1.サンプル概要


1)今回の国際比較調査は、1988年、1990年に次いで3回目である(表1・2・3)。 今回は、とくに福祉の先進国スウェーデンおよび厳密な一人っ子政策が 実施されている中国の子どもの成長を明らかにすることがわれわれの主たる 関心であった。その結果とあわせて、これまでに得られた韓国、台湾、タイ、 ニュージーランドの子どもたちの調査結果をも参照しながら、広く今日の 子どもの成長の上に起こりつつある問題を探ることをねらいとしている。

表1 サンプル構成(第3回国際比較調査) (人)
地域名 サンプル構成  合計   男子   女子 
東 京 東京・札幌・仙台・名古屋 1,758 904 854
ハルビン ハルビン・シンヨウ 522 258 264
サクラメント サクラメント 542 267 275
ストックホルム マルメ・カールスクルーナ 624 312 312


表2 サンプル構成(第1・2回国際比較調査) (人)
地域名 サンプル構成  合計 


東 京 東京・仙台・岡山 3,057
シアトル シアトル・ヒューストン 951
ソウル ソウル 1,445
タイペイ タイペイ 694


東 京 東京・札幌・福岡 1,282
ロ ス トーランス・ガーディナ 376
オークランド* オークランド・ウェリントン 1,046
バンコク バンコク・ロブリー 864
*オークランド(ニュージーランド)=以下同

表3 調査時期 
地域名 実施時期


東 京 1988年6月〜7月 
シアトル 1988年5月
ソウル 1988年6月
タイペイ 1987年12月


東 京 1989年10月〜12月
ロ ス 1990年2月〜4月
オークランド 1989年12月〜3月
バンコク 1990年3月〜4月


東 京 1992年5月〜6月
サクラメント 1992年5月〜6月
ハルビン 1992年3月
ストックホルム  1992年5月〜6月




2)今回のサンプル構成は表1の通りである。これまでと同様、小学校5年 生を対象とし、4か国にまたがる9都市の約3,400名にアンケート調査が 行われた。今回新たに、スウェーデン語版、北京語版の調査票が作成されたが、 その作成と調査の実施にあたっては、東海大学北欧文学科の山下泰文氏と 東京学芸大学大学院生・武素元、李力氏および現地の研究者や小学校の先生 など多くの人びとの協力を得た。



2.家庭を手がかりに


1)家族

(1)

 どの地域も家族は小型化し、小子化傾向にある。しかしアジアでは 祖父母との同居率が高く、親と同室で寝ている子の割合も高い。 (表4・5・6・7・8)。

表4 子どもの数  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
1人 9.9 91.2 10.2 2.3
2人 55.0 8.8 42.4 52.4
3人以上 35.1 0.0 47.4 45.3
太字=最大値(以下同)

表5 家族の人数  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
2人 1.8 0.0 16.3 5.2
3人 9.1 80.3 35.6 14.5
4人 44.8 14.5 22.2 48.5
5人以上 44.3 5.2 25.9 31.8


表6 祖父母との同居率  (%)
東 京24.3
ハルビン18.6
サクラメント8.4
ストックホルム 3.1


表7 子どもの数と家族 
東京 ハルビン サクラ
メント
ストック
ホルム
オーク
ランド
バンコク ソウル タイペイ
子どもの数 2.2人 1.1人 3.2人 2.4人 3.2人 2.9人 1.9人 3.0人
家族サイズ 4.5人 3.5人 3.7人 4.0人 4.6人 5.3人 4.8人 5.3人
祖父母との同居率 24.3% 18.6% 8.4% 3.1% 9.4% 26.5% 23.1% 29.6%
太字=最大値 斜字=最小値 (以下同)

表8 誰と寝ているか  (%)
1人で 兄弟と 親と その他
ストックホルム  89.1 7.9 1.7 1.3
サクラメント 65.3 29.4 3.3 2.0
オークランド 60.7 31.8 2.2 5.3
ハルビン 60.0 4.4 33.5 2.1
タイペイ 36.2 47.7 11.3 4.8
東 京 32.3 37.8 22.6 7.3
バンコク 24.3 39.0 33.6 3.1
サクラメント 22.9 41.7 31.9 3.5




(2)

 サクラメントでは朝ご飯の欠食率が高く、朝から学校給食を 利用する子もいる。屋台で食事する習慣のあるバンコク、タイペイ では自宅外で朝食をとる子がいるが、サクラメントとは事情が違う。 西欧文化圏の国々の子のデータの中に家庭の不安定さの影が見える。
 それに比べると東京の家庭の朝の食卓は健康だが、夕食を家族全員 で食べる割合は8地域の中で最低で、父親だけが不在の食卓は39%、 ソウルの29%と共に他を抜いて高く、世界からの働きすぎの指摘を 思い出す。夕食の孤食率はストックホルムとオークランドに高い。
 なお、東京やソウルの孤食率も比較的高いが、これは家庭の問題で はなく通塾が影を落としているのであろう。(表11・12・15・16)

