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参加者の声
パネルディスカッション「21世紀の子育てを考える」について



CRNではシンポジウム開催に伴い、参加者へのアンケートと期間限定フォーラムの開設(7月9日〜28日)を行いました。参加者の目から見たシンポジウムはどのようなものだったのでしょうか? ここでは、プログラムごとに挙げられた「声」を集めてみました。皆様からも是非声をお寄せください。お待ちしております。
▼各パネラーの報告・発言に対する感想・意見
▼全体に対する感想・意見




〜各パネラーの報告・発言に対する感想・意見〜


20代へ30代へ40代へ50代へ60代へ70代へ年代不明へ



20代の声

保育士(女性)
今井先生へ
保育士としてうなずけることが多く、現場の話が聞けてよかった。その一方で、「緩やかなグループ担当制による少人数保育」というが、実際には保育士と子どもの比率は高くなりつつある。東京都は保育関係者の給料や特殊業務手当てなど減らしている現状もある。親にとってはよりよい環境、よりよい保育園だろうが、子にとって、保育士にとっては働きづらくマイナスになっている気がする。

フリードマン先生へ
保育園は社会にとって大切だといいつつ、日本においても保育現場の給料や体制への投資が低いと感じました。


大学院生(女性)
松本先生へ
主たる養育者を母親と限定しているように受け取れる。母親がうまく育てるようサポートするのではなく、保育を社会で共有する意味を考えて欲しい?BR>

学部生(女性)
松本先生へ
0歳児保育における母親の就労が、子どもにあまり影響がないことに驚きました。


看護婦
内田先生へ
信頼する大人を通じて,子どもはコミュニケーションを確保していくということに関心を持ちました。


レターカウンセラー(女性)
内田先生へ
最近の17歳の事件などからの導入はわかりやすくよかった。そこから考えられる父親不在、母子密着などの背景から「子供の表現する力」の大切さを説いてくださり、また事例をあげてくださったことにより、さらにわかりやすかった。母親・父親・そして保育士などいろいろな人の協力のもとで子供は育つと再認識させられた。

松本先生へ
少なくとも6ヵ月まではゆったりと子育てを楽しまなくてはいけないという主旨のお話に共感した。

今井先生へ
現場の保育士さんたちの実態、また求めていこうとしていることが「担当制」などの話を通しよくわかった。

フリードマン先生へ
親業を高校生に教えるという発想の柔軟さに驚き、ぜひ実践できればいいと思った。「働く、結婚する、出産する」という人生の大きな流れを若いうちに真剣に考える時間があればよかったと思う専業主婦の方は多いと思う。


30代の声

元保育士(女性)
フリードマン先生へ
保育を受けている子どもでも、家庭で過ごす時間はとても大切な生活の時間となりうること、「いつ保育を開始するのか」ではなく、開始する際に最高の環境を整えるのが大切だということ、に関心を持ちました。


研究者(女性)
内田先生へ
発達には「愛着の成立」が不可欠である事例に関心を持ちました。


大学院生
松本先生へ
「(保育園から帰ったら)30分位でもしっかりと子どもを抱きしめてあげてください」とおっしゃってましたが、その時間がないのが働く母親の現状だと思います。


保健婦(女性)
今井先生へ
子供を抱くことの大切さに共感。子育ては、人間が一人一人に関われる大切なコミュニケーションだと思う。

フリードマン先生へ
社会では、子ども・子育ては大切だといっているが、反面、保育に対する取り組みが不充分だという社会のギャップを思い浮かべました。


会社員(女性)
松本先生へ
低年齢(低月齢)から保育を受けることが、その後の発達に悪影響を及ぼすことにはならないという話に関心を持ちました。

今井先生へ
少人数のゆるやかな担任制により、乳児の安定、愛着が生み出される、という話に関心を持ちました。

フリードマン先生へ
「保育園に預けるのに適した年齢」に答えはなく、社会の価値観に合せた保育が必要だという話。女性が働くことは歴史の前進であること。社会的な投資が保育に対してもっと必要だという話。以上に関心を持ちました。


会社員(女性)
今井先生へ
子ども0:保育者6名の担当制をとり職員間の協力をもって保育にあたることで保育士が子どもの小さな変化に気づき、予測をもって保育できる、という話に関心を持ちました。


会社経営(女性)
松本先生へ
経営者として、6ヶ月(できれば1歳)までの育児休暇の義務化には難しいものを感じます?人の人間として、彼女たちの能力を大きく評価するからです。

