教育書学校の閉鎖的体質とその打開策について 荒巻正六 学校問題研究家 |
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臨教審以来、「開かれた学校」について種々論じられてきたが、学校の閉鎖的体質の改善はあまり進んでいるとはいえない。それは古代からの学校の成立事情、特に日本では1872(明治5)年の学制発布以来の「教学主義的教育体制」による「学校の聖域」思想、「教員心得」などにみられる教師養成政策が、今なお教育行政・現場・社会一般に根強く残っているためである。この学校の閉鎖的体質を打開しない限り、教育改革は実現しない。そこで今回は、そのことを鋭く論じた次の2書を紹介したい。 一つは、早稲田大学特任教授・筑波大学名誉教授で幅広く現代の教育事情を論じている下村哲夫氏監修の『21世紀を築く学校』、もう一つは東京大学教授で異色の教育論を展開している佐藤学氏の『教育改革をデザインする』である。 学校の閉鎖的体質については、両書に共通する指摘が多い。それをまとめて挙げると、次のようである。 教員は免許制による専門職であるとして、他の教師の指導に口をはさまないし、その代わりに自分も他から干渉されたくないという意識が強い。そのことは大なり小なり独善的になり、排他的行動に陥りやすく、対立関係をつくりやすい。したがって連携プレーが不得手であり、学級のことは学級内だけですませようとして、問題の解決を遅らせたり、こじらせたりする。そんなことから学校内には教室の壁、教科の壁、クラブの壁、組合員と非組合員の対立、行政・PTA・地域と学校の対立、学校の意思決定の複雑さや遅れなどが生じている。 次にその閉鎖的体質の打開策であるが、下村哲夫氏の監修による前書では、一つひとつの閉鎖的体質ごとに、その改善策を挙げている。いくつか紹介しておきたい。 後者の佐藤学氏は打開策として、ここ20年間、全国の学校と協力して、氏の抱く「学びの共同体」としての学校づくりを展開している。氏は、今の子どもたちは勉強に追いまくられているのではなく「学びから逃走している」ととらえ、教室に「活動的で、協同的で、反省的な学び」を実現しなければならないとする。そのための理論と具体的実践例を数多く挙げている。 なお、前者では「戦後教育五十年の光と影」が、後者では「教育改革論議の10のウソ」がおもしろい。参考にすべき点も多い。ぜひ一読されたい。 |
『21世紀を築く学校―岐路に立つ日本の教育を切り拓く』 | ||
下村哲夫 監修 原崎茂・小杉康裕 編著 |
学陽書房 | \1,900 (本体価格) |
『教育改革をデザインする』 | ||
佐藤 学 著 | 岩波書店 | \1,700 (本体価格) |