表11 朝食の場所 −昨日−  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
自分の家 97.7 98.2 79.6 94.2
通学しながら 0.2 0.0 2.6 0.2
店で 0.5 0.0 0.6 0.0
学校で 0.2 0.6 4.6 0.3
食べない(欠食)  1.4 1.2 12.6 5.3


表12 朝食の様子  (%)
 欠食率   孤食率  自分の家で
食べた割合
 給 食 
その他
サクラメント 12.6 32.9 79.6 7.8
東 京 1.4 18.6 97.7 0.9
ハルビン 1.2 24.5 98.2 0.6
ストックホルム  5.3 34.3 94.2 0.5
オークランド 8.0 38.6 89.5 2.5
バンコク 3.5 36.8 84.2 12.3
タイペイ 1.7 18.2 84.6 13.7
ソウル 5.1 15.0 93.9 1.0


表15 夕食の様子  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
1人だけで 4.6 3.3 4.6 10.5
家族全員 40.7 75.4 77.4 64.7
父親のみ不在 39.3 16.6 8.5 13.4
その他 15.4 4.7 9.5 11.4


表16 夕食の様子(まとめ)  (%)
孤食率 全員で 父親のみ不在
東 京 4.6 40.7 39.3
ハルビン 3.3 75.4 16.6
サクラメント 4.6 77.4 8.5
ストックホルム  10.5 64.7 13.4
オークランド 8.2 65.9 12.6
バンコク 7.1 67.4 17.8
ソウル 5.0 55.2 29.4
タイペイ 1.7 73.5 16.6
太字=最大値と2位



2)子どもの放課後

(1)

 ハルビンを除いては複数テレビの時代が来ている。視聴時間は ストックホルムとサクラメントが2時間を超え、逆にハルビンは 22分と今の時代では考えられないほど少ない。そのハルビンですら、 昨日テレビを見た子は6割に達するが、しかし一人っ子の社会にも かかわらず「毎日見る子」が25%と低いのはなぜだろう。 (図4、表18・19・20・21)

図4 昨日テレビを見た子  (%)



表18 テレビの所有台数  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
1台 15.7 67.7 12.6 12.2
2台 41.5 29.4 26.2 48.1
3台 22.8 1.5 29.8 26.9
4台 12.4 1.0 18.4 8.8
5台以上 7.6 0.4 13.0 4.0


表19 昨日のテレビ視聴時間 
平均時間 (見た者について)
1時間以下 4時間以上
東 京 1時間38分 41.1 11.0%
ハルビン 22分 66.8  1.2 
サクラメント 2時間14分 19.7  20.2 
ストックホルム  2時間23分 24.6  9.4 
オークランド 2時間42分 30.1  22.0 
バンコク 2時間25分 24.7  12.7 
ソウル 1時間41分 ── ──
タイペイ 1時間44分 ── ──
太字=最大値と2位

付表 昨日のテレビ視聴時間30分以下  (%)
東 京 33.3 
ハルビン 48.4 
サクラメント  9.6 
ストックホルム  13.1 


表20 テレビの視聴(週当たり)  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
毎日見る 67.3 25.1 72.2 84.7
だいたい見る 22.3 26.9 10.1 9.6
半分くらい見る 6.3 19.2 8.3 4.3
見ない日のほうが多い 3.2 8.4 2.6 0.6
ほとんど見ない 0.9 20.4 6.8 0.8


表21 テレビの所有台数と視聴時間(まとめ) 
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
1台 15.7% 67.7 12.6% 12.2%
2台 41.5  29.4  26.2  48.1 
3台以上 42.8  2.9  61.2  39.7 
視聴時間 1時間38分 22分 2時間14分 2時間23分
毎日見る割合 67.3% 25.1 72.2% 84.7
昨日テレビを見た子 90.1% 61.3 87.4% 95.1




(2)

 放課後に友達と遊ぶ子は、日本ばかりでなく、どこでも少ない。 多くてサクラメントの5割、ストックホルム3割、ハルビンでは 15%でしかない。ストックホルムでは、昨日友達と遊んだ子でも、 小人数としか遊んでいない。予備調査で、ストックホルムの校長が 「テレビゲームの流行に親が無関心で困る」と嘆いていたのを 思い出す。子どもの健全育成問題も今や地球規模になっていること を思わせられる。(図2・3)

図2 昨日、下校後に友だちと遊んだか
    −遊ばなかった子の%−




図3 何人と遊んだか(自分以外に)  (%)





(3)

 手伝いをしていないのは、東京とストックホルムの子である。 東京以上に勉強しているソウル、一人っ子で過保護のハルビンで すら、東京の子よりは手伝っているのに。(表22)

