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学校での不正行為

ロバート D.ストローム アリゾナ州立大学教授
パリス S.ストローム アーバン大学助教授

要約

高校教師や関係者は教室内で起こる不正を減らそうと協力している。本論文では、(1)テストや宿題で生徒の不正が広く蔓延していること (2)大人、10代の青少年それぞれの動機の分析 (3)インターネットなどのIT技術を使った不正行為の新しい形態 (4)受験時の安全を守る、不正手段を発見する、生徒と教師の連帯責任を取るなどの全国的な運動 (5)著作権を無視して、論文を借用、購入できるウェブサイトの存在 (6)盗用(他人の文章・語句・説などを盗んで使うこと)の防止策に有効な対策 (7)学校での不正を最小限にするためのガイドライン (8)将来、裁判所でも審理されると思われるインターネット関連の不正行為や罰則について定めるサイバー法の出現 (9)高等教育機関が権威を保ち、生徒が倫理観を学ぶために必須となる親の協力、などについて触れている。


学校での不正行為

多くの親が、現代は青少年が生きていくことがその前の世代よりも複雑な挑戦になると思っている(Sciafani,2004)。10代の青少年は、直面することが予測される困難に対処できるように、ある種の個性を発達する必要がある(Peterson & Seligman, 2004)。小学生や中学生の子どもをもつ全米の親1,600人を対象として、個性の発達に関わる11の価値観のうち、教えることが相対的に重要なものについて調査をした(Farkas, Johnson, Duffett, Wilson & Vine, 2002)。最も高く支持された価値観は、「誠実で正直であること」で、91%もの親が子どもに教えることが絶対必須であると回答した。親業を評価する一つの方法として、目標を最高値とした百分率(%)と、子どものために上手くしつけられたかを自己評価した百分率を比較する方法がある。この調査では、91%の親が誠実で正直であることが基礎的なしつけであるとしたものの、55%の親しかそれが上手くいってないと回答しておらず、36%もの大きな開きがある。この種の分析からわかることは、親が必須と考えるしつけでさえも、教育的な意向と実際に達成できることとの間には重大な開きが存在するということである。


不正行為の蔓延

教師と生徒もまた、誠実で正直であれという家庭のしつけがうまくいっているかどうかを評価する適切な情報源である。高校教師356人を対象にした調査では、90%以上の教師が不正は学校での日常的な問題であると回答し、50%の教師が生徒はほとんどの教科で不正を行っていると推測した(Bushweller, 1999a)。このような数値は、20,000人の中学生を対象にした世論調査でも70%の生徒が宿題や試験で不正を行ったことがあると回答していることから、その正確さが確証されている(Whitley & Spiegel, 2002)。

不正を行う生徒は能力が無いため、頭のよい生徒に遅れをとらないようにする唯一の方法として不正をするのではないかと、ある人は思うかもしれない。これに反して、有名なWho’s Who Among American High School Studentsに選ばれた3,000人の生徒が自分達の不正経験を記述するように言われたところ、80%の生徒が学校のテストや州の試験で不正を行ったことがあると回答した(Lathrop & Foss,2000)。このように高い学業達成者のグループが不正行為に関与する割合が高いことは、20年前に優等で表彰された学生に同様の質問をした時よりも10%回答が増加していることでも裏付けられている。学校で不正行為を認めた、次世代を担うリーダー的な青少年のうち95%は一度も捕まったことがなく、自分達は道徳的に責任能力があると考えている。

不正行為は中学生や高校生に限られたことではない。大学でも不正が習慣的に行われていることが多くの証拠からわかる(Cizek, 2003; Johnson, 2004; McCabe & Pavela, 2000)。デューク大学のアカデミック・インテグリティ・センター(The Center for Academic Integrity)は、学術環境に倫理観を回復させようと協同する250以上の大学の代表である。この活動に参加している大学関係者は、学生に期待すべき倫理観の回復レベルを明確にするために主義・方針を策定したり、学生がライフスタイルとして誠実さや倫理観を形成できるように教授が促せる効果的な戦略を考案したりしている。このセンターのウェブサイトは http://academicintegrity.org/ である。


