造物がほとんどなく、膠のように見えるので膠様質ともよばれる。VII層には小型の介在ニューロンが多い。IX層は大型多極性の筋肉を神経支配する運動ニューロンがある。X 層は中心管の周囲を取り巻いている。ただニッスル染色で染めただけの結果から層構造をわけただけなのだが、その後の研究で分かった機能や伝達物質が層構造に一致して局在していたりするのが不思議である。

注4 年をとると頭が固くなるといわれる。また反対に、若い人の脳はやわらかい、良く聞く言葉だ。但し、やわらかいという言葉を使うと、豆腐みたいな頭と誤解されるので、ここでは表現を変えて、しなやかな脳にする。
 脳のしなやかさ、このことを可塑性(plasticity)と呼んでいる。学習・記憶、適応などに必要な脳機能である。シナプスレベルでのつなぎ換えやシナプス数の増減がおこり、変わりうる脳の回路が可塑性の背景にあると考えられる。子供の脳は可塑性に富んでいるから何でも良く憶えるし、環境の変化にも適応できる。また、可塑性に富んだ脳は損傷をうけても大人に比べ治りが早いわけである。  それでは脳は全てが可塑的か、そうとも言えない。本能や反射に必要な回路やその仕組みは、そうそう簡単に変わっては困る。変わることのない、ステレオタイプな脳機能を支える可塑的でない(rigid)部分もある。
 脳科学の世界で現在まで最大のキーワードであり続けてきた可塑性、その可塑性を生み出すために脳でどのような機構が働いているのか、解っているようでいて、良く考えるとほとんど何も解っていなかった。しかし、最近の私どもの研究は少なくともその機構の一部を明らかにしてきたと考えている。セロトニンをはじめとする生体アミンによるシナプスの形成維持機能、これは同時に可塑性をもたらす機構でもある。このメカニズムが遺伝的な要因や環境要因によって機能低下し、可塑性が乏しくなった状態が精神遅滞・発達障害といえる。

注5 セロトニンの受容体サブタイプは1A、1B、1D、1E、1F、2A、2B、2C、3、4、5A、5B、6、7など14種類が知られている(37)。3はイオンチャンネル型の受容体であるが、その他は全てG蛋白にカップルしている。ほとんどの受容体の蛋白構造は解析され、今やセロトニン受容体サブタイプ欠損ミュータントマウスが出そろいつつある。
 セロトニンほどではないが他の生体アミンも多くの受容体サブタイプをもっている。特にセロトニン受容体のサブタイプの豊富さは、セロトニンのもつ機能の多様性を裏付けていると考えられる。セロトニンというリガンドは一つでも、脳部位の違いによって興奮性にも抑制性にも作用することが以前から知られていた。本文のなかでも少し触れているが、精神神経疾患や不安などと深く関わることから、受容体サブタイプのagonistやantagonistの機能をもった薬物が多く使われている。
 サブタイプの機能のいくつかに関しては本文中で触れているが、それら以外の機能として次のようなものがある。1Aは不安と関連が深い。視床下部前部でのセロトニンとバゾプレッシンの拮抗状態が攻撃性を変化させる。バゾプレッシンが多くなれば攻撃的に、セロトニンが攻撃性を低下させる。セロトニンのこの機能は1B受容体が介在する。最後野・孤束核を介したメカニズムでおこる抗ガン剤による悪性の嘔吐は3型受容体antagonistによってほとんど完全に抑えられる。悪性の嘔吐により抗癌剤を用いた治療が困難になることが以前にはしばしばあったが、3型受容体antagonistにより抗癌剤を用いた治療が容易になった。7型は視交叉上核でのサーカディアンリズムをつくるセロトニンの機能を介在している。

注6

図16 拡大図はこちら
血液のなかの単球はセロトニンを多く含んでいる。この単球から放出されるセロトニンが脳内のセロトニン受容体に作用して機能を果たしていることが報告されている(147)。またセロトニン2A型受容体サブタイプは小脳のプルキニエ細胞にも発現している(図16)(78)。まるで抗プルキニエ細胞に対する抗体で反応したかのようであり、軟膜直下で樹状突起の末端が密に分布している。小脳は比較的セロトニン線維の少ない部位である。しかしプルキニエ細胞の樹状突起下での分布の様子をながめると、脳脊髄液による漬け物調節機構が哺乳類にもあるようにも想像される。

注7 胎生期や出生直後でのダウン症の脳内S100β蛋白値は調べられていない。従って、胎児期にS100β蛋白がダウン症胎児の脳内で低下しているとの確証はない。反対に成人のダウン症では脳内のS-100β蛋白が高い価を示すデータが多い。そのためにS100β蛋白が高値になることが精神遅滞の原因であろうと推測する研究者もいる。妊娠20週前後で十分にS100β蛋白が供給されず、未発達になったセロトニン神経系の機能を高めようとする、出生後の代償作用として脳内S100β蛋白が高値になったのではないかと推測している。