表22 家事の手伝い(毎日する割合)  (%)
東京 ハルビン サクラ
メント
ストック
ホルム
オーク
ランド
バンコク ソウル タイペイ
洗濯 1.7 3.5 6.5 1.0 4.4 9.7 3.2 2.1
夕食の買い物 2.4 6.4 7.1 2.4 7.3 8.5 10.2 8.9
庭や玄関の掃除 2.7 6.0 3.6 1.3 3.2 11.3 ── ──
部屋の掃除 4.3 17.8 19.3 4.5 19.3 22.0 30.3 11.0
皿洗い 5.0 18.6 13.4 4.3 31.0 28.1 7.5 5.8
夕食の手伝い 6.4 4.5 15.8 2.7 13.7 7.6 6.6 7.6
──=質問項目なし(以下同)




3)親子関係

(1)

 ハルビンの親子関係には、一人っ子問題が如実に現れている。 自分のことを親が心配してくれると感ずる割合は、ハルビンが最高で、 ストックホルムが最低である。例えば風邪で熱が出たとき、「親が とても心配してくれる」と答えた子はハルビンで83%、ストック ホルムではわずか17%である。(表25、図6)

表25 親が心配するか  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
けんかをして
元気がない
  ┌とても
心配┤
  └かなり
 13.2 

 25.7 

 26.8 

 34.3 

 14.4 

 21.3 

 11.4 

 24.3 

小計 38.961.135.735.7
食欲がない   ┌とても
心配┤
  └かなり
 15.3 

 29.5 

 41.9 

 35.5 

  6.5 

 11.4 

  4.8 

  7.2 

小計 48.877.417.912.0
帰りが遅い   ┌とても
心配┤
  └かなり
 22.6 

 35.1 

 76.7 

 12.7 

 28.5 

 21.7 

 15.7 

 23.9 

小計 57.789.450.239.6
風邪で熱が出
  ┌とても
心配┤
  └かなり
 41.6 

 37.2 

 83.3 

  9.6 

 34.7 

 36.9 

 17.4 

 31.8 

小計 78.892.971.649.2


図6 親が心配するか  (%)





(2)

 物質的な過保護ぶりもみられ、食べたいおかずについて親が 自分のわがままを「きっと聞いてくれる」と答えた子は、ハルビン 39%、ストックホルム17%である。ただし、これらの項目には、 経済レベルや文化の問題も関わっていそうである。(表26、図7)

表26 親はどうしてくれる  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
友だちの持
ち物をほし
いと言った
買って
くれる
きっと
たぶん
 11.0 
 37.8 
 13.1 
 51.6 
  8.0 
 24.1 
  6.4 
 38.3 
小 計 48.864.732.144.7
食べたいお
かず
作って
くれる
きっと
たぶん
 30.5 
 52.3 
 38.9 
 51.3 
 20.7 
 55.1 
 17.0 
 59.6 
小 計 82.890.275.876.6
誕生日のご
ちそう
作って
くれる
とてもたくさん
いつもより
やや多く
 52.4 
 36.4 
 60.0 
 33.9 
 49.4 
 34.8 
 57.2 
 28.0 
小 計 88.893.984.285.2
誕生日のプ
レゼント
くれる とてもよいもの
わりとよいもの
 56.1 
 30.1 
 10.7 
 41.1 
 73.4 
 21.2 
 67.3 
 31.1 
小 計 86.251.894.698.2


図7 親がしてくれるか  (%)





(3)

 父母の評価については、西欧文化圏では調査がむずかしいため、 東京とハルビンのみで比較した。父母ともにハルビンの子どもの 両親評価は信じられないほど高い(表27、図8)。

表27 父母の人柄(東京−ハルビン)  (%)
父 親 頼れる やさしい 頭がいい 尊敬できる あたたかい
東 京

 ハルビン 

50.0

60.7
42.8

71.8
41.8

66.9
38.4

72.9
37.6

74.6

母 親 頼れる やさしい 頭がいい 尊敬できる あたたかい
東 京

 ハルビン 

50.8

70.4
44.4

92.8
29.8

62.0
38.6

82.2
45.9

87.1
「その通り」の割合


図8 父母の人柄  (%)



またハルビンでは父親より母親が「やさしい、あたたかい」等 の母親特性ばかりでなく、「頼れる、尊敬できる」等のどちら かといえば、父親特性に関しても高い評価を与えられている。 「頭がいい」もほぼ数値は同じである。東京の両親評価もかな り接近しているが、「頭がいい」のは断然父親と思われており、 社会が性役割から抜けきれていない状況が反映している。(表28)

表28 父母の人柄(父親−母親)  (%)
頼れる やさしい 頭がいい 尊敬できる あたたかい
東 京  父親 

 母親 

50.0

50.8

42.8

44.4

41.8

29.8
38.4

38.6

37.6

45.9
ハルビン  父親 

 母親 

60.7

70.4
71.8

92.4
66.9

62.0

72.9

82.2
74.6

87.1
「その通り」の割合




(4)