不正行為を行う動機

あらゆる年齢層や成績のよい生徒が不正行為になぜ関与しているのだろうか。一つの推測としては、学校での不正は、社会で一般的になりつつある倫理観の麻痺−すなわち他者を気にかけるよりも自己を中心に考える傾向−に過ぎないとも考えられる(Sommers & Satel, 2005)。他の見方としては、特に高校卒業に必要な最低限の能力に満たない生徒にとっては、一発勝負の州の試験に失敗する恐れが、不正に走る主な理由と考えられる(Callahan,2004)。生徒に道徳の欠如があるのを無視して、生徒に説明責任を取らせない教師サイドにも部分的な責任があると主張する識者もいる(Peterson & Seligman, 2004)。教育者の共通の認識としては、目標達成のための段階的なステップをする努力をさせず、自分の子どもが他のクラスメートよりもよい成績を取ることを過剰に期待する親が急増していることも原因として挙げられる(Baker & LeTendre, 2005; Nichols & Good, 2004)。

青少年の経験を理解するために、親を頼るのではなく、生徒自身がどのように感じているかをより正確に評価する方法がある。それは、調査である。調査を行うことは、どんな教育改革よりも、社会が青少年の意見に関心があり、考慮に入れたいと思っていることを生徒に示すことできる。コンピューターはどの学校にもあり、インターネット調査が可能であるのだから、教育者は生徒が学校生活で何を感じているかもっと認識する努力をすべきである。生徒の生の声を聞くために、筆者は青少年のための調査を立案した。これらの投票調査はインターネットで運営され、学習と教育に関する生徒の感じ方に焦点を当てる。自己評価形式の質問が多い多肢選択式のフォーマット、データ分析のための人口統計学、学校環境の改善につながる調査結果の使い方の説明については、筆者の他の論文を参照してほしい(Strom & Strom, 2005)。

この投票調査の中には学校での不正について重点が置かれたものもあって、その項目としては、教室で広く観察されていること、不正に対するクラスメートの反応、テストでの不正や盗用に対する処罰、不正発見のために教師が使用するソフトウェア、不正をする大人に対する意見、娘や息子の不正に対する親の反応、不正を構成する状況、不正行為を正当化する条件、不正を行う者の性格、不正を行う頻度、不正を行う動機、などが含まれる。以下の選択肢は不正に対する動機付けと正当性を問うものである。クラスメートが不正を行った主な理由としては、
  1. 大学入学にはテストでの高得点と良い成績が必要だから
  2. 良い成績を期待している親を喜ばせたいから
  3. 他の人が不正を行うので、自分も余儀なく、あるいは成績が悪くならないよう
  4. いくつかの教科で合格する基準が厳しすぎるから
  5. その他
ほとんどの生徒は上記の選択肢が不正を行う主な理由だと感じている。自由記述の「e.その他」には、「無料で教えてくれる有能な家庭教師を利用できないから」や「大人が見本となって不正行為を教えているから」がしばしば挙げられている。

どの学区にも不正行為に対する政策や行動の手引きがあるべきである。そうすれば、教師が目撃、あるいは報告を受けた不正行為に対し、ストレスなく対応することができる。Who’s Who Among American High School Studentsの調査対象となった生徒の80%がテストで不正を行ったことがある回答しているのに対して、親を対象とした別の調査では、63%の親がどのような状況であろうと自分の子どもは不正を行わないと確信していた(Lathrop & Foss, 2000)。そのような親は、正しい行為と間違った行為の区別を子どもに教えるだけで充分であると考えている。しかし、この区別の理解に加えて、学校で誠実で正直に行動するための責任について、親は子どもに関連づけながら教える必要があるのである。不正を告発された子どもの親が訴訟を起こすと脅しをかけてきた時に、教育者が無力感を感じるということはよくある事である。多くの教師は、生徒を誤って告発してしまったら、その後、恐ろしい結果に苦しまなければならないと心配している。実際、教育者の70%は、親の反応を考えると、不正を行った者を特定したり、罰を与えたりすることに気が引けてしまうという。残念な事であるが、生徒は不正を行っても罰を受けることは滅多にないと知っているため、不正行為はリスクが少ないと考えているのだ(Whitley & Spiegel, 2002)


