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 シンポジウム2

 3歳児神話を検証する2〜育児の現場から〜

白梅学園短期大学教授 鈴木 佐喜子

 白梅学園短期大学の鈴木です。よろしくお願いします。

 保育の立場から発言させていただきます。3歳児神話は、小さい子どもを持っている母親の就労や保育園での乳児の保育をどう考えるかという問題と深く関わっているので関心を寄せています。3歳児神話の根拠として非常に大きな影響を与えたのが、1951年の『乳幼児の精神衛生』(MATERNAL CARE AND MENTAL HEALTH )を中心とするボウルビィの母子関係論ですが、働く母親、正確には雇用労働者として働く母親の増加など、ボウルビィの理論が出された1950年代と今日では社会的な状況も大きく異なり、その意味も変化してきています。また、「3歳までは母親の手で」と言われても、生活のために働かなくてはならない家庭は、これまでもあったし、今もあります。子育ては現実の生活のなかで営まれているものだからです。ですから、父母の労働や生活の実態、子育ての実態、保育の現状や社会的な変化を踏まえて「3歳児神話」も検討していく必要があると考えます。

1. ボウルビィの母子関係論の理解を巡って

 最初に理論的な検討ということで2点述べたいと思います。一つは、ボウルビィのマターナル・ディプリベーション理論、一般的には母子関係論と言われる理論についてです。「3歳までは母親の手で」と言われるとき最も有力な根拠とされてきたのが、ボウルビィの母子関係論ですが、このボウルビィの母子関係論に対して、イギリスの精神医学者M.ラターは『母親剥奪理論の功罪』(北見芳雄訳、誠信書房)のなかで、このボウルビィの理論について、注目すべき指摘をしています。

 「ボウルビィは母子のむすびつきの重要性を指摘しながらも、同時に・・<乳幼児をときおり母親以外のだれかに世話させることに慣れさせることは、優れた保育方法である>とも明確に述べている。・・またボウルビィは母親が子どもを置いて働きに出ることも、母親にかわって世話をする人物の子どもへのマザリング的接し方が、母親のやり方とそれほどへだたってはおらず、かつ連続して行われることがとくに保障されるならば、子どもに悪い影響はないであろうと強調した」。それにもかかわらずボウルビィの著作は「子どもの世話は、二十四時間ひねもすただ一人の人物によってなされることが最良である」とか「子どもの正しい養育は、母親が職業を持たない場合にのみ可能であるとか、子どもを保育所や児童施設に預けることは、子どもに時に深刻で恒久的な悪い影響をもたらす」と誤って理解されたり、誤った主張がなされたのです。

 このように、ボウルビィの母子関係論は、母子の結びつきの大切さを主張しながらも、同時に母親の就労を否定したり、家庭での育児か社会的な保育かということを機械的に対立させるような二者択一の単純な理論ではなかったのです。それにもかかわらず家庭での母親の育児の最良とする方向で誤った主張や恣意的な援用がなされ、広がっていったのだということをまず指摘しておきたいと思います。

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