 人間関係の中で、受け入れられない感じを強く持っているのは 東京の子である。親>先生>友だちという順で受け入れ感があるの は両地域とも共通だが、ハルビンの子は人間関係の中での安定感が 大きいと推測される。(表29、図9)

表29 子どもの人間関係  (%)
東 京 ハルビン
友だちから嫌われて
いる
いつもそう思う   4.4    1.4 
わりとそう思う   6.5    3.4 
たまにそう思う  26.3   14.6 
あまりそう思わない  35.9   22.1 
まったくそう思わない  26.9   58.5 
先生がかわいがって
くれない
いつもそう思う  11.0    2.7 
わりとそう思う   7.3    3.1 
たまにそう思う  15.6   13.1 
あまりそう思わない  33.6   17.1 
まったくそう思わない  32.5   64.0 
親がかわいがってく
れない
いつもそう思う   3.6    2.0 
わりとそう思う   5.0    1.1 
たまにそう思う  12.2    4.4 
あまりそう思わない  26.7    6.9 
まったくそう思わない  52.5   85.6 


図9 人間関係の中で  (%)





4)性役割

 これまで2回の調査からも言えることだったが、東京の女の子たちは なぜか他に類のないほど性役割を強固に受け入れている。

(1)

 表45は男子の手伝い率を女子の手伝い率で割って算出した性役割 受容指数だが(注:指数が100を超せば男子のほうが手伝っており、 100を切れば女子がより手伝っている)、ストックホルムでは「部屋 の掃除、皿洗い、夕食の手伝い」で指数が100を超え、これらの手伝い を毎日する子は、男子に多い。ハルビンの男子は「夕食の買い物、部屋の 掃除、夕食の手伝い」をよくしており、その他も指数は100に近い。 サクラメントでは「庭や玄関の掃除」が専ら男子の仕事なのかもしれない。 しかし東京の指数は40台から80台までで、100を超える項目は 1つもない。その指数の低さ(女子のみが手伝っている状態)は異様に 感じられる。(表45)

表45 家の手伝い×性差  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
男子 女子 男子*/女子 男子 女子 男子/女子 男子 女子 男子/女子 男子 女子 男子/女子
洗 濯 5.8 10.7 54.2 15.7 16.7 94.0 18.4 24.1 76.3 2.9 4.0 72.5
夕食の買い物 15.8 21.3 74.2 39.8 33.9 117.4 31.2 35.8 87.2 7.7 8.4 91.2
庭や玄関の掃除 13.6 15.8 86.1 19.4 23.3 83.3 33.3 8.6 387.2 11.7 25.9 45.2
部屋の掃除 21.2 28.5 74.4 54.4 52.9 102.8 40.7 46.1 88.3 31.6 20.9 151.2
皿洗い 12.7 29.8 42.6 46.8 53.8 87.0 25.5 39.2 65.1 25.1 13.7 183.2
夕食の手伝い 17.7 39.1 45.3 16.9 9.7 174.2 31.2 38.1 81.9 19.3 15.2 127.0
「毎日+わりと」する割合
太字=指数が100を超える項目
*男子/女子×100





(2)

 自己評価も同様で、「とてもあてはまる」の数値を用いて自己評価の 性差を検討してみると(注:指数が100を超えれば女子のほうに評価が 高い)、ストックホルム、サクラメントでは男子よりむしろ女子が自分に 自信をもっており、ハルビンの子もそれに次ぐ。ストックホルムの女子は 男子より「スポーツがうまく、勇気があり、人気があって、勉強ができて、 親切」、サクラメントの女子は「スポーツのうまさと勇気の点では男子に かなわないが、親切で、正直、よく働き、勉強も同じくらいできる」、 ハルビンの女子は「スポーツは男子にかなわないが、親切で、正直で、よく 働く、勇気もそれほど劣らない」、しかし、東京の女子はあらゆる面で、 男子に比べ自信がない。とくに勉強の面での指数は38にすぎない。 ストックホルムの128、サクラメントの101、ハルビンでも低いとは いえ、61である。東京の女の子はどうしてこんなに自信がないのか。(表47)

表47 自己評価×性差  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
男子 女子 女子*/男子 男子 女子 女子/男子 男子 女子 女子/男子 男子 女子 女子/男子
スポーツのうまい子 20.4 9.8 48.0 29.7 13.4 45.1 59.8 24.0 40.1 15.9 38.9 244.7
人気のある子 12.4 5.8 46.8 17.9 12.3 68.7 32.3 22.2 68.7 10.8 19.2 177.8
勉強のできる子 9.4 3.6 38.3 14.6 8.9 61.0 33.9 34.3 101.2 17.4 22.2 127.6
正直な子 11.2 7.9 70.5 44.9 52.0 115.8 35.8 39.1 109.2 30.6 27.7 90.5
親切な子 13.1 10.1 77.1 49.5 52.0 105.1 33.1 41.8 126.3 30.5 36.0 118.0
よく働く子 17.6 10.1 57.4 40.7 47.1 115.7 41.4 43.1 104.1 23.2 19.7 84.9
勇気のある子 19.1 14.8 77.5 39.7 23.7 59.7 48.5 29.6 61.0 24.1 39.2 162.7
「とてもあてはまる」する割合
太字=指数が100を超える項目
*女子/男子×100