ITを利用した不正行為と試験監督

教師はテストを実施する際、注意を怠らないように忠告される。生徒の不正の常套手段としては、体や服や持ち物のどこかに書き記したものを見るという方法がある。通常、試験を受ける者は、試験中、他の人の用紙を見ないように注意を受けてきた。しかしIT技術の進歩により、新しく、より洗練された不正方法を大量に生みだしている。PHSや携帯電話をもつ生徒は、校内から、携帯電話では校外のどこからでも、「ビーム(電波)」や通話でデータを静かに表示させることができる。こういった機器は試験中、机の下やだぶだぶのズボンのポケットの中によく隠されている。PHSや携帯電話には、テキスト化された伝言、即時の伝言、電子メール、カメラ、ビデオ録画などの機能が付いていて、解答を記録したり、送信したりするのは簡単である。携帯電話には手で持たなくて良い(ハンズフリー)機能が付いているものもあり、その場合、音声ファイル(すなわち、授業の重要箇所を事前録音したもの)を聞くことができる。同じような音声ファイルを用いる方法としては、iPodのような音楽再生機器を使う方法もある。このような機器の音声再生はイヤホン型で小さいため、耳を髪で覆えば教師の目をごまかすことができるのだ(Cizek, 2003)。

教師のなかには、問題を解くために、試験中、PDAや図を描ける計算機などの持込みを許可することがある。しかし、注意しなければならないのは、液晶画面にデータが表示されていたとしても、不正をするために、縮小されたデータが含まれていることがあり、それは数秒間アクセスした後に、キーを押すだけで、完全に隠れてしまう(最小化される)ため、教師からは見えないのである。同様の手口として、装飾的な立体模様が含まれた画面保護機能(スクリーン・プロテクター)は、使用者のみが画面を見ることができ、違う角度から他の人が見ることができないようになっている。もし、教師が計算機やPDAを許可するならば、こういった事実を周知している必要がある。IT技術は学習や評価に貢献しているが、IT機器は責任ある倫理的な方法で使用されるべきである。カリフォルニア大学バークレー校のバーバラ・デービスは、不正行為の防止、テストの採点や返却、試験の延期・課題提出の遅れ・授業欠席に対する嘘の弁明への対応策、授業で学生に期待することを明確にする事、などに役立つ情報を提供している。そのホームページのアドレスは、http://teaching.berkeley.edu/bgd/prevent.html である。

授業が異なる時間割で行われている場合、試験の日時は大抵違う。この場合、すでに試験を受けた人から試験問題を購入することが可能となり、売買に関わった両方が不正に関わったことになる。さらに大胆な不正行為としては、お金を払って、代わりに試験を受けてもらう方法もある(Johnson, 2003)。試験を受ける全学生の本人確認をしっかり行い、同じ授業の試験日時を同じにすべきである。さらに、教師は学期ごとに試験を修正すべきであり、そうすることによって、学生が以前実施された試験問題の解答を手に入れて不正をする見込みや影響を小さくすることができる。問題文の順序が異なるような多様な試験を実施することも不正行為の予防となる。なぜなら、試験教科について、自分より得意な生徒の解答を写そうとしても、解答順序が異なるため容易ではなく、挫折するからである。試験中に座席を変えることも有益である。生徒はできるかできないか分からない生徒の解答はカンニングしないからである。試験中に教師が退席したり、生徒が退席することを許可したりすると、不正行為は増加する。試験中はどの生徒も必ず教師の視界に入っていなければならない(Johnson, 2003)。

教科書やノート持込みの試験を定期的に実施することにより、教科内容の熟知度が増し、復習方法が改善され、不正の発生率が減少する。これまでに述べてきた方法の中には過度に警戒しているように思われるものもあるが、全体としては、これらの方法は不正行為を予防し、試験環境が完全であるようにサポートするものだ。生徒が学業に真摯な態度でのぞもうとするのは、教師が評価に対して公平で誠実であろうと努力する姿を見るときなのである。試験への不正行為や著作権侵害の分野の専門家であるフレメールとマルキー(2005)は、「もっとも悪質な試験への10の不正行為」を描き、不正行為者が試験結果に基づく価値判断と一致させながら不正行為を行っている様子を説明している。詳細は、http://www.caveon.com で、論文(articles)をクリックしてほしい。

