教育書教育力のカギ・教育評価を考える永井聖二 群馬県立女子大学教授 |
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生徒が「わかりません」と答えたら、教師はどう対応したらよいのだろうか。その答えのカギは、教育評価の視点にある。 今日、教師教育論の焦点は、一般的抽象的な「立派な教師」ではなく、具体的に「生徒をどう育てられるか」にある。どんな授業を展開し、いかなる教育的影響を生徒におよぼして、子どもを「育てる」ことができるかが問われている。 このように教師の力量形成の方向性をとらえると、教育評価の再検討は避けて通れない第一の課題となろう。今、話題になっている「生きる力」を目指すとしても、それは教育評価の見直しにつながらざるを得ない。 比較的若い世代の認知心理学者、教育方法学者が、教育評価のあり方についてさまざまに論じた『認知心理学者 教育評価を語る』は、昨今の教育評価の課題について、多面的に論じた興味深い本である。「知識獲得と評価」「思考力と評価」「理解力・表現力と評価」「学習意欲と評価」「自己形成と評価」の5部から成り、それぞれについて4人の研究者が語りかける。 教科書的な本ではないが、実践とのかかわりはかなり意識されていて、現場の教師に身近な話題が多い。共同執筆ものの常として、章ごとのトーンの違いが少し気になるが、それぞれの執筆者の得意な話題が独特な語り口で展開されるのは、むしろ楽しい。 もう一つ、梶田叡一氏の『教育における評価の理論I 学力観・評価観の転換』は、定番ながら教育評価の意味を理解するうえで、多くの示唆を与えてくれる。これは全3巻のうちの1巻であるが、著者の長年にわたる評価論の集大成である。 「評価観の転換をめぐって」「『新しい学力観』をめぐって」「授業と評価をめぐって」「目標の設定をめぐって」「自己評価をめぐって」の5章に、生活科や道徳教育などを取り上げる第6章が付されている。 能力や適性をどうとらえるか、個性化・新しい学力観、子どもの内面を読む、通知表に望むことなど、切り口は具体的だが、質的に高い内容がきっちりと示される。 結果を明らかにして、それを教師の働きかけの改善に生かすこと、それが教育評価の要諦であろう。私にとっての課題でもあるが、教育力をみがくために、教育評価について考えてみたい。 |
「認知心理学者 教育評価を語る」 | ||
若き認知心理学者の会 著 | 北大路書房 | \2,575 |
「教育における評価の理論I 学力観・評価観の転換」 | ||
梶田叡一 著 | 金子書房 | \2,800 |