(3)

 将来の見通しに関しても同様だ。(表48)。100を超える 指数は東京にはまったくない。ストックホルムとサクラメントは4個、 ハルビンでも2個の項目で100を超えている。とくにストックホルム の女子は、男子より「金持ち、有名人になる、仕事で成功する」と 強く思っている。サクラメントでは男女差が少なく、ハルビンの女子は 「皆から好かれる、よい親になる」点で男子を超えている。
 東京の女子は、ストックホルムの女子が355、278と高い指数を 示した「金持ち、有名人になる」の項目がとくに低く、37、31で あり、その他の項目でも数値は最低である。

表48 将来の見通し×性差  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
男子 女子 女子*/男子 男子 女子 女子/男子 男子 女子 女子/男子 男子 女子 女子/男子
皆から好かれる人 16.5 7.7 46.7 49.1 61.8 125.9 39.3 42.4 107.9 29.9 35.4 118.4
よい父(母)親になる 30.1 22.6 75.1 56.4 66.4 117.7 73.1 79.4 108.6 63.0 61.8 98.1
有名人になる 16.4 5.1 31.1 35.2 27.8 79.0 35.0 21.5 61.4 10.1 28.1 278.2
お金持ちになる 18.2 6.7 36.8 7.8 4.6 59.0 46.4 29.7 64.0 8.2 29.1 354.9
仕事で成功する 24.7 13.1 53.0 67.5 51.9 76.9 29.1 33.2 114.1 21.1 34.0 161.1
しあわせな家庭を作る 42.0 39.4 93.8 71.3 66.1 92.7 66.7 67.4 101.0 72.6 70.8 97.5
「きっとそうなれる」する割合
太字=指数が100を超える項目
*女子/男子×100





(4)

 将来の結婚観もきわめて保守的で(表43・44、図24・25)、 「結婚後も仕事を続ける」とする女子は、わずか32%、ハルビン85%、 ストックホルム82%、サクラメント67%と比べて極めて低く、男子 の保守的結婚観という受け皿に支えられている。結婚後に共働きの妻を 望む男子は、ハルビン86%、ストックホルム72%、サクラメント 53%に比べ、わずか36%でしかない。働くことが、必ずしも生きがい のためではなくて経済条件が関与しているとしても、これでは東京の 意欲的な女子にはつらいだろう。

表43 女子の結婚観(女子)  (%)
結婚しても
仕事を続ける
結婚したら
仕事をやめる
子どもを
持たずに働く
東 京 32.261.26.6
ハルビン 84.80.015.2
サクラメント 67.421.611.0
ストックホルム  82.37.94.7
(ストックホルムは「結婚しない」が5.1%)


表44 男子の結婚観(男子)  (%)
結婚しても仕事
を続ける人と
結婚しても子どもを
持たずに働く人と
結婚したら仕事
をやめる人と
東 京 36.33.260.5
ハルビン 85.69.64.8
サクラメント 53.48.338.3
ストックホルム  71.72.319.2
(ストックホルムは「結婚しない」が6.8%)


図24 女子の結婚観(女子)  (%)



図25 男子の結婚観(男子)
    (……人と結婚したい)  (%)






3.学校の機能を中心に


1)学校生活

(1)

 朝、学校へ行きたくないと思う割合は、西欧文化圏の子に多く、 アジアの子には少ない。東京の子はちょうどその中間にいる。(表30、図10)

表30 朝、学校へ行きたくない  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
そう思う いつも 10.10.719.314.3
わりと 8.40.916.018.2
たまに 34.613.334.233.1
そう思わない あまり 22.310.918.424.6
まったく 24.674.212.19.8


図10 朝、学校へ行きたくない  (%)

*1 (92)=1992年調査、*2 (90)=1990年調査 以下同


 また一日の楽しさを学校生活の中で探ってみれば、表23に示した ように、昼休みと体育の授業がどの地域でも楽しいと感じられており、 算数の授業や宿題は共通に下位にある。しかしその中では、ハルビン の子の算数、宿題の位置が比較的上位にあるのが目をひく。学校がま だ子どもにとって価値と魅力を持っている社会なのであろう。

表23 一日の楽しさ  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
70%   昼休み (71.3)    
60% 放課後友だちと
遊ぶとき

昼休み

(67.7)


(65.8)