生徒の不正の形態がますます複雑化するにつれて、関連しているが、予期しなかった脅威が一般的になってきた。現代のように試験が重視されている時代では、教師や教育者の給料や経歴は生徒の学業達成度に比例して上昇する。教師や校長教師のなかには、試験に関わる不正で失職した者もいる。生徒に試験の解答を教えたり、試験を受けている生徒に応じて試験問題を変えたり、試験後、成績処理のために学区の教育事務所に解答用紙を提出する前に解答を改めたり、試験要綱にあるよりも試験時間を延長して生徒が試験を完了するようにしたりするなどの理由によるものであった(Axtman, 2005)。

教育者が生徒の解答用紙を捏造する様子について、ニューヨークのロングアイランドの事例は大変注目を浴びている。2005年度のリージェンツテスト(州の試験)を受けた生徒が手に青いペンで正しい解答が書かれてあったため捕まった。予め正しい解答を知っていたのは、彼の父親が近くの学区の教頭教師でこの州の試験の責任者であったからであった(Lambert, 2005)。このような違法行為に対する怒りの声は、公正な試験を行うための新たな政策の策定にもつながっている。オハイオ州では、教師は行動規範に署名することが義務付けられていて、不適切な試験監督をすれば教員免許を取り消されてしまう。ケンタッキー州では、6通りの州のテストが実施されているが、それは教師が1通りの州のテストでは生徒に答えの導き方を教えるのが簡単なためで、それを防ぐことが目的である(Callahan, 2004)。

デラウェア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テキサス州では、No Child Left Behind Act(落ちこぼれ防止法)に基づき、毎年行われるテストを監視するために、全米初のテスト・セキュリティー会社であるCaveon社との契約が拡大している。この会社は「データ科学捜査(Data Forensics)」と呼ばれる方法を開発して、異常な回答パターンの生徒−例えば難しい問題に正解が多いのに簡単な問題には不正解が多いなど、突出した高い合格率のあるクラスや学校、不正解の回答が消しゴムで消されて、正解の回答が書かれている試験用紙などを探し出すのである。この会社の他のサービスとしては、不正行為から既存の機器を守ったり、著作権のあるものに対する違法アクセスの防止、高性能の統計的なウェブ・パトロール機器を用いた不正行為者の追跡、不正行為者に責任を取らせるための学校管理者に証拠提供などがある(Foster, 2003)。


倫理観とインターネット

2000年にChildren’s Internet Protection Act(子どもをインターネットから守る条例)が議会を通過し、公立の学校や図書館では、子どもがインターネット上でポルノなどの有害物を閲覧するのを防ぐフィルターをインストールすることが命じられた。この条例のもう一つの特徴は、インターネット上で入手できる著作権のある作品(著作、音楽、芸術)の保護を保障していることである。国の急務として、どの世代にもオンライン環境が整うよう努力されてきたが、インターネットを使用する上で守るべき倫理的行為を学ぶためのトレーニングの必要性が見落とされてきた。最近、若い人によるコンピューターを使った著作権侵害が急増しているが、彼らは音楽を無断でダウンロードし、宿題や課題をやるにあたって出典を明らかにしないで、あたかも自らが書いたように偽って、先生に提出している。このような倫理観を欠いた不正直な行動は生徒だけにみられる訳ではなく、広く大人の仕事場にも蔓延しており、「誠実」や「信頼」といったもの、あるいは「認めるべきは認める」といった態度は大人にも求められている(Evans & Wolf, 2005; Maciariello, 2005)。ある推計によると、違法なコピーや配布によって、ソフトウェアだけでも年間120億円の損失となっている(Schwartz, 2001)。

ウェブサイトの中には、http://www.schoolsucks.com/ のようなレポートの倉庫があって、学生は無料でアクセスすることができる。文献を読んで適切な引用をしながら自分の見解を示すレポートの作成の代わりに、このウェブサイト上の倉庫からレポートをダウンロードすることができる。また、http://www.termpaper.com というサイトでは、20,000以上のレポートが20ドルから35ドルの間で購入できる。他の一般的なサイトとしては、http://academictermpaper.com があり、30,000にも及ぶ研究レポートが提供されていて、1ページ7ドル、最大120ドルで売られている。また、このサイトでは、高価だが、利用者のニーズに応じたレポートも作成してくれる。

