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crn設立10周年記念国際シンポジウム
子ども学から見た少子化社会−東アジアの子どもたち−
   
2007年2月3日(土)10:00〜16:30
会場 ウ・タント国際会議場(国連大学ビル)
主催 チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)
共催 (株)ベネッセ次世代育成研究所、 (株)ベネッセコーポレーション
後援 厚生労働省、中国大使館、韓国大使館、日本子ども学会、日本赤ちゃん学会
 
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講演録
開会の挨拶
小林 登(CRN所長、ベネッセ次世代育成研究所所長、東京大学名誉教授)



 Distinguished Guests, Ladies and Gentlemen.

 御来場の皆々様、Child Research Net(CRN)が昨年の4月を持ちまして設立10年となり、本日の記念のシンポジウムを計画致しましたところ、国内ばかりでなく外国からも、この様に沢山の方々に御来場頂き、有難う存じます。

 特に、特別講演をお願い致しました、ノーベル文学賞受賞者大江健三郎先生、また、基調講演をお願い致しました、中国のエンジニアであり、脳科学者であるWei教授、パネルディスカッションの座長をお願い致しました韓国のLee教授、我が国の榊原教授、また、パネリストの中国の周教授、韓国のPark教授、そして我が国の原田教授には、この為御多忙の中、あるいは遠路はるばるおいで下さり、深く感謝申し上げます。

 そもそもCRNは、1992年5月ノルウェーのベルゲンで開かれた Norwegian Center for Child Research 主催の “Children at Risk” と題する国際シンポジウムの後に開かれました委員会で、NorwayのChildwatch Internationalが中心となって、世界の子どもに関係する研究者、実践者をインターネットで繋ぎ、子ども達の為により良い世界をつくろうと話し合った結果によるものであります。

 その為、国立小児病院を退官した1996年に、私は日本で活動を始めようと思い立ち、Benesse Corporationの御支援によってCRNを設立致しました。本日御出席頂いている、全面的な御支援を頂いた福武会長、森本社長はじめBenesseの関係者の皆さん、特に当時の教育研究所の島内氏に、心から御礼を申し上げます。また、私の親友であり医学部の同級生で、後に工学部に入り情報工学の専門家になられた、当時東京電力研究所の所長であった東京大学名誉教授の石井威望先生からも、色々と御指導頂いた事を申し上げ、深謝致します。

 1992年のベルゲンの国際会議が示す様に、北欧の国々は伝統的に、子ども達に対して何か少しでも良い事をしようとする、優しい眼差しを持っております。それは、皆様方も御存知の様に、スウェーデンのEllen Keyが、1900年の冒頭に「20世紀を児童の世紀に」と “Barnets arhundrade”を出版した事でも代表されると、私は考えております。勿論、その内容をみると、現在では考えるべき点もありますが、「子どもの権利」が認められる以前に、世紀の在り方の中心に子どもを据えた発想に、私は強い感銘を受けるのです。

 残念ながら、20世紀は子どもの世紀にはなり得なかった事は、皆様御存知の通りです。しかし、幸いな事に、1979年のUNにおける「女性の権利条約」に続いて、1989年に「子どもの権利条約」が締結された事は大変重要であります。少なくとも、子ども達にとってより良い世界を築くひとつの柱、しかも大きな柱が、800年の人権の歴史の結果、打ち立てられたと言えるからであります。

 1954年医学部を卒業した私は、この50余年間、小児科医を目指して学び、小児科医として仕事をしてまいりました。そんな中で1970年、思いもかけず東京大学で小児科学を教える立場になり、また1977年からの12年間は、国際小児科学会(International Pediatric Association)の役員を務める機会にも恵まれました。

 その時、様々な子ども問題の実情を見て、その解決には、小児科学だけでは済まされないものがあると考える様になりました。考えてみれば、子どもは「生物学的存在として生まれ、社会的存在として育つ」ものであり、それは当然の事であります。従って、子ども問題解決には、その両面を捉える、より学際的(interdisciplinary)、環学的(trans-disciplinary)な新しい学問体系が必要であると考える様になりました。それを私は “Child Science” 「子ども学」と呼ぶ事にしました。

 「子ども学」は、子どもの生物学的側面ばかりでなく、社会文化的側面も併せて捉えられる様、子どもに関係する小児科学、脳科学等に代表される自然科学と、育児学、教育学等に代表される人文科学を統合する、文理融合科学とも言うべきものであります。私は Child Research Net を、「子ども学」を柱とするサイバー研究所にしたいと考えたのです。勿論、サイバーのみでは大きな発展もありませんので、リアルの場として、日本子ども学会(Japanese Society of Child Science)も3年程前に設立し、お互いに関係を取りつつ、我が国ばかりでなく、外国に向けても「子ども学」の普及に努めてまいりました。

 従って、この度の国際シンポジウムを開くにあたっては、CRNスタッフ一同と相談し、東アジア三国にとって共通の問題である少子化社会の中で育つ子ども達を、「子ども学」の立場から考えてみたいと思った次第であります。どの様な話になるのか、午後が楽しみです。

 私は、Ellen Key の理想を追って、新しい意味で「21世紀こそ子どもの世紀」にする為、世界的なネットワークを作り、力を合わせて努力する事が重要であると、現在考えています。そうする事無しには、世界の平和の基盤は出来ませんし、我々人類の未来も無いと思われるからです。皆様にも、これには御賛同頂ける事と思います。その為には、まず「子ども学」を体系付けなければなりませんし、その考えを世界の人々と共有しなければならないと思うのです。本日ここにお集まり頂いた皆様方には、その実現の為、今後ともよろしく御指導、御支援を頂きたく、ここにお願い申し上げます。

 簡単ではございますが、CRN10周年の国際シンポジウムの開始にあたり、一言御挨拶させて頂きました。

 Thank you for your attention.

   
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