体育の時間 (66.1)    
50% 体育の時間 (54.3)   昼休み

夜ねむっている
とき

放課後友だちと
遊ぶとき

(59.5)

(55.3)


(54.8)

夜ねむっている
とき

放課後友だちと
遊ぶとき

(54.2)


(53.4)

40% 家でテレビを見
るとき
(44.5) 放課後友だちと
遊ぶとき

算数の時間

夕食後父母と話
すとき

家でマンガを読
むとき

家でテレビを見
るとき

(48.7)


(44.1)

(41.9)


(41.7)


(41.3)

家でテレビを見
るとき

体育の時間

(46.3)


(45.5)

体育の時間 (43.0)
30% 給食のとき

家でマンガを読
むとき

(35.6)

(33.8)

給食のとき (34.6) 給食のとき

夕食のとき

(37.6)

(35.1)

昼休み

家でテレビを見
るとき

(35.8)

(32.2)

20% 夜ねむっている
とき

夕食のとき

夕食後父母と話
すとき

夜ふとんに入る
とき

(29.5)


(27.2)

(26.2)


(25.0)

宿題するとき

夜ねむっている
とき

夜ふとんに入る
とき

授業の始まる前

(29.5)

(28.5)


(21.8)


(20.8)

夜ふとんに入る
とき

家でマンガを読
むとき

夕食後父母と話
すとき

(26.0)


(24.9)


(23.1)

家でマンガを読
むとき

夕食後父母と話
すとき

(24.1)


(20.6)

10% 授業の始まる前

算数の時間

(15.5)

(12.7)

夕食のとき (18.6) 朝食のとき

算数の時間

授業の始まる前

宿題するとき

(19.3)

(19.1)

(14.1)

(10.1)

夜ふとんに入る
とき

朝目がさめたと

給食のとき

夕食のとき

(18.8)


(17.5)


(17.3)

(15.3)

0% 朝食のとき

朝目がさめたと

宿題するとき

(7.4)

(6.2)


(3.3)

朝食のとき

朝目がさめたと

(7.1)

(5.1)

朝目がさめたと
(8.5) 朝食のとき

算数の時間

授業の始まる前

宿題するとき

(8.7)

(8.7)

(5.7)

(1.9)

「とても楽しい」割合




(2)

 勉強時間に関しては、アジアの子が長く西欧文化圏の子が短い(表31、図12)。

表31 勉強時間  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
0分 1.01.01.83.9
1分〜30分 46.92.38.538.1
31分〜1時間 20.016.421.030.3
1時間1分〜1時間30分 16.623.230.218.4
1時間31分〜2時間 5.719.311.13.4
2時間1分〜2時間30分 4.117.011.82.5
2時間31分〜3時間 1.56.32.82.1
3時間1分以上 4.214.512.81.3
平均勉強時間 58分 2時間6分 1時間42分 1時間3分


図12 平均勉強時間 



東京は92年調査で58分と短いが、とびぬけて高い通塾率(図13)を 勘案しなければならない。

図13 けいこごと 



勉強机の有無(図11)をみると、東京が97%と高率であり、勉強への 集中が浮かび上がる。西欧文化圏の子の勉強机の所有率の低さは、貧しさ の反映ではなく、いわば文化の問題だろう。

図11 勉強机と持っているか  (%)





2)自己像

(1)

 自己像をみると、全体としてサクラメント、ハルビンの子の自己像が 明るく、東京の子のそれは暗い。ハルビンの子が「正直、親切、よく働く」 の側面で高いのは、社会の持つ価値観の特質であろう(表39、図20)。 こうした自己像の内容は子どもの中にある将来像にも反映すると予想される。

表39 自己評価  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
勉強のできる子 6.511.734.019.7
人気のある子 9.215.027.214.9
正直な子 9.648.637.528.8
親切な子 11.650.937.533.2
よく働く子 14.044.042.221.3
スポーツのうまい子 15.321.441.627.6
勇気のある子 17.031.538.931.7
「とてもあてはまる」割合


図20 自己評価  (%)



 子どものつきたい仕事の中で、医師、裁判官、芸術家を抜き出してみると、 東京とストックホルムの子に、なりたいものの割合が低い(図18)。

図18 つきたい仕事  (%)



また将来の見通しをみると、サクラメントとハルビンの子の持つ見通しは 全体に明るく、仕事での見通しの明るさも特徴的だ(ハルビンの子が 金持ちになる予想が低いのは、中国の特殊事情であろう)(表38、図19)。 ストックホルムの子は、仕事への意欲はきわめて低いが、しあわせな家庭、 よい親への自信を持っている。しかし東京の子は、仕事、家庭いずれの 見通しも暗い。

