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小林 登文庫
小 論 ・ 講 演 選 集


子育てに関する小論・講演(1999年以前に発表)

「子育てネットワーク」による子育ての時代 ―アメリカの研究から学ぶ―
小児科診療 Vol.62-No.11 1999

 今世紀、子育ての在り方は大きく変わった。母親のみが子育てをすると考えた時代は昔のものとなり、保育園での子育てが一般化し、今や父親も積極的に子育てに参加すべきと考えるようになっている。考えてみれば、母親・父親・保母、場合によっては祖父母など血縁関係者の支援を得て、「子育てネットワーク」で子育てをする時代に入ったと言える。
 「子育てネットワーク」は見方を変えれば2世代・3世代同居する大家族主義の時代では、それなりに充分機能していたし、現在でも伝統文化の社会では機能しているものである。したがって、わが国でも発想を転換して「子育てネットワーク」をどのように現代社会にマッチさせて組織化するか、その中で母親・父親そして保母(保育者の代表として)の役割はいかにあるべきかを考える時代にある。家庭の育児と社会の保育を手際良く組み合わせ、それを機能させるシステムを探らなければならないのである。
 それには、それなりの研究が必要であることは明らかである。しかし、エンジェルプランとして保育政策をすすめているにも拘らず、わが国で体系付けられた研究は、残念ながら無いようである。
アメリカのNational Institutes of Healthの中で、成育医療を担当する National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)は1989年に計画し、1991年から全米10施設の発達心理学・小児科学などの専門家のチームにより、1,300人の子ども達を follow-upして、保育の在り方・家庭環境は子どもの成長・発達にどのように関係するか、行動観察・発達テスト・インタビュー・アンケート調査などによる調査研究を行っている。 その中間発表として、3〜4歳の時点で、子どもがどのようになっているか発表されている。
 それによると、詳細は省くが、やはり母親の役割は大きく、わが子に愛情を持ち乳幼児の心を読み取る力が強く(sensitive)、相互作用(interaction)が上手くいっていて、保母もsensitiveで interactionが良く、保育の質が良ければ、零歳児保育 (early child care)でも、子どもの成長・発達に問題ないといえる報告を出している。
 保育の質が良ければ、さらに言語発達・認知発達も良く、3歳で学校に入る準備(school readiness)ができ、母親のみの育児が良いという所見はないとさえ述べている点も重要である。さらに、保育の量、すなわち時間が長かったり、質の良くない保育を受け、母親がsensitiveでない、さらには生後15カ月の間に保育園を変えたりした場合には、アタッチメントが弱いことも報告されている。
 もちろんこれは、人種・貧困・教育の問題など、わが国の実情と異なっている国のデータであるが、他山の石として、われわれが「子育てネットワーク」の在り方を考えるのに貴重な情報を提供している。残念ながらこのレポートの中には、父親中心の子育ての報告もあるが、その意義については触れていない。
 少なくとも、母親も保母も乳幼児の心を読み取る力を持ち、子育ての中でsensitiveな行動がとれ、相互作用が上手くいけば、家庭の育児と社会の保育もお互いに影響し合って、「子育てネットワーク」は上手く機能するといえるのではなかろうか。


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キーワード: 家庭の育児 社会の保育 掲載: 2005/11/25