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Vol. 16, No. 2, February 2000
1. 子どもがフラストレーションにいかに対処するかは、集中力や学習能力に影響を及ぼす

子どもがフラストレーションにいかに対処するかは、集中力や学習能力に影響を及ぼす

ピーター・アーネスト・ヘイマン博士

 子どもは、幼い頃からフラストレーションに対処するための戦略を組み立て始める。毎日、気づいているか否かにかかわらず、親は、子どものフラストレーション対処法に影響を与えている。実は、親には、子どもに幼児期からフラストレーションに対処したり、対処の能力を進歩させる多くの機会がある。同じく教育者や健康管理専門家には、親たちに、子どもが前向きにフラストレーションを管理するのに役立つ方法を教える機会がある。いかにフラストレーションに上手く対処するかを学んだ子どもは、満足のいく生活を送る成人になると思われる。

 フラストレーションに耐える能力は、学習に対して重要な影響を持っている。元来、学習プロセスとは、子どもに不安やフラストレーションを作り出す状況に挑戦させるものである。子どもは、新しい課題やスキルを学ぶために、未知のいくつかのステップを踏む必要があり、その際に負担するリスクをカバーするためには、感情的安定の基礎となるものが必要である。

 幼い子どもがいつも満たされない状況におかれていると、その子どもは、恐怖、または怒りなどの感情的な姿勢をしばしばもつであろう。様々な方法で、その子どもは不安に満ちた感情を示すであろう。

 幼い子どもは、言葉で言うことができず、鋭い目つき、体の動き、感情的爆発、あるいは他の行動で、メッセージを伝える。「私は不満である。心地よくない。怖い。怒っている。」子どもが親の間違った行動に耐えなければならないとき、子どものフラストレーションに気付く最初のヒントは、子どもが、過度にわがままになり頑固になる状態だ。正常な発達上の欲求がいつも満たされないと、子どもは、ストレスや不快を回避するために、様々な防御システムを作る。不安でいっぱいの子どもは、学習に必要とされる試みを行う許容力を持てない。子どもにとって試みとはリスクを犯すことなのである。

 子どもは、欲求が満たされるのに必要な愛情が与えられれば、感情的に落ち着くだろう。安定性は、子どもの内面に安全だという感覚が染みこんでいく過程で発展する。欲求に脅かされず、子どもは柔軟性をもち、その結果、新しいものや違うものを受け入れられるようになる。同じく、不安や恐怖なしに、穏やかな変化を受け入れることができる。その結果、信頼をもって、恐怖をもたず、学ぶために必要なリスクを負うことができる。

子どもにリスクを保証し、学ばせる

 安全な環境があると子どもが認識することによって生じる確かな感情的基礎とともに、親は子どもに好奇心を働かせることを可能にしたり、挑戦を克服する試みを探したりしながら、学ばせるべきである。生まれた時から、子どもは、フラストレーションに耐え、克服することを徐々に学ぶことができる。

 赤ん坊が明るく彩色されたガタガタいうおもちゃの音を聞くとき、乳児の感覚や関心は喚起される。その乳児は、同じくフラストレーション以外の好奇心や欲求に従うようになる。ガタガタいう音を得ようとする乳児の試みが成功するならば、乳児は、好奇心や欲求だけでなく、フラストレーションも取り除けることを知る。

 同じ子どもが生後6ヶ月になったとき、床や通路に座り、面白いおもちゃが、部屋を横切るのが見えたとする。彼女は、おもちゃをつかみたい興奮した要求と同時に、つかめないことによる苦痛やフラストレーションを持つ。しかしながら、少ない人生経験のなかで得た、欲求とそれに付随するフラストレーションの両方に耐える勇気をもって、彼女はリスクを負うことを決める。彼女は、おもちゃの方へ這う。彼女は、興奮とフラストレーションの両方を感じ続ける。彼女が目的に達し、おもちゃをつかむことができたとき、彼女は幸福を感じ満足する。彼女が自分で得た重要な教訓は、彼女の幸福と同じくらい重要である。彼女は、自分から動き、フラストレーションに耐え、そして、所望の目的を達成し得ることをまたひとつ経験したわけである。