表38 将来の見通し  (%)
  "
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
有名人になる きっと
たぶん
 11.0 
 14.6 
 31.7 
 43.4 
 28.1 
 26.8 
 18.9 
 19.1 
小 計 25.675.154.938.0
皆から好かれる人
になる
きっと
たぶん
 12.3 
 48.6 
 56.2 
 41.7 
 40.8 
 41.4 
 32.3 
 51.7 
小 計 60.997.982.284.0
お金持ちになる きっと
たぶん
 12.7 
 21.3 
  6.6 
 29.7 
 37.8 
 34.6 
 18.6 
 21.2 
小 計 34.036.372.439.8
仕事で成功する きっと
たぶん
 19.1 
 40.2 
 59.5 
 35.2 
 78.8 
 18.4 
 27.2 
 43.1 
小 計 59.394.797.270.3
よい父(母)親に
なる
きっと
たぶん
 26.5 
 47.0 
 61.8 
 33.0 
 76.4 
 14.7 
 62.1 
 33.5 
小 計 73.594.891.195.6
しあわせな家庭を
作る
きっと
たぶん
 40.7 
 37.4 
 68.7 
 28.5 
 83.3 
 12.8 
 72.0 
 23.2 
小 計 78.197.296.195.2


図19 将来の見通し  (%)





(2)

 しかし将来の見通しや自己像が暗くてもしあわせ感はまた別で、 しあわせ感はアジアに強く、西欧文化圏に少ない。東京はちょうど 中間にある(表41)。毎日がつまらない感情も同様である。(図21)

表41 しあわせ感  (%)
しあわせ 小計
とても かなり
(ハルビン) (67.8  29.7) (97.5)
ソウル 57.6  19.0 76.6
タイペイ 56.2  24.1 80.3
バンコク 53.2  25.7 78.9
東京(90) 45.2  25.6 70.8
東京(92) 44.8  25.6 70.4
ストックホルム  35.9  39.6 75.5
ロ ス 33.9  39.9 73.8
シアトル 29.6  35.0 64.6
サクラメント 28.0  38.1 66.1


図21 「毎日がつまらない」  (%)





3)学業成績

(1)

 東京の子の見通しの暗さは、学業成績の自己評価の低さによるものだろう。 (表33、図15)

表33 成績の自己評価  (%)
よ い ふつう よくない
とても かなり やや とても
東 京 5.812.555.818.67.3
ハルビン 3.932.648.413.51.6
サクラメント 28.344.723.62.80.6
ストックホルム  22.647.127.91.60.8


図15 成績のよい子の割合  (%)





(2)

 表49によれば、どの地域でも学業成績が悪くなれば自己像は暗くなる。 しかし、東京の子の自己像は、成績が悪いと、とくに暗くなる。ハルビン の子の自己像は、成績が悪くてもそれほど影響を受けない。

表49 自己評価×成績  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストックホルム
とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A
スポーツのうまい子 38.2 16.1 14.6 38.2 26.3 22.3 20.4 77.6 49.3 38.9 36.2 73.4 39.3 24.7 20.3 51.7
人気のある子 37.3 16.4 6.4 17.2 26.3 26.5 10.0 38.0 42.4 22.1 21.3 50.2 21.2 13.5 11.2 52.8
勉強のできる子 56.4 12.5 2.0 3.5 90.0 16.9 3.0 3.3 67.1 27.2 10.2 15.2 42.9 17.2 3.5 8.2
正直な子 31.4 10.2 8.1 25.8 65.0 59.9 47.6 73.2 49.3 33.6 29.1 59.0 43.9 27.8 18.7 42.6
親切な子 33.7 13.9 9.7 28.8 50.0 55.9 48.3 96.6 49.3 36.0 26.8 54.4 48.2 31.8 24.0 49.8
よく働く子 32.4 12.4 12.5 38.6 55.0 48.2 40.7 74.0 63.8 40.8 23.6 37.0 42.9 18.2 7.1 16.6
勇気のある子 38.2 15.7 16.5 43.2 65.0 40.7 27.5 42.3 40.1 37.8 39.4 98.3 46.4 27.9 27.3 58.8
注)「ややよくない」+「とてもよくない」が東京は18.6%+7.3%=25.9%だが、
  ハルビン13.5%+1.6%=15.1%、サクラメント2.8%+0.6%=3.4%、
  ストックホルム1.6%+0.8%=2.4%なので、クロスでは「とてもよい」から
  「ふつう」の3段階とした。



 さらに将来つきたい仕事をみると、サクラメントとストックホルムの子は成績に よってそれほど「いい仕事につけない割合」が下がらない。東京の子は下がり方が 大きく、成績の重みが大きな役割を果たしている(表51、図27)。将来の見通し も同様である。(表52)。

表51 つきたい仕事×成績  (%)
とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A



東 京 24.2 24.6 8.7 36.0
ハルビン 25.0 18.0 5.2 20.8
サクラメント 10.6 6.7 8.7 82.1
ストックホルム 10.8 10.9 7.7 71.3

