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 日本赤ちゃん学会未来を育む赤ちゃん研究
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 第1回学術集会 シンポジウム企画趣旨・講演サマリー

 平成13年4月22日

9:00〜11:30

 シンポジウム3 「類人猿に見る母子関係」

 ヒトの発達において初期の母子関係は極めて重要なものだとされる。しかしながら子育てをおこなうのはヒトに限らない。さまざまな動物においても子育てがなされ、多様な母子関係が存在する。
 本シンポジウムでは、『類人猿に見る母子関係』と題してヒトにもっとも近縁だとされるチンパンジーの母子関係に焦点を当て、比較発達の視点から討論をおこなう。京都大学霊長類研究所では3頭の赤ちゃんチンパンジーが誕生し、松沢哲郎教授を中心にチンパンジー発達プロジェクトが大々的に推進されている。今回は、実際にそのプロジェクトに参加されている4人の先生方に、母親が子どもを抱くにいたる過程、赤ちゃんの姿勢や運動発達と母子関係、対面したコミュニケーションと模倣の役割、母子の対象操作等についての話題提供をいただき、最後にこれまでたくさんのヒトの母子を見て来られた小西行郎先生より、ヒトの母子関係の視点から討論をおこなっていただく。

14:50〜16:00

 特別講演「『心の理論』の発達-幼児期の心の理解の豊かさをさぐる」

 「物心両面」などというが,「物」と「心」は私たちの認識の対象として最も重要な2つのことがらである。それでは,「物」を理解する心のはたらき及びその発達は,「心」を理解する心のはたらき及びその発達と同等のものと考えてよいのだろうか。Premack&Woodruff(1978,Behavior and Brain Sciences, 1, 515-526)によって開始された「心の理論」研究は,「物」についての理解だけでなく,「心」の理解の問題もまた認知発達研究の重要なテーマであることを示した。Piaget, J.の発生的認識論は,生まれてから約15年間の間に発達する操作的思考の個体発生的観点から,「科学者としての子ども」の発達の様相を明らかにしてきたが,社会的存在としての子どもという観点の希薄さが批判されてきた。「心の理論」研究は,「心理学者としての子ども」の発達過程がどのようなものであるかを明らかにするものである。
 Wimmer&Perner(1983, Cognition, 13, 103-128)は,物語の登場人物が抱くに至った誤解を幼児が理解できるかどうかを「誤った信念課題」によって調べ,3歳、4歳児はそのほとんどがこの課題に正しく答えられないが,4歳-7歳にかけて正答率が上昇するというデータを得ている。
 この研究を受けて,Baron-Cohen, Leslie, Frith(1985, Cognition, 21, 37-46)は,健常児では4歳ころから理解可能となる誤った信念課題に生活年齢11歳11か月の高機能の自閉症児たち2割しか通過できないことを示し,「心の理論」欠損仮説を提起した。
 また,Perner&Wimmer(1995, Journal of Experimental Child Psychology, 39, 437-471)は,「メアリーはアイスクリーム屋さんのバンが公園にあると思っている,とジョンは誤って信じている」という二次元的信念の理解が9-10歳ころに可能になるという結果を示した(課題を簡単にすると幼児でも可能という研究もある)。さらにZaitchik(1990, Cognition, 35, 41-68)は,誤った信念課題と同型の「写真課題」を考案し,幼児の誤った信念課題の正答率が写真課題と同等以上であることから,「心的表象」の理解が難しいのは,それが「心的」だからなのでなく「表象」だからであることを示唆すると解釈した(子安, 1997の実験結果はこの見解に否定的である)。
 このように,「心の理論」研究を通じて,「心」を理解する心のはたらき及びその発達過程が明らかにされはじめているが,「心の理論」の獲得即〈心の理解〉が可能であるとは言えない。このズレこそが研究に値するのではないかと考えている。

 〔文献〕
 バロン=コーエン(長野・長畑・今野訳)1997 自閉症とマインドブラインドネス 青土社.
 子安増生 1997 子どもが心を理解するとき.金子書房.
 子安増生 (編)1997特集:心の理論.心理学評論,vol.40, No.1.
 子安増生 1999 幼児期の他者理解の発達.京都大学学術出版会.
 子安増生 2000 心の理論.岩波書店.
 子安増生・服部敬子・郷式徹 2000 幼児が「心」に出会うとき.有斐閣.
 子安増生・木下孝司 1997 〈心の理論〉研究の展望.心理学研究,68,51-67.
 Perner, J. 1991 Understanding the representational mind The MIT Press.

16:00〜18:00

 シンポジウム4 「乳児の脳と行動の解明の新たなアプローチ」
 近年、様々な学問領域で、赤ちゃん研究への期待が高まっている。例えば、脳科学における脳の非侵襲計測方法の開発や、行動学における行動計測や分析手法の進歩などによって、これまでになかった手法で赤ちゃんを研究することが可能になりつつある。一方、ロボット工学などの分野では、発達するシステムの構成論的設計や人工物との身体的なコミュニケーションなどの観点から、赤ちゃんの発達のメカニズムが注目されつつある。このシンポジウムでは、様々な分野の研究者に新しい赤ちゃん研究の動向と将来像を語って頂く。各シンポジストの演目は次のとおりである。
 牧 敦「光による新生児の言語機能計測」、多賀 厳太郎「赤ちゃんの脳と行動の自発的ダイナミクス」、浅田 稔「ロボットの認知発達:脳と行動理解の構成論的アプローチ」、渡辺 富夫「心が通う身体的コミュニケーションシステムE-COSMIC」

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