 親の中には、子どもの自己主張を覆し、危険を冒しフラストレーションを克服する能力を妨げるものもいる。例えば、 あるタイプの親は、その子どもがおもちゃの方へ這うのに気付いて、おもちゃを彼女に持っていくことによって子どもの努力を妨害してしまう。おもちゃを子どもに与えることは、彼女が彼女自身の目的を追求し、フラストレーションに耐えられることを自分に教える機会を否定する可能性がある。この親の方法は、子ども自らが信頼を発達させることを妨げてしまう。

 他のタイプの親は、子どもがおもちゃの方へ這ったので、おもちゃを遠ざけてしまう。このタイプの親は、あまりにも多くのフラストレーションを子どもに与えてしまう。子どもから遊びのコントロールを取りあげ、達成を更に難しくすることによって、子どもをあまり危険にさらさない。これは学ぶ動機を失わせてしまう。フラストレーションに耐えることへの挑戦は、子どもの遊び経験の本来の部分である。

 教育者や健康管理専門家には、学習傾向を向上させる他の機会がある。それは、親たちに、誤りを犯すことが学習の本質的部分であるということを認識してもらうためのものである。我々の文化は、しばしば誤りを犯す人に批判的である。誤りが子どもによって犯されるとき、これの傾向はとりわけ顕著である。親が子どもの過ちに対し、否定的に対応するとき、子どものなかに、自己疑惑や不適当な行動への恐れが形成される。子どもの誤りに対して、親が品位のない対応をしたとき、子どもが技術や知識を得るのに必要なリスクをとる動機を抑制してしまう。学習に集中する能力は、親が子どもの物理的、感情的、社会ニーズにどう対応するかに影響を受ける。

脅威を感じることと注意欠陥障害

 子どもは、痛むような心配事から自らの注意をそらす方法をみつけなければならない。この「注意欠陥」は、子どもが色々な心配事に対処することを可能にする。子どもが心配事から自らの注意をそらすために使う典型的な行動パターンは次のようなものである。愚かで攻撃的な行動、過度に話すこと、外出、遅刻、空想、撤回。「注意欠陥」の目的は、平静を乱す心配事を隠す疑似的存在を形成することである。これらの防御は子どもが痛みに感じることに対処するのに役立つが、組織での学習の試みは妨げる。

 学ぶために、子どもは、集中することができなければならない。子どもは、学習に集中するために、感情的に物理的に静寂にできなければならない。学習に集中することは、他の内的及び外的刺激に注意を払わず、心を落ち着けると決めることを必要とする。フラストレーションに満ちた平静を失う心理をもつ子どもは、心を静めようと試みるとき、自分の痛むような感情と直接的に接触するとわかるだろう。子どもは、この特徴的な有害な不安から自らの注意をそらす。集中することは、自らを守る防御を犠牲にすることを必要とする。これは、不安な子どもがとりたくない、もしくは、とることができないというリスクである。概して、これらの子どもは、集中しても、自らの注意をそらしもしない。防御の反応は、反射的で自動的である。子どもには、集中を求める学習は、脅威である。従って、子どもは、組織化された学習から逃走する。これは、注意欠陥他動障害(ADHD)を引き起こす可能性のある力学である。

 ADHDの行動は、徴候を示す。症状を改善させるのに、主に薬や行動技術に頼るより、むしろ、ADHD行動から原因を解決する試みを行うべきである。薬は、症状を見えにくくし、 従って、正確な診断や長期の治療を難しくする。

ピーター・ アーネスト・ヘイマン氏は、サウスカロライナ大学の早期小児教育学部の学部長及び準教授。彼は、ナショナルヘッドスタートプログラムの基準の著者であり、20 年間、ヘッドスタートプログラムのコンサルタントに従事した。また、セラピストかつ育児相談を行ってきた。連絡先:(510)527-6436、ajpa@pacbell.net




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, February 2000
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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