一般書中年を楽しむあわやのぶこ 異文化ジャーナリスト |
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このセチガラーイ、景気のワルーイ時代にあって、もう少し風通しよく生きられないものか、と思う。今回はこの世の中年男と中年女のために1冊ずつ本を選んでみた。 まず、『女たちの「自分育て」』ほど良心的に、現代の主婦たちの葛藤や不満を説明し、再起の応援を具体的に示した本はないのではないか。というのも、著者広岡守穂氏が自分の妻とのパーソナルな体験を正直に吐露しつつ、その接点をもって書かれているからだろう。また普通は、経済的基盤ができてから結婚し、子どもを持つのが男の常識とされているところを、著者は逆のコースを生きてきた。その大変さがこのような著書に十二分に生かされているようだ。 子育てをしているうちに社会から取り残されていくような気がして焦る妻。一方、夫は社会に出て仕事をしているうち、家にいて家事をしている妻が少しずつ色褪せて見えてくる。夫婦の心の亀裂がやってくる典型的なプロセスだ。 本書は、夫や子どものいわば「他人育て」専門に回ってしまう女性たちへの「自分育て」の勧めである。どうしたら主婦としての経験を社会化していけるか? その具体的指南書である。何かしたくて悶々としている女性はもちろん、ぜひ、夫たち男性たちにもお勧めしたい。そこには多くの夫婦に共通の問題が提示され、その解決のアイディアが豊富に披露されている。 それに比べて、『「不良中年」は楽しい』は要注意! ハハハと一気に読みとばしてこそ良し。本書は「50歳過ぎて男はどうするか」という課題にごく明快な答え、「不良オヤジになればいいのです。不良中年は楽しい」と。 でも男たちは恐れる。生活の不安。住宅ローン。子どもの学費などなど…。だがお金持ちも貧乏人にも寿命には限りがある! 「…そうなのです。お金とか社会的地位にこだわるから不良になれない。50歳まで積み上げてきた社会的経験がオヤジの不良化を妨げている。そんなものは幻影の楼閣だ。早いとこ捨てちまったほうがいい」とアジる。また、不良と非行の明確な違いを説き、マルクス、エンゲルス、ドストエフスキーから西行、芭蕉、一茶、エジソン、アインシュタイン、川端康成まで、先人の不良オヤジを次々と引用してみせる。 いやはや元気が出る本だが、とても丹念にまじめに読んでなんかいられない。「不中研(不良中年研究会)」まで結成し、不良中年の恋の方程式までつくってしまうところなんぞ、何をか言わんや。 くれぐれも適当に読むべし。いや、買わないでだれかに貸してもらうのがベストです。 |
『女たちの「自分育て」』 | ||
広岡守穂 著 | 講談社 | \1,400 (本体価格) |
『「不良中年」は楽しい』 | ||
嵐山光三郎 著 | 講談社 | \1,500 (本体価格) |