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小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:1998/10/30

<人生の4分の1をかけておとなに−2>

 前回は、こどもの身体的成長の速度を見るとき、2つの大きなピーク(山)をかけのぼっておとなになるというお話をしました。ここでは、精神的な部分でのこどもからおとなへの成長の過程について考えてみたいと思います。

こころの成長−哲学し、思想をもち、科学するために

 こどもは年齢とともに、身体的のみならず、精神的にも成熟しておとなになります。身体的な成熟は、医学的に第二次性徴(注1)がおこる青年期で一応完成します。すなわち生殖能力が十分にできあがった時点です。

 しかし、それでもこどもは人間として一人前ではないのです。それは、人間が社会的な動物だからです。いろいろな形式の教育を受ける必要があるです。そして、社会的に生活を営む身体的と精神的な能力を獲得したとき、人間はおとなになったと判定されます。一般には20歳という年齢で、成人式をむかえてはじめておとなとみなされます。

 人間として社会生活を営むためには、その生存の術を学ばなければならないのです。人間として、生活の規則を学び、自らの能力と特性を発見し、それを開発して職業を身につけなければなりません。

 人間と人間のふれあいのあり方を学び、社会生活の営み方を修得するのです。そして人間として生きるためには、文化を理解する能力を身につけなければなりません。人間は哲学し、思想をもち、宗教を信じ、芸術を創り、科学技術を駆使して生活しているからです。

寿命の4分の1をかけて

 人間は、社会で生きていくために配偶者を見つけ、夫婦としての一単位をつくります。この人間としての生きていく営みにとっては、もっとも本質的な恋愛感情が必要なのです。人間は、この恋愛感情という感覚的にして抽象的な世界さえも、文字やことばや音や色や形に表現しようという意欲をもっています。

 そうする能力を駆使して、男と女は新しい組み合わせをつくるのです。ラブレター、電話、etc ……。このようなもっとも人間的な行動は、感覚的にして抽象的な恋愛感情を、文化的に表現したものといえましょう。そうする能力も人間が生きていくのに必要なのです。

 だからこそ人間のこどもは、一人前になるのに、寿命の4分の1近くもかけなければならないのです。

 こどもを見るとき、こどもと話すとき、そこには強い個性があります。それは人間の長い歴史の中で育てられた、生物的なものの新しい組み合わせです。そしてこどもは育ち、おとなになり、過去の文化のうえに新しいものを加えていきます。こどもは未来そのものなのです。



(注1)第二次性徴
成長して一定の年齢に達すると、生殖器が発育し、第一次および第二次性徴が現れる。この時期を思春期とよび、その後数年間に生殖機能が完成する。一般には生殖器の差異を第一次性徴とよび、骨格、毛髪の発生、皮下脂肪、乳房、声音、精神的な態度などの性的差異を第二次性徴という。

このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。





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