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Vol. 22, No. 9, September 2006
担任の教師は子ども達の不安症状を認識している

担任の教師は子ども達の不安症状を認識している

新しい研究によると、幼い子供の分離不安、社会不安、および生理的不安は、小学校という環境のなかで教師が確実に見つけ出すことができるという。

教師が、教室内において、外向化された問題行動に気付くかどうかについての研究は数多く成されてきたが、不安症のような内向化された問題に気付けるかどうかについては、あまり関心が向けられることはなかった。不安症状は、授業の妨げになる行動に結びつくことはめったにないので、教室の中では不安症が見つけられずにいるかもしれないという研究結果がある。危険回避のような不安症状は、常に完璧を求める、人を喜ばせる、リスクを伴うことはしないなど、結果的に生徒としてふさわしい行動としてあらわれることもあるだろう。

子供に見られる不安症状について教師が察知できるものはどれか、また、そのような教師による認識は子どもの年齢や性別によって異なるかどうかを調べる研究が行われた。被験者は、児童数、人種構成、社会経済的特徴などが合致する3つの小学校に通う(5歳から11歳までの2年生から5年生)453人で、児童の参加に関しては、親の同意を必要とした。

研究スタッフは、少人数形式により、児童達にMultidimensional Anxiety Scale for Children(子どものための多面的不安検査:MASC)と呼ばれる、39項目からなる自己評価質問表を記入させた。MASCは、身体的な不安症状(「手が汗ばんでいる、もしくは、手が冷たい」など)、危険回避(「全てのことを完璧にやろうとする」、「自分が動揺してしまうようなことは避ける」など)、社会不安(「他の子どもに馬鹿にされる気がする」など)、分離不安/パニック(「お母さんやお父さんのそばに居るようにしている」など)を測定する。各項目について、児童は自分の気持ちに当てはまる程度(そう思うことは「一度もない」、「ほとんどない」、「時々ある」、「しばしばある」)を評定した。

項目は児童に向かって音読され、すべての調査が同じように実施されるように予め標準化した説明を準備し、児童にとって誤解しやすい内容の項目や不明瞭な項目については更なる説明を加えた。

調査に参加した教師は、自分のクラスの被験者リストから最も不安を感じていると思われる児童を3人指名するよう言われた。

調査に参加したのは、合計453人の児童(平均年齢8.7歳、女子236人)だった。主な調査結果として、最も不安を感じているであろうと教師から指名された児童は、指名されなかった児童よりも、不安症のスコアが有意に高かった。これは、総合的に言えば、教師が受け持ちのクラスで、総合的な自己報告で不安症を訴えた児童をあらかじめ正確に特定していたことを示唆している。5つのMASCスコアを従属変数とした2 × 2 × 4(教師による指名×性別×学年)MANOVA(多変量分散分析)が行われ、以下のような主効果と交互作用が見られた。指名の有無(p=0.007)、性別(p=0.08)、学年(p<0.001)、性別に対する指名の有無(p=0.08)、学年に対する指名の有無(p=0.03)。

教師から指名された生徒について調査結果が有意だったのは、不安症全般(p<0.01)に加え、身体的な不安症状(p<0.05)、社会不安(p<0.05)、および分離不安/パニック(p<0.05)だった。危険回避の不安症状が大きいと答えた児童については、教師から指名された児童と指名されなかった児童とではスコアに差はなかった。つまり、危険回避の行動は、他のタイプの不安症や身体的不調を伴う不安症に比べて見極めづらいということが言える。

教師は男子と女子に見られる不安症状に対し等しく気付くことができた。不安症状についての生徒の自己報告に関して、明らかな性差は見られなかった。これは、幼年期の不安症は男子より女子の方に多く見られるという疫学研究の結果とは相容れないものである。しかし、不安症の領域(特に社会不安症)において、思春期前に著しい性差は見られないと示唆している研究もある。

この研究の限界としては、調査結果が自己報告に基づいているため、不安症状について過剰あるいは過少評価されている可能性があるということが挙げられる。また、親の積極的な同意が必要だったため、調査への参加率が低かった。更に、研究者は、前回の研究において、低学歴の親を持つ子どもや、一人親家庭の子ども、少数民族の子どもの比率が少なかったことを指摘している。今回の研究では、被験者のほとんどが白人であり、得られた結果を一般化し、他の集団に当てはめるのには限界がある。

「不安症状のある児童は、素直で破壊的な行動にでることがないため、教師はそれを察知できないとずっと信じられていたため、今回の調査結果は重要である。」と研究者は述べている。また、診療所や地域の施設などで子どもを診察する際、臨床医は、許可を得て担任教師から子どもの情報を入手することを検討すべきであると提案している。


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, September 2006
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