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Vol. 16, No. 9, September 2000
1. いまこそ注意欠陥・多動障害(ADHD)についての迷信を一掃すべきだ

いまこそ注意欠陥・多動障害(ADHD)についての迷信を一掃すべきだ

グレゴリ−・K・フリッツ医学博士

 注意欠陥・多動障害(ADHD)は、子どもや子どもを教え愛する人々が直面するできごととして新しく珍しいものではない。しかし、最近この障害は、その広がりや治りにくさが認識されるにつれ、かなり関心を集めている。主要な2つの研究と国立保健研究所(NIH)後援のブルーリボン賞コンセンサス会議の結論が昨年公表された。この科学的な合意書の水準は、ADHDに関する迷信を直接見つめ直すことになった。

迷信:
ADHD は、真の精神医学的異常としては現れない。むしろ、無能な親、教師や製薬会社によって広められた、不運な正常な子供の行動である。  

 ロードアイランド州イースト・プロビデンスにあるエマ・ペンドレトン・ブラッドレー病院で刺激剤による効果的な治療を行ったことに関して、チャールズ・ブラッドレーが1937年に最初のレポートを出して以来、ADHDについては、他の小児期の精神医学的異常より科学的な研究が行われてきた。ADHD は、米国精神科協会の精神異常診断統計マニュアル(第四版)に含まれる他の主要な精神医学的異常と同様に扱われている。専門家たちは、ADHD を持つ個々の患者の診断に、確実に一貫して同意できることを、その研究で示した。ADHD には、ほとんどの精神医学的異常よりも強い遺伝性の証拠が存在する。問題として残っているのは、ADHDは、「無条件の」あるいは「連続的な」ものかどうかである。ADHD は、糖尿病や特発性高血圧のような別の疾患であるのか? さらなる研究がこの重要な質問に答えるのに必要とされる。しかし、それが答えられない状態のままであるという事実は、 ADHDの他の側面に関する重大な精神医学的な懸念を意味のないものにしてしまうのである。

迷信:
大人たちが子どもたちに子どもらしくさせてあげられるのならば、ADHD はインパクトの小さな、さほど重要ではない問題である。

 十分すぎるほどの研究報告により、ADHDの子どもの学業上、社会生活上、行動上の問題が実証されている。大人になって治るどころか、子どもが思春期になるにつれて、ADHDを持つ子どもの問題はよく混合されている。行為異常、薬剤乱用、反社会的行動、そしてあらゆる種類の怪我は、早期の発達上の問題に基づいているものである。ADHD の子どもを持つ親は、フラストレーション、夫婦関係に関する問題、そして他の幼児期の慢性疾患に見られるのと同じく重い鬱状態を経験している。ADHDを持つ個々人は、健康保険、警察、そして教育システムに余分に負担をかけている。例えば、米国の公立学校は、 ADHD を持つ子どものための追加サービスに 1995 年は30億ドル以上を費やしたと算定されている。ADHDは子どもが大人になるまで続くので、ADHD と関連する進行中の問題に関する報告は増大してゆく。

迷信:
ADHDには本当に効果的な処置がない。薬物は、製薬業のマーケティング策略として売られ過ぎている。

 行動治療、薬物治療、様々な治療の効力に関する堅固たる証拠はある。大規模で確かな研究が以下のような結論をもたらした。:
a) 刺激剤薬物治療と行動治療は、両方とも効果的である。
b) 上記の治療を個々に比較すると、刺激剤薬物治療が行動治療より一貫して効果的である。
c) 上記二つの治療を組み合わせる治療は、最も効果的で、薬の服用量が少なくてすむ。

迷信:
刺激剤薬物治療による処置は副作用を伴う危険な方法で、将来的な薬剤乱用の可能性がある。

 刺激剤薬物治療に対する拒否反応は存在する。しかし、薬剤乱用は通常時の薬の服用量と関係あり、薬の服用量が高いときに発生する可能性が高い。専門家のNIHコンセンサスパネルは、刺激剤を注意深く治療で使用すれば、有害であるという証拠はないと結論を下した。大学構内での人気が反映しているように、乱用の可能性は刺激剤薬物治療において存在する。しかし、その影響は治療投薬範囲では明白ではない。

 実際、昨年報告された2 つのレポートでは、刺激剤薬物治療による ADHD の効果的な治療が将来的な薬剤乱用の危険を実際には減少させるかもしれないことを示唆している。

 曖昧性、過度の治療についての懸念、ADHD に関連する公の懐疑論は、実際に適用されるアプローチが非常に変わりやすいことから生じている。診断のプロセスが疎略で、不十分、かつ治療が組織的ではなく、長期治療といっても表面でばらばらであることがよく見られる。ADHD の多方面からの更なる研究が必要であり、子どもがこの障害に対する適切な治療を受けられるならば、臨床の実践の場では既に世に出ている研究結果に十分配慮する必要がある。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, September 2000
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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