今井先生へ
自分の愛する人の言葉を待って、子どもはアクションを起こすという点、全く同感です。


事務職員(女性)
松本先生へ
子育て、育児休暇の取得がしやすい社会づくりへの提案に関心を持ちました。


専業主婦
松本先生へ
保育者が母親の場合と保育園の場合について、子どもの発達や行動に有意差がほとんどないことがわかりました。


40代の声

幼稚園教諭(女性)
今井先生へ
0歳児の保育士には、子供だけではなく、親も丸ごと面倒を見てくれるような保育士を担任にすることは大事なことだと思います。

フリードマン先生へ
日本のように長時間我が子を預ける場合でも、台所に立つ際に我が子を隣に置き、話しながら料理を作れば問題はないのでは?という提案は、私もそう思います。私は、母としての自覚と愛情、家族の協力が大切だと思います。


幼稚園教諭(女性)
今井先生へ
子どもが大人に合せるのではなく,大人が子どもに合せることが大切という話、職業としての保育士というより、子どものことを大切に考える保育士が必要だという話に関心を持ちました。


発達心理学者(女性)
松本先生へ
基調講演で、木氏がフルタイム就労の母のほうが子育てを楽しいと感じていると報告なさってましたが、松本先生のご提案のように、2歳まで皆が育児休暇を取れるようになったら、育児不安が高くなるかもしれないと考えました。

今井先生へ
0歳児クラスの子どもたちと親が成人するまで結束が高い、という実話は興味深く拝聴しました。


看護婦(女性)
今井先生へ
2歳児の感情の表出が自我形成上重要であるという話に関心を持ちました。


50代の声

保育士(女性)
内田先生へ
愛着を形成するうえでは母親だけに限らず、保育士との関係がうまくいけば愛着を形成することができるということがわかりました。


保育士(女性)
内田先生へ
父母と保育士のチームワーク、社会が育児の機能を持つ共生の発想に関心を持ちました。


医師(女性)
フリードマン先生へ
フロアーからの「何歳になったら保育所に入れるのが適切と考えられるか」という質問に対し、子どもの発達段階のみで判断せず、家族の状況、母親のライフスタイルで決めるべきだという氏の意見がよく理解できました。


建築設計(女性)
内田先生へ
17歳の凶悪犯罪をおこす少年たちの解析に関心を持ちましたが、少し言い切りではないかと疑問を持ちました。


60代の声

教育関係者(女性)
内田先生へ
子供の成長にとって、いかに人間的なふれあいが大切であるかということ、身体的発達が心の状態によって促進されるということがわかりました?BR>

医師(男性)
松本先生へ
松本先生のお話のように、リサーチを科学的にすることは難しく、だからと信用しなかったり、否定のできない体験の積み重ねからの意見や感覚は大切だと思います。


70代の声

会社員(女性)
内田先生へ
キレやすい子ども、犯罪をおこす子どもが持つ共通点について関心を持ちました。これからの育児で気をつけたいと思います。

松本先生へ
保育士から母親への意見をまとめたスライドが、保育園利用の私にとっては耳が痛かった。


年代不明の声

保育士(女性)
内田先生へ
家族を含めたコミュニティの「育児機能」の復権に関する提案に共感します。

フリードマン先生へ
長時間保育でも子どもとしっかり関わりをもつことができることがわかりました。また、早い段階で親になるための教育や家族を持つことの意味を教育をすることも必要だという提案に共感します。


保育士(女性)
松本先生へ
低月齢(年齢)児に集団保育が必要か?先生の考えに同感です。ただ母子が孤立しないように社会が援助していく必要は感じている。

今井先生へ
保育の質の低下には驚いていますので、私は保育園入所を勧めていません。ぜひ大学で質の高い保育をしてくれる保育士の育成をして下さい。


園長(女性)
松本先生へ
育児休暇を目いっぱい使った方が良い、という話。しかしリストラの時代、まだまだ難しい。医師には0歳児の集団保育に不安、不満な人が多いことがわかりました。


研究者(女性)
松本先生へ
「保育士の方々からお母さんに対する意見」のスライドには考えさせられるものがありました。

今井先生へ
保育園の現場や子育て経験の実感に基づいたご意見にはとても説得力がありました。もしこれから子供を保育園に入れる時は、グループ担当制のところにしたいと思いました。


