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Vol. 16, No. 11, November 2000
1. 10代の子どもにおける喫煙とうつ病は直結している
2. 死を使って遊ぶ

10代の子どもにおける喫煙とうつ病は直結している

 10代の子どもにおける喫煙とうつ病との関係についての性質や方向を評価するため、青少年の健康に関する国立長期調査が、基礎研究及び1年間のフォローアップデータによる将来分析をおこなった。分析のために、家に住む10 代の子どもと親へのインタビューが行なわれた。

 10代の子どもについて2 つのサンプルが構成された。第1サンプルは、うつ症状のない青少年8,704人で、喫煙者と非喫煙者から成る。多項目変量モデルは、現在の喫煙が重度のうつ症状を発症させる最も強い予知因子となることを示した。

 第2サンプルは、前30日間に煙草を吸わなかった10代の子ども6,947人から成る。多項目変量モデルは、重度のうつ症状は喫煙に他の決定要因があるときには強い喫煙習慣の予知因子とならないことを示した。

 「一般での思いこみとは対照的に、うつ病は10代の子どもにとって喫煙習慣の前触れではないようだ。しかしながら、現在の喫煙は重度のうつ症状を発症させる強力な決定要因である。」と、著者は結論づける。

出所:E・グッドマン及びJ・キャピットマン著「10代の子供にとっての憂鬱症状と喫煙」(「小児科学」、 (2000;106:748-755)。著作権についての問い合わせ:Elizabeth Goodman, Division of Adolescent Medicine, Children's Hospital Medical Center, 3333 Vurnet Ave., Cincinnati, OH 45229.




死を使って遊ぶ

マイケル・ブロディー医学博士

 マイケル・ブロディー博士は、米国児童青少年精神医学協会のテレビ・メディア委員会委員長。このコメンタリ−は、博士が2000年7月26日議会上院公衆衛生・暴力会議で証言したものから引用したものである。

 「可能な限りの全ての暴力的方法を使い、敵の足を狙撃した。武器を発射し、血しぶきとともに胸部や蹊部を吹っ飛ばした。敵にあけた穴からは中身が噴出した。」

 これは、精神的に傷を負った兵士による戦争話だろうか? いえ、これは新しいゲーム「ソルジャー・オブ・フォーチュン」についてニューヨーク・タイムズの批評欄にのったものである。

 いまや我々は、映画鑑賞にかけるお金よりもビデオゲームに対して2 倍のお金を使っている。ゲームマニアの中心は8 歳から14 歳の男性である。製作されたゲームの80パーセントは、暴力的なものである。

 血、斬首、銃、ナイフ、切断、そして死を、色や音を使ったリアルな映像で提示している。社会学習研究が示してきたように、模倣やモデル化がテレビの問題であるならば、ゲームはより視覚的、より聴覚的、そしてより物理的に子どもが文脈に埋め込まれた状態になる点で、さらに熱中させられるメディアといえる。ピアジェは学習 同化がいかにジョイスティックやマウスを使う知覚行動によって拡張されるかを示した。これらの動作は、習慣になり、さらに補強される。ジェーン・ヒーリーがいうように「心の習慣は、脳の構造になる」のである。

 ビデオゲームの世界はダーウィンの世界であり、偏執病患者であり、コントロールされている。感情移入がない。ビデオゲームで遊ぶ子どもが学校の慈善活動にあまり貢献しないと複数の研究が示している。「ねじられた金属」や「存在する悪」に利他主義はない。他を殺すことによってのみ勝つ。軍隊が戦闘をシミュレートするためにこれらのゲームを使うことは驚異でないか? ビデオゲームは禅宗のようなアプローチ、すなわち1 殺人につき1射撃を必要とする。スコアを喜んだりミスをののしる時間もなく、次の抹殺に進まなければならない。このことがしばし第一人称の殺人者であることの意識を薄れさせている。

 女性は、これらのゲームではあまり重要な存在ではなく、犠牲者となりがちである。ブロンドの女性は優しく、ブルネットの女性は悪者となりがちである。優越感を引き起こす特徴と十分に被覆された女性の魅力的な服装はゲームの魅力を拡張している。

 暴力的テレビ番組を見る子どもは、より多くのビデオゲームを遊ぶ。ビデオゲーム遊びは、一時の感情的反応となる侵略と関連がある。ゲームが激しい自律神経効果、すなわち高い心拍数、高血圧、攻撃的思考に繋がる効果があることを複数の研究が示している。ゲームをする子どもは、自我意識が低く、弱者への思いやりが少なく、学業がうまくいかない傾向がある。年齢が低いほど、ゲームのキャラクタを模倣する可能性が高くなる。これは、予備の研究のみであるが、メディア教育センターのようなグループは、これらの現象の理解を統合し促進するために、研究顧問団を組織した。

 今のゲームは、おもちゃや伝統的な意味におけるゲームでさえもない。ビデオゲームは本来のおもちゃのように子ども自身の話を有効なものにする触媒として働かない。本来のおもちゃは、人形、自動車、とりで、粘土遊びのように想像を促すものである。トランプ、モノポリーやチェッカーといった本来のゲームは、社会化する時間の余裕があり、家庭での交流を促し、問題の解決と構築のための戦略を開発するものである。ビデオゲームは、時間を圧縮し、殺人を促す。これらのゲームは必ず終りがあり、キャラクタやブランドの脚本に基づいており、子どもの想像や行動をますます邪魔する。

 セガのドリームキャストのような新しいプラットフォームは、古いメディアゲームと新しいインターネットが組み合わさっている。今、子どもはオンラインで他人と繋がって、挑戦し得る。我々が統制しえないサイバースペースは、さらに多くの血や破壊のための新しいアリーナとなる。

 有名な幼児精神科医D・W・ウィニカット氏は、しばしば、自分と子どもの間に距離を保つことを、「十分に良い母」であると話した。子どもが自我意識を実現し、発達させることを学ぶのは、この「進化のスペース」である。我々の社会においては、私の観察で判断されたように、このスペースが、子どもに無神経なメディアであるビデオゲームによってますます満たされてゆく。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, November 2000
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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