自然科学・一般書指数と対数への旅森田暁 博物館プランナー |
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数学科出身の教師は、得てして自らの体験から数学の美しさを子どもたちに教えようとする。ところが、当の習う側にしてみれば、分数四則に始まりイプシロン・デルタ論法に至るまで、学校で習う算数・数学には日常感覚とは異なった了解不能なことが目白押しなのである。習う側の「なんの役に立つの?」という疑問に、なんらかの意味で答えたほうが授業の進行は円滑になるのではなかろうか。 子どもたちのつまずきのきっかけの一つに指数・対数がある。『爽快! 2100三話』は、小学校3・4年生でその意味も計算法も十分理解できる「2100」を求めるという課題から出発して、記数法、多倍長計算、対数そして計算機アルゴリズムへと役に立つ技を次々に教えながら、一気に子どもたちの数学的視界を広げようという本である。 まず、一般に使われるような電卓では正確な値が求められないことを確認し、そこから2進法や16進法の効用、さらには便宜的な1000進法を用いて具体的に2100を求める方法を教える。その後、対数を通じて、巨大数や無限、実数や複素数まで、数の世界を拡大させていく。 一方で『数の大航海』は、対数の登場を私たちが接している西洋数学が形成された結節点としてとらえた本。 まず、古代オリエント以来の代数学の歴史を略述した後、大航海時代において航海のために正確な天文計算が必要とされ、それによって三角法が発達した経緯を解説する。そして対数の発案者ネピアの対数表を紹介した後、ネピアの原著と生涯をたどりながら彼がどのようにして対数の概念に達したかをたどる。 その後、対数の発明がいかに実数の概念や無限解析へと直結しているかを解説し、特にケプラーによる理論の体系化、ニュートンによる対数関数の展開、メルカトル「対数術」における対数と無限級数の関係の究明などに話を広げていく。さらに、話題は17世紀後半における微分積分の誕生から複素数への拡大まで広げられる。そのまま生徒に読ませることのできるページは少ないが、授業中に噛み砕いて伝えられるエピソードが満載されている。 |
『爽快! 2100三話』 | ||
根上生也 著 | 遊星社 | \1,500 (本体価格) |
『数の大航海―対数の誕生と広がり』 | ||
志賀浩二 著 | 日本評論社 | \2,800 (本体価格) |