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●シンポジウムを終えて(CRN小林所長より)●

 サイバー子ども学研究所としてのChild Research Netが、バーチャルな場で取り上げたテーマを、リアルの場で討議しようという第一回CRN子ども学シンポジウム「中高生のデジタルな友達づくり」には、期待以上の多くの方々に御参加いただくことが出来た。主催者を代表してまずお礼を申し上げたい。

 慶應大学大学院政策メディア科石井研究室の河村さんがまとめたプリクラ、ポケベル、PHSなどによる仲間作りの実態は興味深く、考えさせられる面が多かった。プリクラ自体をデジタルといえるかどうかは別問題として、子ども達、特に思春期女性の友達作りのパターンが、プリクラばかりでなくポケベルなどにより、大きく変貌していることは事実である。

 これはマルチメディア時代に入り、新しく展開した情報環境によって現れた行動には間違いない。子ども達の仲間づくり行動はメディア環境でゆれているとみるべきであろう。従ってこの現象はメディア・エコロジーさらにチャイルド・エコロジーの問題と考えていくべきのもと思う。

 河村さんのビデオによる報告を中心に、教育学者の藤田さん、精神科医の香山さん、文化人類学者の竹村さんが、それぞれの立場からコメントをされ、お互いに討論を活発に行った。私としては次の点が印象的であった。

 何故、まず女性にこのような動きが大きくでたのだろうかという問題である。これに対しては、時代の新しい生き方をどのようにすべきかを敏感に感じ取る力は、女性に強いといえる。男の子は、どちらかというと、伝統的価値観に引か れ、収集型でありゲーム型になっているのである。しかし、男のプリクラ型の動きが、すでに地方の方から出始めている点は注目すべきであろう。

 プリクラ、ポケベル、PHSなどは当然ながら友人関係の量と質と変えている。従来の古典的なやり方から見れば、バーチャルな友人関係かもしれない。しかし、確かに言えることは量の増加である。100人以上の友達がいるといった少女が1/5もいたのである。従来のやり方ではこのような数にはならないのではなかろうか。

 こういった動きは、学校教育のあり方そのものを変える可能性があるということが指摘された。知識を個人に蓄積させて社会に出す現在の教育には限界があるというのである。知識の共有、関係の属人化がすすんでいることを考えなければならない。むしろ、自ら問題はどこにあるか、なんであるかを探し、解決する教育こそ必要なのである。

 マルチメディア時代に入り、バーチャルとリアルの関係が問題となっているが、その間にイマジナリーを入れて考えなければいけないという指摘は重要である。マルチメディアは、決してイマジナリーな力がないとは言えないのではなかろう か。

 最後に、このようにして育った子ども達が21世紀を担うのであるが、どのような社会ができるのであろうか、という問題がある。マイクロコミュニケーションで情報伝達が可動化するとともに速くなり、社会の動きもわれわれの今持つ時間でなく、web-year(3ヶ月が1年)で動くようになろうという。石井教授のこの指摘には考えさせられた。

 子ども達は、われわれ以上に時代を感じ先取りし、次の時代に生きていく用意をしている。プリクラ、ポケベルなどによる仲間作りも、「ハラッパ」史観で見ているだけでは、より良い社会がつくれないであろう。子ども達は、そもそもインフォメーション・シーカーなのである。

(CRN所長 小林 登)


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