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ヤングアダルト

ラブストーリーをもう一度!


増田喜昭
 子どもの本屋「メリーゴーランド」店主

 実は、ぼくは本屋でありながら、「ヤングアダルト」というジャンルをあまりきちんと理解していない。漠然と、若い人たち向けに…という感じでとらえている。まあ、ヤングではあるけれどアダルトなんだから(よくわからない説明)、少々セックスの描写があってもよいのだろう。ということで今回はぼくの大好きなラブストーリーを2冊。SF小説のなかから『リプレイ』、レオナルド・ディカプリオ主演で映画にもなった『ロミオとジュリエット』を紹介したい。

 『リプレイ』は、人生をもう一度やり直せたらいいのになあ…、俺がもっと若かったらどんなことでもできるのになあ…とぼんやり夢みている中年の男性(ぼくもそうなんだけど)にお勧めの1冊だ。

 43歳の主人公が突然死んで、気がつくと大学の寮にいた。18歳になっているのだ。身体は18歳だが、記憶と知識はもとのまま。競馬も株も思いのままで、彼は大金持ちになる。ところが、また43歳に死んでしまう。何度も人生をやり直しながら、いろんなことに気づいていく。何人もの女性に出会い結婚し、そして死んでいくのだ。戻った時代の描写も明確でおもしろいが、それでもどこかに寂しさが残っていく。読み出したら止まらない。

 中年の男性にお勧めと書いたのは、やはり男性の視点から書かれているところが多いからなのだが、途中で、もう一人女性のリプレイ者と出会うのだ。彼女は39歳から14歳に戻り続けていたのだった。同じ時代を行ったり来たりしている二人は、当然、恋に落ちるのだが、ここで興味深いのは、彼女の外見は14歳であっても中身は39歳、いろんなことを知ってはいても、法的には未成年であるということだ。次の時代で出会っても、彼は彼女を家から連れ出すことができないのである。14歳という年齢は、そんなにも不便で、思うようには生きられないのだ。

 『ロミオとジュリエット』のジュリエットも14歳である。14歳というのは恐ろしい年齢である。自分の中で何が起こるのかわからない、説明できない、そういう年齢なのだ。そんな意味で今、シェイクスピアを読む必要性を感じる。特に、この文庫の松岡和子の訳は気持ちがいい。芝居のセリフのつもりで、ややオーバーに読むと楽しい。こんなエッチなセリフがあったのかしら、と思うくらい多い。しかも、駄洒落とジョークの連発は感動的だ。

 死という壁を見据えた究極のラブストーリー2冊、あなたはどう読む?


リプレイ ロミオとジュリエット

『リプレイ』
ケン・グリムウッド 著
杉山高之 訳
新潮文庫 \743
(本体価格)

『ロミオとジュリエット』
シェイクスピア全集2
松岡和子 訳
ちくま文庫 \563
(本体価格)

株式会社 ベネッセコーポレーション ベネッセ教育研究所発刊
月刊/進研ニュース[中学版] 第241号 1999年(平成11年)5月1日 掲載


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