 
東 京 37.7 25.9 18.8 49.9
ハルビン 35.0 31.1 28.5 81.4
サクラメント 42.3 37.4 35.7 84.4
ストックホルム 16.5 21.3 14.3 86.7


東 京 25.8 16.7 9.0 34.9
ハルビン 25.0 34.1 21.3 85.2
サクラメント 44.3 29.8 39.7 89.6
ストックホルム 19.4 20.2 14.3 73.7


東 京 34.9 34.8 20.6 59.0
ハルビン 50.0 35.3 22.5 45.0
サクラメント 38.2 41.1 38.1 99.7
ストックホルム 17.2 17.7 14.3 83.1

 
東 京 20.6 21.8 11.0 53.4
ハルビン 15.0 22.2 10.0 66.7
サクラメント 25.5 18.9 21.4 83.9
ストックホルム 11.5 12.1 10.1 87.8


  図27 つきたい仕事×成績
    −「とてもよい子」のつきたい割合を100とした場合−  (%)




表52 将来の見通し×成績  (%)
とても
よい(A)
かなり
よい(B)
ふつう
(C)
C/A
皆から好か
れる人にな
東 京 44.1 15.3 9.8 22.2
ハルビン 50.0 65.7 52.5 105.0
サクラメント 56.7 41.2 24.6 43.4
ストックホルム 48.6 29.1 23.2 47.7
よい父(母)
親になる
東 京 56.9 35.6 23.7 41.7
ハルビン 68.8 56.7 66.1 96.1
サクラメント 81.9 74.6 75.6 92.3
ストックホルム 81.0 61.5 48.2 59.5
有名人にな
東 京 30.4 12.5 9.1 29.9
ハルビン 51.2 41.5 28.4 55.5
サクラメント 34.7 23.0 24.0 69.2
ストックホルム 32.8 15.8 10.8 32.9
お金持ちに
なる
東 京 33.7 16.7 10.6 31.5
ハルビン 9.1 8.2 7.2 79.1
サクラメント 40.0 34.5 39.2 98.0
ストックホルム 29.2 17.1 11.4 39.0
仕事で成功
する
東 京 51.0 27.3 16.3 32.0
ハルビン 61.2 73.6 56.3 92.0
サクラメント 87.4 79.0 68.0 77.8
ストックホルム 44.1 25.9 15.9 36.1
しあわせな
家庭を作る
東 京 68.6 48.6 38.5 56.1
ハルビン 87.3 84.1 85.9 98.4
サクラメント 84.6 84.1 83.2 98.3
ストックホルム 77.4 75.5 60.8 78.6
「きっとそうなれる」割合




 

(3)

 以上の背景には、学力が何に左右され決定されるかの学力観についての 考え方の違いがあると思われる。ハルビンの子は先生の話をよく聞けば勉強 が得意になると信じており、サクラメントでは生まれつき能力に差があると 思っている子も多い。長時間すればいいと思う子は東京に最も多い。(図16)

図16 勉強の得意な理由  (%)





(4)

 アジア、とくにハルビンの子は未来に夢を持ち、早くおとなになりたい と思っている。西欧文明圏、とくにサクラメントとストックホルムの子は今 が楽しく、いつまでも子どものままでいたいと思っている。東京の子はどっち つかずである。そうした背景の一つとして、サクラメントの子は小学生のう ちから表53のように、仕事を持っている者が36%を占め、子どもなりに 充実した日々を送っている資料も得られている。

表53 アメリカの子どもの金銭事情  (%)
おこづかい  もらう    もらわない
  67.7     32.3
  │
  │ ┌ 2.00ドル以下
  │ │ 2.01〜3.00ドル
  └→│ 3.01〜5.00ドル
(週に)│ 5.01〜10.00ドル
    └ 10.01ドル以上
 
23.2
14.1
33.1
19.9
9.7
アルバイト
(仕事)
 している   していない
  36.0     64.0
  │
  │ ┌ 2.00ドル以下
  │ │ 2.01〜3.00ドル
  └→│ 3.01〜5.00ドル
(週に)│ 5.01〜10.00ドル
    │ 10.01〜20.00ドル
    └ 20.01ドル以上
 
15.7
8.3
21.6
23.0
16.7
14.7




(5)

 日本の子どもの22%は「小さい頃に戻りたい」と思っている(表42)。 そして図23によれば、東京に限らず、ソウルやタイペイなど受験競争が厳しく、 過教育状況のもとで生活している子どもたちが、「小さい頃に戻りたい」と 思う割合が高い。現在はむろんのこと、未来も見通しが暗いので、小さい頃に 戻りたいという気持ちになるのであろう。

表42 成長欲求  (%)
東 京 ハルビン サクラメント ストック
ホルム
早くおとなになりたい 38.682.031.217.8
子どものままでいたい 39.79.561.171.9
小さい頃に戻りたい 21.78.57.710.3


図23 成長欲求  (%)