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ココロとカラダがミスマッチ!


片岡千鶴 映画評論家

 斉藤一夫(尾美としのり)のクラスに転校生の女の子がやってきた。彼女の名は斉藤一美(小林聡美)。名前が1字違いのうえに、実は2人が幼なじみだということが判明し、クラスメイトたちから冷やかされた一夫はおもしろくない。いわゆる悪ガキタイプの一夫と優等生タイプの一美。ただでさえ対照的なこの2人のココロとカラダが、ある日突然入れ替わってしまったとしたら?

 大林宣彦監督が故郷の尾道を舞台につくった″尾道3部作 の第1作目『転校生』は、中学生の男女の中身が入れ替わってしまうという設定の学園コメディーだ。

 急に女っぽくなった一夫と急に男っぽくなった一美に家族や先生、友だちは大混乱。けれどもいちばん混乱しているのは、なんといっても当の本人たち。本当のことを言っても信じてもらえるワケがない。仕方なくお互いを装って学園生活を続けることにしたのだが、悪戦苦闘で前途多難。最初のうちは、一夫も一美も自分のカラダのことだけを気遣っていたのだが…。

 さて、この『転校生』が男女の性の入れ替わりを扱ったものなら、もう一つの作品『ジャック』は大人と子どもの入れ替わりを扱ったもの。というか、厳密には大人の肉体を持った子どもが主人公だ。フランシス・F・コッポラ監督が、早世した息子ジアに捧げた作品である。

 ジャック(ロビン・ウィリアムズ)は、生まれながらに通常の四倍のスピードで成長するという特異体質だ。おもちゃの銃を持ちキラキラと目を輝かせながら戦闘ごっこに興じる彼の内面はまさしく10代の子どもだが、その外見は早くも頭が薄くなりかけた40代のおじさんだ。ジャックの両親は、彼を気遣うあまり、家庭教師をつけて家から一歩も外に出したことがない。

 ところが、当のジャックは“学校”という所に行ってみたくてたまらない。自分と同年代の人たちに会って話してみたい。遊んでみたい。そしてできれば“トモダチ”というものをつくってみたい。

 やがて両親は一大決心をして、イジメを心配しながらもジャックを学校に通わせることにした。希望と不安が入り交じった興奮に胸を躍らせながら登校初日を迎えたジャックを待っていたものは…。

 男の子の女の子、女の子の男の子。そして大人の子ども。…と、設定はかなり大胆だが、共通して描かれているのは他人を思いやる心の芽生えと成長の過程。観ていてノスタルジックな雰囲気に包まれるのは、いつかどこかで味わったことのある、そんな時を思い出すからかもしれない。



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株式会社 ベネッセコーポレーション ベネッセ教育研究所発刊
月刊/進研ニュース[中学版] 第252号 2000年(平成12年)4月1日 掲載


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