子どもと若者の喫煙 |
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医師アレッサンドラ・カズラ 医師グレゴリー・K・フリッツ たばこを吸い始める子どもや若者は毎日2000人以上になるという。CDC(疾病管理センター)によると、現行の喫煙レベルが続くと、いま0歳から17歳の人たちの内500万人以上が喫煙のため早死するという。この傾向は、とても憂慮すべきである。なぜなら彼らは多くの面において間違った方向に進んでいるからである。
思春期の若者でたばこを吸い始める者と吸わない者がいるのはなぜだろうか。この一見簡単な質問の答えは、複雑でしかもまだ完全な答えが出ていない。若者の間の喫煙増加は、彼らが喫煙は健康に対するリスクだと考える度合の減少と平行している。たとえば8年生のうち1日1箱以上たばこを吸うのが健康に重大な危険をおよぼすと考えるのはわずか50%である。健康に対する影響があることを認める者は、以前にたばこを勧められても断った可能性が高い。 両親、兄弟姉妹、友人がたばこを吸う子どもたちは、自らたばこを吸いはじめることが多い。早期の喫煙は同世代の仲間の圧力が大きな要因だという報告があるが、同世代の意見や行動について誤った考えをもつことも、思春期の若者に影響を与えているかも知れない。同年齢の非喫煙者とくらべて、たばこを吸う若者たちは仲間の非難を過小評価し、仲間や大人たちの喫煙頻度を過大評価することが示された。さらに、たばこを吸う若者がたばこを吸う者を仲間に選んでいることが示され、たばこを吸う者は同じくたばこを吸う友人を持つことが多いという観察を強めている。 相当数の研究が現在・将来の喫煙の増加に、思春期の心理的要因が関係していることを認めている。それらは、憂鬱な気分、集中力欠如、ストレスを受けやすいことや、身体イメージについての悩みなどがある。最後に、両親の無関心、不十分な親子間のコミュニケーション、家庭で物事を決定するプロセスに思春期の子どもが加わることの少なさなど、家庭内のストレス要因が思春期の喫煙と関連している。 これらのリスク要因が知られている一方で、喫煙を始め、これが進行することについての重大な疑問は残っている。何年間も吸ったり止めたりした後で、依存習慣をつけることなく禁煙できる十代の若者がいる一方で、最初の一服から急速にヘビースモーキングに進行する者もいることがわかっている。これらの道筋のメカニズムについてはさらに学ぶ必要がある。 出生前のニコチンを浴びることが、思春期の喫煙依存のリスク要因であることはわかっているが、その理由はまだわかっていない。遺伝子の伝達がニコチン依存に重要な役割を果たしているのはわかっているが、これを説明できる特定の遺伝子と分子メカニズムについてはさらに学ばねばならない。喫煙習慣を続ける最大の危険にさらされている若者に対するたばこ規制政策の影響についてもさらに学ばねばならない。 喫煙を始め、本数を増やしていくリスク年齢のピークにあたる子どもや若者に対する介入を成功させることが、健康に対する直接的で持続する利益につながることは明らかである。若者たちを喫煙に向わせる要因にまず介入し、その現実世界での有効性を注意深く評価しなければならない。何百万人の生命が危険にさらされていることを考えれば、たばこを吸い始める十代の若者を数パーセントでも減らすことが、この重大な公衆衛生問題への大きな勝利となる。 |