プログラム
開催日:平成16年8月8日
会場:世田谷区立砧南小学校
参加者:同小学校の児童、6年生 男子3名、女子2名 計5名
|
1)オープニング 9時~9時30分 |
夏休み期間中の小学校を訪れ、音楽室に集まった子どもたち。横一列に並べられた椅子に、子どもたちと、「泣き笑いスタッフ」と呼ばれ子どもたちと常時行動をともにする学生スタッフが交互に着席する。親しげに話し始めるが、お互いにまだぎこちない様子である。やがて教室前面にあるスクリーンに、映像スタッフが製作したオープニングビデオが上映される。学生たちが近所に住む仲間を呼び寄せ、小学校へ向かって走りながら集まってくるシーンだ。そして場面は学生スタッフたちが小学校の階段を駆け上る様子に変わる。しばらくすると、子どもたちが待つ音楽室の扉が突然「ガチャ!!」と音を立てて開き、それまで映像の中に出ていた学生たちの実物が部屋の中に入ってきた。映像世界から飛び出したお兄さんたちに子どもたちは大喜びの表情を見せる。それらの学生スタッフによるオープニング・パフォーマンスが行われ、いよいよ“未来体験ワーショップ”がスタートする。

|
2)モノがしゃべる[モノをしゃべらせる] 9時30分~10時 |
オープニングが終了すると、「未来体験ワークショップ」の最初のプログラムである「モノがしゃべる」の説明が始まる。これは、QRコードと呼ばれる携帯電話が認識する2次元バーコードを利用して、小学校で子どもたちが日常使っている様々な道具に何かメッセージをしゃべらせようという企画である。QRコードは、それが携帯電話によって読み取られると、そのコードに関連づけられた映像や音声が表示・再生される仕組みになっている。QRコードは紙に印刷して、物に貼り付けることができるので、携帯電話によって“モノの気持ちを読み取る”といった世界を表現できるのである。ユビキタスと呼ばれる次世代のITは、物の世界と情報の世界が融合されるといわれているが、そのような事態を素朴に、かつ夢のあるかたちで体験させようというのがこの企画の趣旨である。
子ども1人に対し、第3世代の携帯電話を1台ずつ持たせ、その使い方を説明する。QRコードの利用は初めてであったものの、携帯電話には家庭で親しんでいるため、その操作はあっという間に身につけることができた。子どもたちは学生スタッフと共に教室の中を動き回り、椅子や楽器、壁にかけてあるカレンダーなどしゃべらせたい物を探す。そして、その物になりきって、その物がしゃべりたいであろうメッセージを声で携帯電話に録音する。学生スタッフはその音声データをサーバーコンピュータに転送し、転送先アドレスをQRコードに符号化してシールにプリントする。これらの作業の間、子どもたちは次のプログラムにとりかかる。

|
3)パラレル鬼ごっこ 第1回戦 午前10時~10時30分 |
2つめのプログラムは「パラレル鬼ごっこ」と呼ばれるゲーム。これはゲームに参加する各プレイヤーがカメラ付き携帯テレビ電話を持ち、鬼になった子どもや他のプレイヤーとの間で多地点テレビ会議をしながら、そのライブ映像を手がかりに逃げたり追いかけたりする“未来型鬼ごっこ”である。従来の鬼ごっことは異なり、鬼が追いかけてくる様子や、別の離れた場所で自分と同じように鬼から逃げ惑うプレイヤーの様子が、映像を通じてパラレルに体験できるところがおもしろい。鬼が相手を捕まえるという行為も、携帯電話のカメラで相手を撮影するということをもって捕獲とみなすこととした。
子どもと学生・社会人スタッフ混合の3つのチームに分かれてゲームがスタートした。逃げ回るエリアは、子どもたちが隅々まで知り尽くした小学校の校舎内の場所である。鬼チームは他のチームを携帯のカメラで撮ろうと校舎中を駆け回る。携帯電話のスクリーンに映し出された映像と現実の行動がリアルタイムに連動する体験に、子どもたちだけでなく大人たちも熱中していたが、鬼が3周したところで一時休戦となった。

