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基調報告1 米国NICHD早期保育研究
子育ては保育にとってかわられるのか?
家族の特徴、保育において幼児が経験することと子どもたちの発達との関係


報告者:サラ・L・フリードマン博士
NICHD(国立小児保健・人間発達研究所)乳幼児保育研究ネットワーク
I はじめに

このたび、思いもよらずこうして皆様にお話することができ、大変うれしく思います。日本の保育問題について、それに関わる日本の方々と意見交換し、また本日お越しの皆様からも教わる機会をいただき、とても楽しみです。本日は、米国で行われました保育研究について報告をさせていただきます。米国と日本の事情は異なりますので、私の発表についても批判的にお聞きいただけたらと思います。日本の家庭や保育者にも当てはまる研究結果とそうでないものがあるとご理解いただければと考えております。

本日は、NICHD乳幼児保育研究ネットワークを代表してまいりました。NICHDは全米24の病院で1991年に生まれた、さまざまな背景をもつ1364人の子どもを将来にわたり長期的に調査している研究者チームです。この研究は、子どもの発達に及ぼす保育の影響を評価するために計画されました。私たちは、保育と家庭環境を子どもたちの日々の経験に基づいて様々なレベルから評価を行いました。子どもたちが直接経験する環境、また直接経験はしないが影響を及ぼす点についても、評価を行いました。多くのデータを収集しましたので、家族の特徴や育児が、保育を受けている子どもの発達にどのような効果をもたらすか、についてご報告できることとなりました。研究調査員は、10ヶ所のデータ収集地ならびにNICHDに関連し、いずれも著名な発達心理学者の方々であり、さまざまな概念的、方法論的な専門知識が結集されました。


保育を受けている子どもたちには家族がいる

発表を始めるにあたり、まず、保育を受けている子どもたちには家族がいることを思い起こしていただきたいと思います。保育を論ずる人々は、時としてこれを忘れがちです。このことを念頭に置く必要があります。

― 子どもに保育を受けさせることは、育児の一形態である
― 家族の特徴や育児から、母親と保育を受けている子どもの母子関係を予見することができる
― 家族の特徴や育児から、保育を受けている子どもの認知的並びに社会的発達を予見することができる

お気づきのことと思いますが、私は家族の特徴と(親による)育児、と一息に申し上げました。両者は同じものではありませんが、関連しています。家族の特徴には、所得や婚姻状況、母親の学歴、母親の心理的充足度や態度といった人口学的特徴が含まれます。育児というのは、子育て環境の選択、母親のセンシティビティや対応、あるいは認知的刺激を与える行動やプロセスをさします。


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