早稲田大学教育学部教授 東後勝明
教師が鉛筆を手にしながら「What is this?」と尋ねると、生徒は「It is a pencil」と答える。文法的には何の問題もない。しかし、「鉛筆であることがわかっていながらこのように尋ねること自体がおかしい。コミュニケーションとして言葉が生きていないのであるから、言葉を使っていることにはならない」という東後氏の指摘は、われわれがいかに「覚える」英語にひたりきっているかを教えてくれる。 |
日本児童英語教育学会 後藤典彦
中学生から始まる公教育の英語と、未就学児を対象とする民間主導の早期英語教育の内容の差は歴然であると、後藤氏は言う。そもそも前者は、文明を摂取するための「活字情報」収集能力を身につけるための基盤作りとしてなされてきた。一方、後者は「契約に基づく“商行為”の一種であるから、子どもと親に評価されなければ継続し得ない。教育内容は自由であるが、学習指導要領も検定教科書もないから、教師自身の裁量ですべてを決定しなければならない」。つまり早期英語教育は、自由競争の要素を多く含んでいるからこそ、常に子どもの興味を刺激する「楽しい」教材とカリキュラムが開発され、よりよい教育内容を子どもたちに提供できるのだ。 |
松香フォニックス研究所代表 松香洋子
オランダが「外国語教育先進国」と言われる所以は、新しい制度への取り組む果敢な姿勢にあると松香氏は実感している。オランダ政府は、小学校の段階ではそれほど英語に力を入れる余裕はないと見越した上で、1985年小学校5、6年生対象に週1回の英語の授業を法律で義務づけた。「もともと小学校段階での英語教育が効果的だと思っているわけではない。それでも子どもたちに英語の積極性を養うために英語を、と考えているのです」。 |
神戸大学国際文化学部助教授 沖原勝昭
「外国語教育の有り様はまさに国の発達度を忠実に写し出す鏡である」。沖原氏は各国の英語教育システムの背景にある英語の役割や意味づけを教えてくれる。 |
大学入試センター研究開発部教授 小野 博
帰国子女や留学経験者のように外国語をペラペラしゃべれる“バイリンガル”にあこがれを抱く人は多い。しかし、小野氏の紹介するさまざまなケースから、誰もがそう簡単にバイリンガルにはなれない現実が浮かび上がってくる。 |