レターカウンセラー(女性)
内田先生へ
家族を含めたコミュニティの「育児機能」の復権について関心を持ちました。

今井先生へ
質の高い保育について、とくに本当に自分を愛してくれる人のことばを通して、ことばを覚えていくという話に関心を持ちました。


(女性)
内田先生へ
虐待を受けた子供の発達には興味深かった。母親(保育者)の愛着が子供の成長に大きく影響するのだと良くわかった?BR>



〜パネルディスカッションやシンポジウム全体に対する感想・意見〜



20代の声

幼稚園教諭(女性)
 価値観が多様になっている今、働く女性に対するいろいろな見方があり、女性は本当に悩むことが多いと思うが、女性が働く働かないは問題ではない気がする。自分の子どもにどれだけ愛情をもって、自信をもって、子育てをしっかりやってます、といえるかどうかが問題だと思う。家族と共にどれだけ協力しあってやっていくか。いろんな人がいて、いろんな事情があるにもかかわらず、それを批判する人がいるから女性はつらいのだけど、そんなの無視。いっぽうで、子どもにとって母親とはかけがいのない存在、代わりのいない存在であると思う。仕事や何かでの自己表現もすばらしいけれど、きっと子育ても子どもを産むこともすばらしい体験であり、自己表現であると思う。そのことを忘れてはいけないと思った。


30代の声

大学院生(女性)
 フリードマン氏の研究は「乳幼児の育児に道具として保育所を利用する場合、その質と子供の発達、親子関係にどう影響するか」というものであり、「母親と保育所のどちらがよいか」という結論を導き出すものではない。しかしながら、研究の本来の目的に対する質問より、「結局、母親が保育するのが一番良い」ということを前提として出された質問に貴重な時間を取られてしまったことが残念だった。


医師(女性)
 フリードマン氏のデータを基にした発表については納得できた。しかしこの結果を「母親が乳幼児の育児をする必要がない」「三歳児児神話の否定」と短絡的にとってしまう傾向があるのかもしれない。本質的な彼女の報告結果は、「乳児の発達のためには、養育者、家族の特・母親のセンシティビティ)がもっとも重要である」ことを示したに過ぎないことを意識すべきではなかったのか。
 私はランチトークで氏に研究の今後についてたずねてみた。前思春期〜思春期〜青年期(18歳)までは、自我の形成やアイデンティティの確立、社会適応、親子の関係などは発展して、みんな関係するものだからである。氏は予算さえおりれば追跡調査を18歳までやってみたい、と話していた。
 フリードマン氏の他のパネラーとの大きな違いは、彼女の育児に関する合理的で本質的な思考とリスクや必要度のバランス感覚が優れていることである。会場からの質問に対しては、「女性が働く時代の流れは必然で、そのために、よいチャイルド・ケアの条件を求めていく」という答えが印象的であった。
 一方、松本氏は小児科医師であり、いわば「子供のために働くプロ」なのである。彼の価値観は「子どもにより良い発達、健康のための条件を用意するために、親や国は何をすべきか」でありこの視点から発表がされていた。彼の結論は、乳幼児を預けて働く母親には葛藤を起こさせたかもしれないが、このような健康上のリスクがあることを現実として知っておくことも大切だろう。
フリードマン氏の発表と松本氏の発表を聞いた参加者は混乱した面もあった。両者の立場の違いを司会者はコメントして整理してもよかったのでは。
 今井氏の発表は「良質の保育」の具体例を発表して希望がもてた。気になったのは、「保育の担当制が問題のある母親やその子を救う」といった「万能感」を前面に強調し、「問題のある(センシティビティの低い)母親」の本質についての説得力のある説明がなかった。全国どこでも、資質に富んだ保育士が、積極的に母親に良い作用をしてくれているとよいのだが。内田氏については「愛着がヒトの発達の内的ワーキングモデルになる」ということを、虐待という極端なモデルで示しインパクトがあった。そして母親以外であっても、子どもの愛着の対象が確立されるなら問題がない、という結論も示していた。しかし最後の提案で、「母性の復権」を見た時、全体として言葉足らずのような気がした。
今後の育児について。今の「働く母」「働きたい母」たちは乳幼児の育児が最も心配ごとで、そのためにもっと社会基盤の整備(保育所などや法律)をすすめよう!と簡単な結論には出来ないものを感じた。今の日本では、家族の絆の喪失、母性、父性の喪失が指摘されているが、社会基盤の整備のみでこの問題に答えられることは無理だろうし、子どもの不登校やこころの病気、少年の凶悪犯罪、倫理の低下は改善しないだろう。
 日本の母親たちは「主婦専業で育児をすること」イコール「社会から取り残される不安、損なこと」という意識をどこか抱えていないだろうかとも感じた。「働くことに対するモチベーション」が、母親センシティビティに相関しているとフリードマン氏が指摘していたが、この点、今の日本では未成熟のように思う。(米国のワーキングマザーとは自己実現や職業意識に大きく差があるように思う。)そして男女の評価、機会も平等とは言えず、悪循環である。
 今の女性は「働くことも、働かないことも、子どもを産み、育てることも自分の選んだこと」と胸を張れるのだろうか。「専業主婦」「働く母」なんて二分法はやめて、パートナーやこどもを含めたライフスタイルと自己実現の意識をもってほしい。
 さらに社会基盤としては、子どもの心理的問題を扱う機関や専門家(カウンセラーや児童精神科)を増やすことや、虐待やいじめなどの家族や学校での危機への介入を有効にできるよう、子どもへの支援体制の整備も考えて欲しい。


