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自然科学書

星空への招待状


森田暁 博物館プランナー

 テレビゲームブームのまっただなかで生まれた子どもたちに、自然の美しさを伝えるのは誠に難しい。例えば、高原の夏の星空といった、だれが見ても美しいものにすら、そう簡単には反応してくれないのである。それをむしろ逆手にとって、彼らにとっては身近な存在であるCG(コンピュータ・グラフィックス)の圧倒的迫力で宇宙の魅力を伝えるのはいかがだろうか。

 『宇宙デジタル図鑑』は、地球上空約600キロの宇宙空間に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡などによってとらえられた、宇宙に関する最新のデジタル情報を、最先端のCGを駆使して加工し、宇宙の姿を手に取るようにわかりやすく、カラフルに再現した図鑑である。火星、木星、小惑星に始まり星々の誕生の瞬間まで、望遠鏡による観測やプラネタリウムでは体験できなかったような、宇宙の神秘を垣間見ることができる。科学的データをそのまま素材としているために、アニメでは得られないような圧倒的な迫力がある。ちなみにこの本は、NHK教育テレビの人気番組「サイエンスアイ」で放映された内容の初の出版化である。

 『星空を歩く』のほうは、もう少し、現代の天文学の成果を体系的に知りたい方にお勧めである。この本も、巨大望遠鏡「すばる」やハッブル宇宙望遠鏡によってとらえられた最新画像が満載されているが、それよりも、まるでプラネタリウムのように1月から12月まで各月の星空の話題から説き起こして、全体として近年の天文学上のおもだった話題を網羅してくれているので、そのまま教育現場で利用することが可能である。

 例えば、2月の話題は地平線ぎりぎりに輝く南極老人星・カノープスと天空にさん然と輝く天狼星・シリウス、8月の話題は夜空を飾る星花火・ペルセウス座流星群、10月の話題はアンドロメダ大銀河とその仲間たち、といった具合である。著者の推奨する、満天の星空の下、星たちの輝きの奥にある形而上的な宇宙空間の雄大なスケールを体感する、星空浴への疑似体験の書である。



宇宙デジタル図鑑 星空を歩く

『宇宙デジタル図鑑』
NHK科学番組部 編 NHK出版 \2,200
(本体価格)

『星空を歩く―巨大望遠鏡が見た宇宙』
渡部潤一 著 講談社現代新書 \820
(本体価格)

株式会社 ベネッセコーポレーション ベネッセ教育研究所発刊
月刊/進研ニュース[中学版] 第257号 2000年(平成12年)10月1日 掲載


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