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小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:2000/03/10

<ねる子は育つ−2>

胎児もねむる

 胎児もねむるかどうか調べることはむつかしいことです。ただし、胎児の脳波を調べてみますと、おなかの中で36週以後の胎児の脳波には、覚醒・睡眠のパターンがみられてきます。このころになると、人間にとって、考えるなどの精神的な機能に重要な大脳皮質が発達してきますので、いろいろな刺激に反応し、目をさました状態をつくることができるようになるのです。
 それまでの胎児の発達は、循環機能のように生存に直接関係ある機能だけを中心に発達してきたのですが、脳の発達とともに、ここで人間としての精神機能が芽ばえるのです。
 胎児の脳波のパターンから、胎児がねているとか、目をさましているとかを、おそらく論ずるべきではないでしょう。胎児のそれは、当然われわれのねむりとはことなると考えられるからです。しかし、睡眠の状態というものの本質が、人間の生存にとってなくてはならない状態でありますから、胎児のそれも、胎児の心の発達にとって重要なのであると考えられるのです。
 こうしてみると、ねている状態も単純ではなくて、その裏には大きな生命のメカニズムが働いていることは明らかなのです。じじつ、成長ホルモンは、レム睡眠からノン・レム睡眠に移ってまもない高圧徐波の波型の脳波をしめすときに分泌されるのです。したがって、そのサイクルの時点で血中の成長ホルモンの濃度が急激にスパイクのようにピューと上昇するのです。
 赤ちゃんのやすらかなねむりには、健康な生体リズムの発現であり、すべてのてんで、満足していることをしめしているのです。
 まさに、ねる子は育つのです。


このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。






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