|
4)モノがしゃべる[モノの声を聞く] 10時30分~11時 |
鬼ごっこから帰ってくると、先程の「モノがしゃべる」のQRコードシールが物に貼られている。子どもたちは携帯電話を片手に、部屋の中のQRコードを探し回る。そして、他の仲間が想像的に演じた物の気持ち、メッセージに真剣に耳を傾ける。
太鼓がしゃべる、「誰か叩いてよー!(ポンポン)わぁ、気持ちいー!」。イスがしゃべる、「みんなに座られて、足が痛いです・・・」。他の子は「ぼくは教育目標の紙だよ。みんな、この通りに勉強してくれるといいなー」。モノの声が子どもたちの個性に思えてくる。

|
5)未来テレビ 11時~11時30分 |
このプログラムでは、子どもたち自身の未来がテーマとなる。子どもたちは架空の「未来テレビ」の番組に出演して、「未来のわたし」にメッセージを送るのだ。子どもが一人ずつダンボール箱で作られた“テレビ”の中に入り、未来の自分へ語りかける。「大人になった頃の僕へ。僕は今何をしているでしょうか?夢を追いかけていますか?いや、違う夢を見つけてそれを果たそうとしているのですか?夢なんかどうでもいいと思っているのですか?でも、あきらめずにがんばってください」。“テレビ”の中でそう語りかける子どもの表情は真剣そのもので、学生や社会人のスタッフの心も動かされる。この映像はビデオに記録され、後日タイムカプセルCDとなってワークショップに参加した子どもたちへ贈られることとなった。

|
6)パラレル鬼ごっこ 第2回戦 11時半~12時 |
チームを組み替えて、「パラレル鬼ごっこ」の第2回戦が始まる。再び盛り上がるが、第1回戦と違い今度は子どもがTV電話に向かって、「これから3階に逃げよう!」と叫びながら、1階へ逃げるなど、鬼をかく乱させるような戦略を見つけ出す。この段階で、パラレル鬼ごっこは完全に子どもたちの新しい遊びとして受け入れられたようだ。

|
7)お昼休み 12時~13時 |
鬼ごっこでヘトヘトに疲れた頃、子どもたちは教室に戻って昼食をとる。アイスクリームやお菓子の差し入れもあり、子どもたちはスタッフと一緒になって楽しく、リラックスした時間を過ごす。この頃には子どもたちの表情もかなり和み、スタッフともすっかり仲良しになっている。

|
8)スズシゲ・ラボラトリー[音採集] 13時~14時半 |
午後の時間全体を使って行われたのは、「スズシゲ・ラボラトリー」と呼ばれる、音の採集(サンプリング)と音編集をテーマとしたプログラムである。小学校の校内から「涼しげ」な音をICレコーダーで採集し、それをパソコンの音編集ソフト「ACID」で編集し、オリジナル音楽を作曲する。さらに、友だちが作った音の作品を再び自分の素材の中に取り入れ、「リミックス」と呼ばれる作曲の手法によって、別の音作品に編曲してしまおうという企画である。
まずは、3班に分かれ、音をサンプリングするためのボイスレコーダが渡される。子どもたちは「スズシゲ」な音を求め、音楽室・校舎内・校庭を探し回る。音を採集すると同時に、ポラロイドカメラで“ビジュアルブックマーク”(その音源の風景を撮影)する。

校庭ではスタッフがペットボトルやスプリンクラーで水を撒く。子どもたちはその音も採集する。

|
9)スズシゲ・ラボラトリー[作曲] 14時30分~15時30分 |
音採集を終え、音楽室に集合する。各班に音編集ソフト「ACID」の使い方を習得した学生スタッフが1名ずつ配置された。初めから子どもたちだけでこのソフトを使いこなすのは困難なため、学生と小学生の共同製作となる。学生スタッフは子どもの要望を聞きながら、音作りの作業を進めていく。しばらくしてこつがつかめると、子どもも自分自身でソフトを操作し始めるようになる。
音の作品が完成したら、子どもたち自らがステージに上がり、作品発表を行う。先程撮ったポラロイド写真を使ったプレゼンテーションシートを使いながら、作品のテーマや魅力を解説する。