会社員(女性)
 社会の構造を変える点について。延長保育や病時保育は働く母親である私でさえ賛成しかねる。企業社会のあり方を変えていくことが本当の子どもの立場に立った育児支援ではないでしょうか?会社員の私には、なかなか得ることのできないデータや情報、そして専門の方々の意見を聞くことができ大変有意義な一日でした。「子育て支援はこうあって欲しい」という要望をするためには、現在の保育園のネガティブな部分も知る必要があり、そういう点からも得るものがありました。また、小児科医の早期保育に対する懸念がうかがえました。小児科の先生の意見や文献、データなどが得られるコーナーがあれば良いなと思います。


事務職員(女性)
 子育てをしている当事者である母親からの発言がなかったのは残念です。パネラーの先生方の発表は理想論ではあるが、実現するにはまだまだ時間と社会的な体制が足りないと思う。現実には、保育所の入所は待機であったり、たとえ入所してもお迎えの時間までに仕事を終えることができない、病気になったらどうする? といった問題が母親にとっては切実です。本日議論されたことが、今後に展開、発展していくことを希望します。


フリーライター(女性)
 後半のディスカッションは、白熱してよかった。「保育園2歳適齢期説」はなかなか新鮮。「恐怖の2歳児」の時期の子育てを母親だけで抱えなくてよくなると、ずいぶん問題は減るかもしれません。


パートタイム(女性)
 これだけ「早期保育に問題はない」といっているこの会場で、「保育園に何歳から入れるのがベストか」という質問が出たことに驚いた。やはり多くの人は子どもの犯罪の低年齢化と早期保育を結び付けてしまうのだろうか?母親たちの本当の気持ちを理解せず、数年間家に閉じ込めて育児だけしていろといわれるのは大反対です。


40代の声

幼稚園教諭(女性)
 母親の子育ての質がいかに重要であり、それが人格形成にどのように影響するかを具体的に知ることができた。子育てを、全て他人である保育機関に任せたら、世の中は必ず乱れると思う。やむなく働かざるを得ない母親のためには、質のよい保育機関も必要だと思う。ただ、働け働けというのは間違いだと思う。
 働く母親のためには、保育園は不可欠だが、できることならば一番手のかかる大変な時期には肉親である母親が大部分の子育てを担当すべきだと思う。その際生じる子育ての不安を和らげ、手助けすることには賛成である。中心は母であり家庭であるべき。


看護婦(女性)
 今後、保育園における保育が子育てにどのような役割を担っていかなければならないのか、また入園していない地域の母と子に対する支援のあり方について、大きな指標を示していただいたように思います。


公務員(女性)
 0歳児保育のあり方についてディスカッションしてほしかった。医師には「乳幼児は家庭で」との認識が強いようだが、現在問題になっている高校生は家庭で幼育された人が大半だと思う。問題指摘をするのであれば、きちんとしたデータを示して、主張して欲しい。もしかすると、家庭で母子のみの生活を送っていることが問題であるかもしれないですし。働く母親の支援だけでなく、専業主婦も含めた母親の支援が、今極めて重要になっていると思う。
 普通の主婦も虐待傾向に陥ってしまうなどの明らかなマイナス面や公園デビューなど過剰なエネルギーを子育てに費やさざるを得ない状況をみると。質の高いチャイルド・ケアを利用することは、子どもにとっても親にとってもプラスになると思う。


50代の声

園長(女性)
 子育て支援の態勢を前向きに進めていくには、どのようなメンバーで、どう内容を深めるべきであるのかについて掘り下げてほしかった。また、保育士の労働条件の改善についても検討したかった。


60代の声

医師(男性)
 保育士さんの質を高めることを第一にしてほしい。偏差値では必ずしも評価できませんが、今の保育士養成校の偏差値は低すぎると思います。もちろん立派な保育士さんもいますが、危なげな人もたくさんいます。ただし、知的なことよりやさしい心の持ち主であることが第一条件です。地域における小児科医、保育士、保健婦などの研修のあり方の参考にさせていただきました。東京だけでいいことしても日本は良くなりません。日本すみずみまで質を高めることが大切ですからね。


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