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 日本赤ちゃん学会未来を育む赤ちゃん研究
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 第5回学術集会 シンポジウム4
 「育てにくいと写る子の理解と対応 −子育て困難の実像と虚像−」

 平成17年7月3日 <オーガナイザ> 石川 丹(楡の会こどもクリニック)

15:10〜

 児童虐待とその予防的対応

石川 丹(楡の会こどもクリニック [前・札幌市児童福祉総合センター] )

 札幌市児童福祉総合センター(児童相談所)のデータによると、幼児を虐待した人が述べた虐待理由は「聞分け無い、反抗する」が一番多かった。そうした理由で虐待されていた幼児のうち、虐待事象から解放された後の養育環境でも「聞分け無い、反抗する」と評価された子は一人もいなかった。幼児虐待の発生は、いわゆる反抗期の「反抗」を自己主張とは捉えられずに言葉通りの反抗として捉えてしまった虐待者が、反抗だから抑えねばならないと思い、高じて虐待になってしまったというメカニズムが示唆され、また、虐待発生要因は子どもの側ではなく虐待者の側にあることが示唆された。
反抗期という言葉は子どもを尊重した表現ではないので、『自我伸長期』という言い方を提案する。
 子どもにとって、或いは大人にとって好ましくない行動を子どもがした時、大人はまず禁止の声掛けをし、子どもが禁止に応じた時に初めて「おりこうさん」と褒めるのが日本の一般的躾教育である。禁止に応じない子どもは当然「聞分け無い、反抗する」と写ることになる。こうした「ダメ!の躾」は虐待発生の一因に成り得るので、『オッケー!の躾』が虐待予防への道である。
子育てに当たって「苦あれば楽あり」は子どもに通じ難いので、『予想通りニンマリ作り』が望ましい方向であることを提案する。

 里親家庭での困難への対応〜血のつながりを越えて親子になる〜

崎 美枝子(家庭養護促進協会大阪事務所)

 色々な事情で親に育てられない子どもたちを、養子縁組前提で里親委託し、新しい親子関係を形成することは、そう簡単なことではない。
 生みの親から、例えどの年齢であったとしても、突然に引き離され、多くは乳児院や養護施設に預けられた子どもは、相当深く心に傷を受けている。勿論傷つき方は、子どもの年齢や資質や養育された環境等によって異なるが、言えることはどの子どもにしても特定の大人との安定した信頼関係が保障されない環境におかれていたことによる愛着障害である。施設という集団で養育される環境では、担当者の勤務時間による制約や担当者の交代が起きる。一般の親子のように泣きさえすれば、同じ養育者『通常は母親』が、必ずやってきて子どもの要求を予測し、それを充足させてくれるという関係ではない。同じ匂い、同じ声、同じ肌触り、おなかの中から聞いていた心臓の鼓動、同じ顔・表情によるアイコンタクト等という環境がもたらす乳幼児の安心感を経験することがない。特に実親から引き離されることによって、その環境が突然になくなるという経験は、かなり大きな不安と怒りを子どもにもたらしていると予測できる。
 0歳児はともかく、1歳を過ぎると、子ども自身が新しい親になる人に対して、どこまで自分を受け入れる用意(覚悟)があるのかを、確かめようとする。実親との離別の年齢が低く、集団生活の時間が長くなる子どもほど、障害が大きい。身体に染み付いた不安や怒りは言葉で説明できるものでないだけに、それを子どもが行動化すると、今度は大人の方が理解し難くなり、相当に養育困難な状況が展開される。その時期を『試しの時期』と名づけ、この間は子どものいかなる欲求も、命にかかわることでなければ、いかなる行動についても叱責することなく受け入れてくれることが必要である。

 行動様式としては、こういうことをすると養育者が困るであろうと予測しての行動、例えば過食・拒食、食べ物をおもちゃにする、床にばら撒く、水をこぼす、排泄をしくじる、膨大なる購入欲求、殴る・蹴る・噛み付くという養育者への攻撃、抱っこやおんぶへの過重な要求、様々な退行現象等である。これらを挑発的に要求してくる。要求を拒否したときのむくれ・不従順さがすさまじい。
 これらの行動を、里親が無条件に、できれば楽しんで受け入れてくれると、子どもの表情が和らぎ、豊かになり、子どもらしくなる。その期間は養育者と子どもとの関係性にもよるのだが、半年から1年ぐらいをとりあえずのめやすとしている。親への信頼が深まると、行動は落ち着き、自然な子どもらしい親への依存関係が出来上がり、例えば叱られても、それを素直に聞き入れられるようになる。

 人と関わりづらい子どもの理解と遊びの支援

安達 潤(北海道教育大学旭川校)

 人と人との関わり合いは相互的でダイナミックなプロセスであり、一瞬一瞬のやりとりが次のやりとりに展開し、関わり合い全体を生成していくものである。「気心が知れる」とは、言葉で説明せずとも阿吽の呼吸で躓きのないやりとりが成立することであり、そのためには相手の対人反応を予測し得る認知的枠組みが相互に必要である。

 生後間もない赤ちゃんにとって最初のやりとり相手は養育者である。養育者は相互の対人反応を予測し得る認知的枠組みが成立するようにやりとりを主導的に展開するが、それは赤ちゃんの認知的行動的能力に適合する範囲で直感的に調整されている。しかしこの直感的調整が破綻する場合があり、その時に養育者は「子どもとの関わりづらさ」を感じることとなる。そして同時に子ども(赤ちゃん)もまた、養育者との関わりづらさ、対人世界のわかりづらさ、を感じているのだと思われる。やりとり調整の破綻につながる一つの要因は、働きかけの変動性が赤ちゃんの認知的キャパシティを超えることである。この場合、赤ちゃんは混乱またはひきこもりの状態となり、やりとりの展開は断裂する。「不安定で過敏性の高い赤ちゃん」がイメージされるが、養育者の関わり如何によって二次的に赤ちゃんがそういった傾向性を持つ可能性もあることに留意すべきである。もう一つの要因は、相手の働きかけを包括的に全体として統合し得ない場合である。この場合、赤ちゃんは養育者の一貫した安定的表象を構築し得ず、やりとり相手に関わる認知的枠組みはバラバラで不安定な状態に留まる。これもまた、赤ちゃんの認知的特徴からだけでなく、やりとり相手の一貫性のない関わりからも結果する可能性があることに留意すべきである。

 支援の基本は、赤ちゃんの認知的行動的能力に養育者が意識的に合わせていくことである。その際、遊びのルーチン化や刺激量の調整、自律性のサポートがポイントとなる。



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