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Vol. 14, No. 6, June 1998
1. 子どもの自尊心と障害を乗り越える力を守るために、得意分野を探そう

子どもの自尊心と障害を乗り越える力を
守るために、得意分野を探そう

ロバート・ブルックス博士

 子どもの人生において、ひとつの分野で成功することは、他の分野での成功の基礎となる。すなわち、子どもの自尊心と障害を乗り越える力を強化するために、われわれが最初にするべきことは、得意分野を見つけ、強化することである。そうすれば、子どもに冒険への動機づけをしてやれるし、難しいとされた問題に立ち向かうようになるにちがいない。

 自尊心とは、前向きな結果を出そうとしたり、困難に立ち向かったり、成功と失敗の双方から学んだり、自分や他人を尊重できるなどの感情を含むものと理解されている。

 私も、学者としてのキャリアを始めたばかりのころ、心理学の講義において、病理学に焦点を当てていた。当時は、子どもの基礎となる人格は、 5、6歳までに設定されるという理論が支配的だった。この理論は、どのような状況をもたらしただろうか。この理論は、問題を持つ子どもの将来の成功を、悲観論でいっぱいにした。我々は、時間の経過によってさえも除去することが不可能な診断のレッテルを、青年たちに与えた…まるで入れ墨を彫るかのように。とりわけ不幸なのは、子どもの正の部分を見失ってしまうことだ。

 しかしながら、私は、焦点を自尊心に移した。それは、私がより前向きな見方を抱いたからであり、また、若いときには問題がありながら成人になってからは問題なく暮らしている多くの人を面接したからである。そして、その後重要な研究テーマとなる問題を持ち始めた。すなわち、「危険な状態にある子どもが問題を克服するのを助けるには、どうしたらよいか」という問題である。この問題への答えが、子どもの自尊心及び希望を強化するために効果的な方法を探ることだろうと考えたのである。

 ここでは、紙面の制約から、自尊心及び障害を乗り越える力を養う様々な方法のすべてを述べることはできないが、そのうち2、3の重要なポイントを述べておきたい。障害を乗り越える力を持つ子どもは、持たない子どもより、問題解決能力、意思決定の技術、及び適応能力に優れている。同じく、彼らは、高水準の自尊心、及び人生を個人的にコントロールする現実的感覚を保持している。ポジティブな自我像と障害を乗り越える力との間の関連は、子供の自尊心を強化する方法を探す手がかりとなる。

子どもは魅力的な大人を必要とする

 非常に重要なことだが、障害を乗り越える力を持つ子どもは、生活において、信じられる大人の存在がある。その大人は、子どもを励まし、支え、そして子どもの強み、すなわち「能力の島(得意分野)」に焦点を当てる。心理学者のジュリアス・シーガルは、そのような「魅力的な」大人に言及し、彼らによって子どもが力を蓄えることに注目した。我々は、たったひとりの大人でも、子どもを前向きな方向に導きうることを、過小評価してはならない。

 以下に述べる 4つの方法は、我々が子どものために何ができるかを立証するのに役立つものである。

1. 貢献を奨励することによって責任を教えること

 子どもに、達成感やプライドを持つことを促すつもりならば、責任、特に家庭、学校、地域に貢献しているということを実感させる機会を与えなければならない。注意欠損障害(ADD)もしくは学習障害(LD)をもつ青年を教えるには、「能力の島(得意分野)」が有効である。すなわち、学校の壁画を描いたり、植木に水をやったり、事務所にメッセージを届けたりして、自分が何かを成し遂げたことを実感することにより、前向きな意味で人とは違うということを感じ、動機づけや自己が強化されるのだ。

2. 意思決定や問題解決の方法を教え、自己規律を強化すること

 子どもの自尊心、及び障害を乗り越える力の本質は、人生に起こることは自分でコントロールできる、ということを信じることである。この自信を獲得するために、子どもは、意思決定や問題解決の方法を学び、適用し得るという経験を必要とする。

 これは、特別な問題を解決するような討論に、いかにして子どもを巻き込むかということや、子どもに宿題の問題を選ばせること、または子どもの生活に影響を及ぼす家庭や学校での規則や結果を自ら決めさせることによって、成し遂げられ得る。子どもは、自分で決めた規則を覚えるし、それに従う可能性が強い。これらの活動は、自分の人生を自らが決定しうるという信念を強化し、責任感、信頼性 、自己規律を補強する。

3. 励ましやポジティブなフィードバックを提供すること

 現実の評価を子どもに伝え、彼らが特別であると信じさせることによって、自尊心及び障害を乗り越える力を育てられる。その過程で、我々は「魅力的な大人」になれる。子どもと「特別な」時間をともにしたり、評価を書いた紙を渡したり、学校での業績(学業に限らず)を認めてあげることが、この方法の例である。

4. 過ちの扱いをサポートすること

 間違いを犯したり、愚かに見えることに対する不安は、自尊心及び障害を乗り越える力を発達させる上で大きな障害となる。注意欠損障害(ADD)もしくは学習障害(LD)をもつ子どもは、多くの場合、失敗の感情に弱く、失敗につながりそうなことに尻込みしてしまう。

 我々は、「間違い」が学習する過程での重要な一要素であることを教える必要がある。そのためには、問題を解決する正しい方法を示してあげるべきで、品位のないコメント、例えば「ばかじゃないか」とか「いつも間違いばかりして!」といったことは、言ってはならない。

 例えば、学年の初めに、授業を始める前に先生が、学習の過程で間違いはつきものだということを話すのも良い。先生が学生時代の失敗を話し、失敗を恐れる必要がないことを話し合うのである。間違いをする恐怖を話題に取り上げることによって、かえって、その脅威を減じ、学習の機会を増加させるのに役立つ。

楽観主義

 一般に、障害を乗り越える力は、楽観主義やパーソナルコントロールと関連がある。私が個人的経験または職業の場から学んだことは、我々すべてが子どもの人生における「魅力的な大人」となり得るということである。子どもを信じ、「能力の島(得意分野)」を伸ばす機会を与え、自分が価値ある人間だということを分からせてあげることだ。これは、偽りなく我々が提供し得るすばらしい贈り物であり、次の世代への我々の遺産である。


ロバート・ブルックス博士(Robert B. Brooks) は、臨床心理学者であり、ハーバード大学医学部で教鞭をとっている。著書に、"The Self-Esteem Teacher"( 「The Seeds of Self-Esteem 」プロジェクトの一部分、出版社:American Guidance Service)がある。この本の問い合わせは、 (800) 328-2560(米国) へ。

 ブルックス博士は、最近Public Broadcast Service のためにビデオテープを編集。題名は、"Look What You've Done."。学習・注意力障害の子供の希望や障害を乗り越えて行く話に焦点を当てている。このビデオテープと教育ガイドは、先生、親、精神衛生専門家に対し$49.95で販売している。このビデオテープの問い合わせは、 (800)344-3337(米国) へ。



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, June 1998
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Source; The Brown University, Adolescent Behavior Letter.
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