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ボクらはみんな頑張っている


片岡千鶴 映画評論家

 長らく販売中止になっていて紹介したくてもできなかった映画がある。今回の2本のうちの1本『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』がそれだ。監督は、最新作では『サイダーハウス・ルール』で感動を呼び話題になった、名匠ラッセ・ハルストレム。この監督の作品はどれも生きることの喜怒哀楽をキラキラと輝かせて見せてくれる。

 舞台となるのはスウェーデン。母親と兄と3人暮らしのイングマルはいたずら盛り。どこへ行くにも愛犬のシッカンと一緒だ。本当は大好きなママを喜ばせてあげたいのに、いつも失敗して怒らせてばかりいる。

 そんなある日、イングマルたちの生活に一大事が起こった。ママが折からの病で倒れて入院、家族は離ればなれに暮らさなくてはならなくなったのだ。彼はママとも兄とも愛犬とも別れ、1人田舎のグンネル叔父さんの元に預けられることになった。

 新しい家族と新しい友だち。小さなガラス工場で生計を立てている村の人々はイングマルを温かく迎え入れてくれた。でもイングマルは気がかりでたまらない。病気のママと、残してきた愛犬シッカンのことが。

 さて、もう1本はマジッド・マジディ監督の『運動靴と赤い金魚』。題名も可愛いが内容も可愛い。この監督はひたむきな子どもの世界をみずみずしく映し出すことにかけてはピカイチだ。

 主人公は妹思いの心優しい少年アリ。ある時アリは妹の靴を修理してもらうが、その帰り道になくしてしまう。アリの家は貧しい。妹のたった1足の大事な靴をなくしたことがもし両親に知れたらひどく叱られる。困った彼は妹に頼みこんで内緒にしてもらうことにした。

 残る靴はただ1足。アリのくたびれた運動靴のみだ。そこで2人は交替で靴を履くことに。学校が午前中の妹が先に履き、午後からアリと交替するのだ。妹はお兄ちゃんの靴に不満足。ブカブカだし汚れているし、友だちにも恥ずかしい。

 なんとかして妹のために新しい靴を手に入れたいアリに、ある日素敵なニュースが飛び込んできた。近々行われるマラソン大会の3位の賞品が運動靴だというのだ…。

 かたや北欧のスウェーデン、片や西アジアのイラン。お国柄も違えば文化もまったく違う2国の作品だが、共通しているのは頑張る子どもたちの姿。子どもの世界は案外厳しいものなのだ。そして、そんな姿の根底にあるものは、いつの時も大切な家族への愛情にほかならない。



マイライフ・アズ・ア・ドッグ 運動靴と赤い金魚

『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』
カラー/ステレオ/102分 アスミック/発売・レンタル中 \4,700
(本体価格)

『運動靴と赤い金魚』
カラー/モノラル/88分 日活/発売・レンタル中 \4,935
(本体価格)

株式会社 ベネッセコーポレーション ベネッセ教育研究所発刊
月刊/進研ニュース[中学版] 第262号 2001年(平成13年)3月1日 掲載


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