もし学生がインターネット利用に欠かせない倫理的責任に関する訓練を十分に受けていなければ、他人の言葉や考えをあたかも自分の考えとして用いることに何の問題もないと考えてしまっても不思議はない。インターネットを利用した盗用は、中学、高校、大学の教師が苦慮しながら立ち向かっている非常に大きな問題である(Axtman, 2005 ; Bushweller, 1996a)。違反や処罰を明確にするサイバー法の制定が検討され始めており、こうした問題は将来、教師や学校関係者によってではなく裁判所で審議されることになるかもしれない。著作権に関する弁護士であるロナルド・スタンドラー(2000)は、ウェブ上(http://www.rbs2.com/plag.htm)で盗用・盗作についての示唆に富んだエッセイを公開しており、裁判所の判決なども挙げながら、多岐にわたる問題について解説している。

あるテーマについてウェブで調べることは、図書館に行って本を調べるのと同様、研究をする上での最初の一歩にすぎないということを娘や息子がしっかりと認識するように教える責任は親にもある。本や学術誌やインターネットから資料をコピーし、それを自分が考え出したものとしてふるまうのは、不誠実であり、不正行為になる。インターネットへのアクセスの急増から、生徒による不正行為は低年齢化しているという報告がある。アカデミック・インテグリティ・センターによる全米の中学生を対象にした調査によれば、中学1年生の73%、小学6年生の66%が出典を明記することなく日常的に資料を借用していると回答した(McCabe & Pavela, 2000)。「切り取り」や「貼り付け」の作業、すなわち盗用は広く行われていて、生徒はインターネットで自分が見付けたものを、自分がやった課題として提出するのである。


盗用の防止

教師は生徒にインターネットを利用した調査能力を身につけてほしいと思う一方で、盗用の急増に対処することの難しさを感じている。独自性のあるアイデアを促し、他の人が書いた文章を盗用しないように、学区では課題の盗用がすぐ判明するサービスの提供を始めた。この防止サービスは、出典を明記しないで用いた8語以上の文章を探索し、不正を行った生徒や親に対し、証拠として提出するものである。すでに多くの州の公立学校で広まっていて筆者の大学でも採用している。ホームページ(http://www.turnitin.com)で紹介されている。通常、1日大体3万件のレポートがチェックされ、そのうち30%以上に不正がみつけられているようだ。西イリノイ大学のブルース・リランド教授(2002)は、ホームページ(http://www.wiu.edu/users/mfbhl/wiu/plagiarism.htm)で、どのように盗用に対応するか、期待される倫理観に関して何をどう学生に伝えるのか、教師にアドバイスしている。

青少年は教師が課す宿題の良し悪しについて、評価するように求められることはまずないが、学生の評価を知る方法は、学校での出来事について語る学生の会話の中にある。例えば、アラバマ州モンゴメリーの大学2年生、ジャマル君は、学生の不正行為について、その動機のみに焦点を当てるのは誤っていると考えている。「もっと大きな問題は多分、先生が学生に対して、どのように考えるかを教えるよりも記憶することを要求していることにあるのではないか。試験がもし全て事実、決まりきっている答えを尋ねるものであれば不正は簡単であるが、ある考え方について賛成であるか反対であるかを論じるような問題であれば、不正は難しくなる」と言う。

ジャマル君の見解はクラスメートの合意は得られないかもしれないが、不正されにくいもっとやりがいのある課題を教師が出すことで不正を最小限にすることができるという彼の考え方は支持を得てきている。実際に何かをして学ぶように仕向けている課題、協力的なグループでの相互学習、自発性をサポートし、独創的な思考を育てたりするような課題は、学生が自分達の考えを積極的に構築するために必須であり、従来の教授法からの転換が求められている。古くから、教師は直線的に教える授業についての準備に多くの努力を費やし、生徒が自分で学ぶ機会となる課題の開発にはあまり力を入れてこなかった。

個人やチームの課題も、不正行為を行うもう一つの問題のあるところである。以下の提案は、先生が不正行為の可能性を減らすために役立つものである。
  1. 各課題の目的、学習効果を明確にし、適切な方法論、文献、成果について生徒間の対話を促す。

  2. カリキュラムと実生活の関連性を心がける。教師や教科書から得られる知見以上の経験をもつ他の世代や文化の人々と交流することにより、学生が単位を取得できれば、カリキュラムが実生活と結びついていることが実感できる。(Strom & Strom, 2002)

  3. 生徒に自分の感情を表現し、結論に至った過程を説明するように促す。このようなレポートは、書く方も楽しく、読む方も満足する。(Johnson, 2004)