注8 14種類にものぼる受容体サブタイプがあり、多くの機能をもつセロトニンの働きを、首根っこをつかむようにして調節している蛋白がある。それがセロトニントランスポーターである。その名の通り、セロトニンの運び屋である。どんなふうに運ぶかというと、セロトニン線維から細胞外に放出されたセロトニンが、受容体に作用して機能を発揮している状態から再びセロトニン線維内に運び込む役目をしている。即ち、セロトニントランスポーターはセロトニンの働きを中断することによりセロトニン機能の調節を行っている。
 セロトニントランスポーターの遺伝子に塩基配列の異なるものが何種類かあることが、1996年にドイツのレッシュらの研究で明らかになった(77)。セロトニントランスポーター蛋白を作るための遺伝子に、プロモーターといわれる部分がある。この部分に遺伝子の記号である塩基の繰り返しがあり、それが14回繰り返すS(short)と16回のL(long)タイプである。さらにSとLに比べれば頻度は少ないが、18回または20回繰り返すXL(extra long)タイプがある。こうしたことを一般に遺伝子多型性とよんでいる。
 両親から半分ずつもらった遺伝子によって一対の遺伝情報を持っている。一対になっている片一方をアリルと呼んでいる。100人の人がいればアリルの数は200になる。アリルの組み合わせ、即ち遺伝子型は、SS、LL、SL、SXL、LXL、XLXLが考えられるが、日本人はSSが最も多く、次にSL、LLは少ない。XL アリルを持つ人がいてもほとんどはXLSであり、XLXLはほとんど0に近いと考えられる。セロトニントランスポーター遺伝子の多型性には大きな人種差がある。日本人をはじめとする東洋人では、アリル頻度でみると、ほぼ80%がSであり、残りのほとんどがLで、XLは極めて少ない。白色人種ではSとLがほぼ4対6の割合で、XLは少ない。ところが、コンゴではS、L、XLが、10:84:6の割合になり、東洋人また白人とはかなり異なる分布を示す(36)。
 セロトニントランスポーターのプロモーター遺伝子の多型性は類人猿以上にしかない。類人猿ではXLが多数派である。進化的に類人猿のすぐ下方に位置するバブーンやマッカク属のサルでは、ヒトや類人猿と異なるプロモーター部位にSとLがある。系統発生的にさらに下方に位置するサルや他の哺乳類には多型性は見られない。セロトニントランスポーター遺伝子多型性は、進化の歴史のなかで約40億年前に分かれたとされる、ヒト、類人猿とサルの一部のみにある。
 セロトニントランスポーターの多型遺伝子のそれぞれのタイプは、機能を異にしている可能性が示されている。核内の染色体上のDNA情報はメッセンジャーRNAに読みとられる。そしてメッセンジャーRNAは核を出て細胞質に移動して、メッセンジャーRNAに書き移された遺伝情報に基づき、アミノ酸が組み合わさって、それぞれ個別の蛋白質が作られる。DNAには直接アミノ酸の配列を決める部分以外に、プロモーターとよばれる問題の部分がある。プロモーターはDNAからメッセンジャーRNAに情報が読みとられる効率を調節する部位である。L型をもつプロモーターではS型に比べ、読みとり効率が高く、メッセンジャーRNAが多くなり、最終産物のセロトニントランスポーター蛋白がL型では多量に生産される。従ってL型を持つヒトの脳内では、セロトニントランスポーター蛋白が多く、細胞外のセロトニンがセロトニン線維内に向かってより多く運ばれ、結果的に細胞外でのセロトニン量が減少して、セロトニンが受容体に作用してセロトニンが機能を果たしづらくなる。XLではどうかというと、現在研究中であり結果はまだ分からないけれども、XL保有者の血液中のセロトニン濃度が低いので、恐らくは脳内濃度も低下していると考えている。この遺伝子多型性がヒトそれぞれに特有な性格などを決定する要素となっていることが示唆されて以来、喫煙癖(7)、自殺(12)などとの相関が報告されている。

注9 セロトニン選択的再取込み疎外薬の英語名Serotonin Selective Reuptake Inhibitorの省略、それがSSRIである。欧米では十数年前からProzac、 Zoloft、 Paxilなどの商品名で広く使用されて、有効性が広く認識されてきたが、日本で認可になったのは2年前である。セロトニントランスポーターの機能を押さえ、細胞間隙でのセロトニン濃度を上昇させる。従来の抗うつ剤に比べ副作用が少ない。またうつ病以外にもストレス、境界型人格障害、拒食症、発達障害児の攻撃行動などにたいして欧米では広く使われている。

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