|
10)スズシゲ・ラボラトリー[リミックス] 15時30分~16時30分 |
音作りの第2段階として、今度は友だちの班が作曲した音作品を「リミックス」する。この頃には子どもたちも編集ソフトに慣れ、スタッフが手伝うことも少なくなる。
先ほど、女の子たちの班が作曲した「電話に出ない・・・夏」は、わんぱくそうな男の子の手にかかれば「電話に出ない・・・マツケンサンバRemix」という、まったく雰囲気の違う曲にアレンジされる。その後、再びステージに上がり、リミックス作品のプレゼンテーションを行う。子どもたちのプレゼンテーションの腕前も堂々たるものだった。子どもたちの見事なパフォーマンスに、ワークショップに参加したすべてのスタッフ、見学に訪れた企業の人たちから大きな拍手が送られた。

|
11)エンディング 16時半~17時 |
楽しかった未来体験ワークショップも終わりが近づく。ステージ前にオープニングのときと同じように横一列に並べられた椅子に子どもたちが着席し、今日一日の感想を述べる。その後、映像スタッフがワ-クショップと同時進行で撮影・編集していたワークショップの様子を上映し、エンディングを飾る。
最後はすっかり仲良しになった全員で記念撮影。そして、子どもたちは解散して下校する予定であったが、一度別れを告げて音楽室から出ていった子どもたちが、ふたたび後片付けを始めようとしていた学生スタッフにお礼のメッセージを伝えに戻ってきた。「今日一日、ありがとうございました!」。この一言に、一部の学生スタッフの目は潤んでいたようである。

|
【体制およびスタッフ】
■主催:
慶應義塾大学経済学部 武山政直研究室
■協力:
世田谷区立砧南小学校
(株)東京海上研究所
NTTドコモ モバイル社会研究所
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)
CANVAS
■役職:
◇監修・指導 |
武山 政直 |
慶應義塾大学経済学部助教授 |
◇指導 |
河村 智洋 |
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科研究員
チャイルド・リサーチ・ネット |
◇学生スタッフ (慶應義塾大学経済学部学生)
4年生 |
伊勢 修 |
学生代表・全体進行・映像製作 |
清村 篤志 |
全体進行・映像製作 |
品田 俊介 |
全体進行・泣き笑い |
橋本 紘 |
映像記録・PR |
林 浩一郎 |
PR・泣き笑い |
吉野 哲 |
午後用プログラム企画・進行 |
3年生 |
岑 康貴 |
午前用プログラム企画責任者・進行 |
中村 薫 |
午前用プログラム企画・進行・映像製作 |
遠山 由紀 |
午前用プログラム企画・泣き笑い |
長井 亮二 |
午前用プログラム企画・泣き笑い |
窪田 浩爾 |
午前用プログラム企画・PR・泣き笑い |
高橋 航 |
午後用プログラム企画・進行 |
林 康太 |
午後用プログラム企画・泣き笑い |
川井 裕一郎 |
午後用プログラム企画・進行 |
松平 真 |
午後用プログラム企画・進行 |
飯野 八洲 |
泣き笑い |
古高 奈津美 |
泣き笑い |
佐藤 奏 |
泣き笑い |
◇社会人スタッフ |
松崎 充克 |
イベント発案・午後用プログラム企画代表・進行 |
鳥谷部 桜 |
イベント発案・午後用プログラム企画、泣き笑い |
大和田 健人 |
イベント発案・記録 |
永岡 正行 |
イベント発案・スズシゲ・ラボラトリー企画 |
波佐間 明美 |
泣き笑い・Tシャツデザイン |
永井 絵里 |
会場手配・参加児童募集・午後用プログラム企画(砧南小学校教諭) |
注)
泣き笑い:子供たちと常時行動をともにするスタッフ
PR:イベントのWebサイトおよびCD-ROMの製作
|