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Vol. 14, No. 8, August 1998
1. 子ども酷使の定義
2. 今、子どもへの虐待を無視することは、後に成人の社会問題につながる

子ども酷使の定義

 子ども酷使に関係した用語の法律上の定義は、州によって違う。臨床医は、現場で使われる定義を知っておくべきである。大まかに言うと、以下のようになるだろう。

 「無視」は、子どもに十分な世話、及び保護を提供することの、故意の不履行である。肉体的無視は、十分に食事を供給することに関する不履行、治療を行うことに関する不履行、または、危険から子どもを保護することに関する不履行を包含すると考えられる。

 「肉体的虐待」は、保護者による損傷の苦痛である。それは、殴る、蹴る、噛むなどの手段で行われることがある。虐待は、骨折、内部出血、傷、火傷、及び中毒のような損傷などの結果をもたらしうる。子どものしつけが虐待的であるか否かを評価する際には、文化的要素を考慮することが重要である。

 「性的虐待」とは、子どもと成人の間の、もしくは、2人の子どもの間の(そのうち1人が年長であったり、強制的あったりする場合の)性的行動を意味する。加害者、及び犠牲者は、同じ性別、または反対の性別の場合もある。服を脱がせられるか否かに関わらず、性的行動は、胸部、臀部、及び生殖器に接触することを含む。露出症、フェラチオ、クンニリングス、そして性器や物体の腟、または肛門への挿入も含まれる。ポルノ写真も、性的虐待の定義に含まれる。子ども同士の性的行動が虐待的であるか否かを評価する際には、発達上の要素を考慮することが、重要である。

 「心理的虐待」は、子どもに対して、「おまえは価値がなく、愛されず、不必要で、危険な人間だ」などと言うとき起こる。その加害者は、子どもをはねつけ、恐れさせ、つき離し、もしくは、叱りつける等の行動をとる。同じく心理的虐待は、不必要な治療を子どもに繰り返し受けさせることによって、引き起こされることもある。心理的虐待が深刻なとき、無視、肉体的虐待、性的虐待がしばしばもたらされる。



Journal of American Child and Adolescent Psychiatry 1997; 36(3): 424-425.



今、子どもへの虐待を無視することは、
後に成人の社会問題につながる

ベティ・フィリップ博士

 研究が示すところによると、子どもへの虐待は、思春期や成年期の多くの問題と深い関連がある。公表された研究によれば、重大な事件の加害者は、自ら子ども虐待の犠牲者であった。いくつかの研究では、そういった例が90%にもなったという。その他にも、子どもへの虐待は、アルコール・薬物乱用、犯罪組織やギャング活動、感情的妨害、精神病、売春、逃亡、10 代の妊娠、性的攻撃、自殺、暴力犯罪につながる。その他の社会的問題、例えば肉体的病気、性的機能障害、アイデンティティの危機、不登校・ドロップアウト、失業、及び不完全雇用にも、子どもへの虐待の影響がみられる。

 研究者の主張によれば、子どもへの虐待は、子どもの発達において最も深刻な悪影響を与え、重大な社会問題を増加させているということである。

 虐待による、目に見える肉体的な傷だけでなく、目に見えない感情的、社会的傷は、より問題である。虐待された子どもは、自負心、及び対人関係の技術を含む感情的、社会的発達の全ての側面に重大な欠損を持つと、繰り返し実証されている。これらの欠損は、犠牲者の基礎的信頼が不足していることから始まる。 その信頼は、しばしば親によって損なわれる。

 虐待の犠牲者、加害者に関わらず、大人になったあとのアイデンティティの発達に大きな影響を与える。虐待は、言語、知的技術、学術的可能性及び、健康状態を含む、子どもの発達にダメージを与える。

 しかし、子どもへの虐待について、以下のような一般には知られていない問題がある。

  • 虐待された子どもは、加害者をよく知っている。実は、加害者は家族であることが多い。
  • その子どもは、助けを求める代わりに、虐待の秘密を守ることを強要される。
  • 犠牲者の治療は、痛ましいほど不充分である。
  • 子ども保護システムは、急速にエスカレートしている問題に対処することができない。

 問題を悪化させているのは、子どもへの虐待をめぐる秘密である。それは、大人が子どもの苦痛を認識し理解することに関する深い二面価値によって一部形成される。しかし、それは、我々が無視できない問題である。子どもへの虐待に関する経済コストが急増していることは、健康、及び他の保険の高コストと同様に、治療、病院、法の執行、起訴、刑務所、精神医学的制度、特別な教育、里子養育、及び居住の配置を含む多くのシステムにおいて、今実証されつつある。

 いくつかの研究において、子どもへの虐待の犠牲者の早期処置は、費用対効果から考えられるひとつの選択肢であることが示された。 即座に犠牲者を助けるばかりではなく、再発及び虐待の連鎖を防ぐことになる。

 現在のデータは、示唆的ではあるが、決定的ではない。不幸にも、資金不足のために、多くの社会的、精神的衛生プログラムは、効果が出るまでにいたっていない。このようにデータが有効性を欠いているため、公的機関が防止、処置への支出に懐疑的になってしまうのである。

 政策決定者は、関心が高く、資金援助が必要な様々な問題の膨大なリストに直面しているので、子どもへの虐待は、単なるリストの1項目にすぎない。我々は、子ども酷使を優先順位の上位にし、そして、包括的な子ども保護、及び、処置システムを開発することを怠ることが多大なコストにつながることを、国民に訴えなければならない。



Betty Wismer Phillips は、「 Austin の挑戦 :わが町の子ども虐待の危機」の著者である。



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, August 1998
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Source; The Brown University, Adolescent Behavior Letter.
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