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Vol. 16, No. 4, April 2000
1. 子どもの遊びから発達の変化がわかる

子どもの遊びから発達の変化がわかる

デイビット・W・クリット博士

 よちよち歩きの幼児の行動は、環境を理解しようとする試みと考えられている。物質的、社会的環境を探検して一貫性を発見する一方で、すぐに注意をそらす子どもについて言及することは、矛盾したように思われるかもしれない。この注意を積極的に変えることで、すぐに欲求がかなうことを求める。よちよち歩きの幼児が何かを必要とするとき、彼女はすぐに欲しがり、待つことができない。

 小学校入学前、子どもは、すぐには実現しない、または、おそらく全く実現しない要求を持ち始める。発達学の理論家L.Sヴィゴツキー氏は、これが理由で遊びが発生すると考えた。この考えによれば、目的が状況の意味を決めるのを止めるように、遊びは、変化をもたらす発達のための触媒として役立つ。物理的環境を探したり、他の子どもを探したりすることに対する子どもの関心とその間の相互作用は、多くの不完全な試みの機会となる。時々、これは新しい形の理解を導く。

 12人の幼児 (生後18〜24ヶ月、男女半々)が成人の関わりなしに相互に作用し合うことは、我々の実験クラスにおいて明瞭に示された。我々の観察は、学校の最初の7週間行われた。子どもたちのうちの7人にとってグループ保育は最初の経験であった。

欲求の変化

 クラスの第3日の朝に、ケーレンは、遊んでいた小型のカメラを投げ捨て歩き回った。マシューは、それと遊び始めた。ケーレンは戻ってカメラをとろうとしたところ、マシューが自分のものと主張した。ケーレンは、再び注意をそらした。彼が戻ったとき、興味深いことが起こった。おもちゃに手を伸ばすかわりに、ケーレンはマシュ−にカメラを意味して「チーズをちょうだい。」と言って、手を伸ばし、彼の頭をたたきながら、「頭、頭」と言った。この行動は、カメラの所有を達成するための策と解釈されるであろうが、社会的交流が先行した結果、欲求の変化が起こったとも言えるだろう。以下の事件は、後者の解釈を示唆する。

 9月初旬の朝、サバンナは、赤ん坊人形をつかみながら部屋の周りを歩き回った(彼女の母はそのとき妊娠していた。従って、彼女が赤ん坊に非常に興味があった)。ケーレンは、またカメラで遊んでおり、「チーズ、チーズ、チーズ」といっていた。サバンナは、部屋を見渡し、ケーレンの方を見た。彼(ケーレン)は、彼女(サバンナ)の方へ歩いた、しかし、すぐに先生の方へそれていって、「写真を撮って」といった。そして、彼は、サバンナの方へ引き返し、そして、カメラを持ち上げた。彼女は、気がついて、微笑み、人形を抱いて、「これが私の赤ちゃん」と言った。ケーレンがカメラを下げ、そして、それを持ち上げ、クリックし、「チーズ」と言ったとき、彼女はポーズをとった。彼が2枚目を撮るためカメラを持ち上げたとき、サバンナは、彼の方へ微笑み、歩いた。彼は、顔の前にカメラ持ちながら、彼女に向かって「チーズ」と言った。彼女は後ずさりし、彼がカメラをもってそれを追った。

 カメラとその機能を子どもが認識していることが、社会的交流を容易にする仲介物になった。

社会的交流の方法としてのおもちゃ

 他の事件は、2〜3日後に発生した。ネイサニエルは、小さいガレージのなかの自動車のおもちゃでひとりで遊んでいた。セスは歩き回り、彼に向かわないものの、彼の横で転んだ。セスは、ネイサニエルが車で遊んでいるのに気がついた。彼は、小さなグループに本を読んでいた先生に注意をそらした。セスが半分振り返るとネイサニエルが車を交差点にも持ってきたのに気がついた。セスは、音を聞き、その方を向いた。ネイサニエルが自動車を取り上げ、交差点を引き下げたので、2人の少年は、短く相互にちらっと見た。ネイサニエルは、車を取ろうとは試みなかった。セスは、それを取り上げ、ネイサニエルを見て、車を彼に返した。

 ネイサニエルは、車を取り、セスの前でうつぶせになった。最初に、彼は手を伸ばし、セスのお腹を優しく叩き、起きあがったあとセスの髪に触れた。( 我々は、ネイサニエルがアフリカ系米国人であり、セスが非常に長い絹のような金髪であることに注目した。我々は、それが社会的なものか、または単なる好奇心の問題であるかはわからない。)セスは、 ネイサニエルが触れた彼自身の髪をさわった。そして、ネイサニエルは、非常に優しくセスの顔や口に触れた。セスは、ネイサニエルの手に触れ、そして彼の手を彼の口の上に置き、そして、「くち」と言った。ネイサニエルは、まだ手に持っていた車のおもちゃを車庫に戻し、話を聞く子どものグループに加わった。

 2人の少年は、付随的に相互に接近した。小さい車のおもちゃは社会的交流を開始させた。ネイサニエルはそれと遊び、セスは、直接それを見ていなくても音は聞いていた。この点で、彼らは、このものに注意を向けていた。その車のおもちゃは、社会交換のしるしに変えられた。この事件の意味は、物質的なものから対人関係に変わり、車のおもちゃは大きな意味を持たなくなった。ヴィゴツキーに言わせれば、物体から他人との接触に、欲求の変化があった。

 子どもが有意義な枠組みをその行動に課すとき、物体は遊びの中の機能として定義され、欲求が想像上の意味に従属する。この短いレポートは、子どもが初めておもちゃに焦点を合わせ、それから社会的目的を達成するためにそれを使った場合を描写した。子どもの行動は、ものから社会的交流まで意図的ではない。それでもなお、ものに関するつかの間の執着、他のものへの仮のアプローチ、2つの間の偶然の動き、これらはすべて、遊びの中で新しい意味を作る例である。

デイビット・W・クリット博士は、ニューヨーク市立大学スタツテ・アイランド校教育学部助教授。連絡先は(718) 982-2000。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, April 2000
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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