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●探訪・子ども研究室 -1-
(2004年12月24日)

今月のナビゲータ:松田剛さん(東京大学開研究室 研究員)

赤ちゃんは映像と本物を見分けられるのか?

 東京大学開研究室では、赤ちゃんから大人まで、幅広い年齢層を対象とした様々な研究を行っています。その中の柱の1つが、メディアと認知発達に関する研究です。ここでいうメディアとは、テレビやテレビゲームなど、近年になって登場した情報メディアのことです。こうしたメディアを子ども達がどのように認識し、どのような影響を受けているのかについて、心理学的・脳科学的手法を用いて研究を進めています。

 例えば赤ちゃんを対象とした研究では、赤ちゃんがテレビの映像と現実世界を区別できているのかについて、まるで手品のような実験を通して調べています(実験の模式図はこちら)。赤ちゃんは坂道を車のおもちゃが走っていく映像を何度も見せられます。そしてその後、テレビの横のスクリーンが上がると、なんとそこには本物の車のおもちゃが置いてあるのです。もし赤ちゃんがテレビの映像と現実世界は異なることを知っていれば、「テレビからおもちゃが飛び出してきた!」とビックリするはずです。逆にもしテレビの映像と現実世界の区別ができていなければ、本物が飛び出してきても当たり前のこととしてあまり驚かないはずです。
 今までのところ、6ヶ月児ではテレビと現実の区別がついていないものの、10ヶ月児以上になると見分けているらしいことがわかってきました。ただし詳細な結論を出すためにはより多くのデータが必要です。


テレビゲーム中の脳活動が意味すること

 また小学生以上の子どもを対象とした研究では、テレビゲーム中の前頭前野の活動計測を行っています。前頭前野とは、脳のもっとも前方(額側)に位置する部位で、複雑な思考や感情の制御を行うとても重要な部位です。もし世間で言われているように、テレビゲームをすることで子どもが暴力的になったり、社交性を失ったりするのであれば、テレビゲームを行うことで前頭前野の活動に何らかの影響が生じているのかもしれません。
 そこで私達は、近赤外分光装置という安全で負担の少ない脳活動測定装置を使って、子ども達がテレビゲームで遊んでいるときの前頭前野の活動変化を計測しました。その結果、テレビゲームをしている間は、何もしないでボーっとしているときよりも前頭前野の活動が低下していることがわかりました( はある成人被験者のゲーム中のデータをMRI画像に重ね合わせたもの。青い部位で活動が低下している)。
 ただしこの結果が直ちにテレビゲームが前頭前野の発達を阻害するという証拠にはならないという点には注意しなくてはなりません。他の実験によって、この現象はゲームを効率良く行うために、ゲームの処理には関係のない部位を休息させている状態であることがわかってきました。いわば脳が効率良く働いている状態なのです。このような前頭前野の活動低下が、将来的に子ども達の発達にどのような影響を及ぼすのかについては、今後のさらなる研究が必要です。


科学的に解明することが大切

 メディアが子どもの発達に与える影響に関しては、科学的な証拠が少ないままに様々な風評が広まっているのが現状です。私達の研究室ではこうした現状を憂い、その影響を科学的に解明していこうとしています。 ここで紹介した以外にも、赤ちゃんが鏡やテレビに映った自分を自分と認識できるようになるのはいつ頃か、赤ちゃんは人間型ロボットをどのように認識しているのかなど、様々なテーマの研究を行っています。
 当研究室では調査にご協力いただける赤ちゃんやお子さまを常時募集していますので、ご興味を持ちの方は、下記ホームページをご参照の上、お気軽にお問い合わせください。

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東京大学開研究室(大学院総合文化研究科広域システム科学系)
 研究室のホームページはhttp://ardbeg.c.u-tokyo.ac.jp/~hlab/index.html
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