  4. 秩序立てて考えること、創造的な行動の大切さを強調する。知識のみを伝えるのではなく、学習目標の分類学(Taxonomy of Educational Objectives)で明らかになっているような高いレベルの能力を養える生徒参加型の授業にすべきである(Krathwohl, 2002)。

  5. 通常の問題解決の枠を越えさせる。生徒は教師が簡単に答えられる質問をたびたびするが、他の解決方法を考え出して、自分で選択するように促すことが、人生で生じる困難に打ち勝てるようになる鍵となる(DeBono,1999)。

  6. 多様な方法で情報収集するよう奨励する。学生自身の言葉による要約や解釈つきのインターネット上のデータのハードコピー、世論調査やインタビュー調査により引き出された結論、実験の各段階の説明など、様々な形で課題を提出させる。

  7. 成績を評価するのに用いる基準を明確にする。もし、学生が予め評価基準を分かっていれば、不安になった挙句に「これが先生の望むものかは自信がありません」と言い訳することなどなく、課題に集中できる。

  8. 最終提出の前に、学生が再考して修正、改善することを認める。クラスメートから修正のアドバイスを受け入れることで、忍耐力を養い、建設的な批評への対処の仕方を学ぶ。

  9. 課題に対する口答での批評の場を設ける。学生は批評に対し自分の考えを言葉にして表す練習、クラスメートは相手に役立つような批評をする練習ができる。また、教師は学生の論点が明確でない時に説明を求めることができるので、不正行為にIT技術が使われるのを防げる。

誠実であることと成熟

不正行為を防止する方法として、法律遵守のシラバスや厳しい防止策だけに頼るのは不充分であり、教育的指導による努力もまた必要である。成熟しているかどうかの指標として、誠実さが重要であることを学生は理解することができるだろう。実際、他の人を公平に扱う責任感が無ければ、成熟しているとはいえない。生活のあらゆる面で誠実であることの大切さについて、周期的に話し合う場をもつことは、青少年にとってとてもいいことだ。不正行為がもたらす悪影響について彼らが考えさせられることはめったにないが、上の学校に進むにつれて必要とされる知識を身につけていなければ、知識と技能の両面において実際の力とのギャップに苦しむことになるだろう。

学業面での不正行為は、長期的な意味で、もう一つの大きな不利益をもたらす。教室内や学校外において、個々の学生の行為の指針となる道徳が抜け落ちてしまう。 このことは、ケビン・クライン主演の映画『卒業の朝』(原題:The Emperors Club 2002)で効果的に描かれている。聖ベネディクト男子高校の教頭先生である主人公は、生徒に将来の職業の選択に加え、人生に道徳的な目的をもつようにしむける。この映画では、偉大な教師が生徒に与える影響が多大であることや、10代における不正行為が生涯にわたる習慣になってしまうことが描かれている。この映画のウェブサイト(http://www.theemperorsclub.com)はユーザー参加型で、道徳的であることをどのように定義するかなどの興味深いクイズを提供している。

教育者は、生徒がライフスタイルに誠実であることを取り入れられるようになるために、求められる全ての指導をすることはできない。不正行為は仕事の場の現実であり、成功するためには不正をせざるを得ないと、娘や息子に伝えている親もいる。親がこのように不正やごまかしは普通のことで、弁護できることとして大目に見るような態度を取ると、教師は、不正行為が蔓延しすぎており許容できる習慣となっているというメッセージに、反論することがかなり難しくなる。学校は親を対象にした講習会を開いて、青少年が直面する不正行為の範疇に焦点を当てながら、家庭で正直、誠実、信頼、成熟などについて話し合えるように議題を提供することができるだろう。このような方法であれば、母親も父親もこうした考え方、態度が子どもの中で育まれるように努力を続けられるのではないだろうか。真摯な態度でなしえた学業の成功は、自分でした課題に対して誇りを持たせる。また、学習改善のために個別指導が必要な場合は教師が的確に把握できる(McCabe & Pavela, 2000)。結局、生徒個々人の成功は、前向きな価値観を持てるかどうか、どのくらい成熟しているかにかかっている。このような健全な発達は、世界のリーダーを輩出することを熱望する社会で、より大きな注目を集めるに違いない。


参考文献

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