●HOME●
●図書館へ戻る●
●一覧表へ戻る●



小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:2000/08/18

<コミュニケーションは、こうして−1>

 動物はその生存のために、情報交換――すなわちコミュニケーションの手段をもっています。たとえば、科学的な物質(いろいろな動物にみられる体臭の変化――とくに発情期など)、体動とか運動(蜜蜂・魚・鳥のダンス)そして音声(鳥獣のなき声)などであります。こういった情報交換の手段に用いられるシンボルを、言語科学・行動科学では、言語と定義しています。人間がもっともよく使用する言語、すなわち人間にとって、もっともよく発達している言語は、いわゆる「ことば」であり、そして、それに対応する文字なのです。

コミュニケーションの手段はいろいろある

 「ことば」、「はなしことば」を利用しているてんが、ある意味で人類の特徴といえます。広く自然をみると、人間の使用する言葉は、その数が莫大で、これほど沢山の情報をやりとりできる動物はありません。それは、人類の進化と共にはじまり、文化の発展とともに数をふやして現在にいたっているのです。そしてさらに重要なことは、つねに新しいことばをつくっていることであります。
 人間は、この天文学的な数に近い言語を駆使して、頭脳の中にかたちづけられる世界を、具体化させたり、客観化させたり、さらに抽象化させたりして、言葉に対応させ、文章として外に表現しているのです。
 ことばを組み合わせてひとつの文章にまとめる構文のシステムはきわめて複雑でありますが、しかしわれわれは母国語として自然に学びとっていくものなのです。はなしはじめる前に文法を学ぶこどもはおりません。
 ことばを学んでいく過程はとうぜんのことながら出生後にはじまるものです。そして、母親と赤ちゃんとの会話でそれがはじまるのです。そのばあい、母親のくり返す言葉が重要であることはいうまでもありません。しかし、自然を広くみわたすと、コミュニケーションの手段はさきにのべたように音声だけではないのであります。母親の体動、すなわち身ぶりも重要なのです。もちろん、そんなことはおそわらなくても自然にやっていることではありますが。人間は会話をしているときに、大小の体動も加えてコミュニケーションの目的をはたしていることを忘れてはならないのです。


このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。




Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved