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小林登文庫
2000.12.28

21世紀の新しい『学び』『育ち』とは?

 20世紀は、科学・技術の進歩のお陰で物質的に豊かな社会を築き上げた「モノ」の時代であったと言えよう。その豊かさの陰では、子ども達が本来持っている育つ力、学ぶ力が歪んでいるようにみえる。子ども達の心の問題の多発は、それを示そう。

 子どもは、長い進化の流れの中で、育つ力、学ぶ力を発揮する豊かな心と体のプログラムをもって生まれて来る。しかし、現在の子ども達の育ちの場、学びの場が、それを充分に機能させていないのである。

 科学・技術の進歩によって、ハードウェアとしての体に必要な栄養や物質的な生活環境などは充分であっても、脳をふくめた体のシステムを働らかせる心と体のプログラムに必要な情報のあり方に問題があるように見える。

 われわれは、21世紀の育ちの場、学びの場に関係する育児・保育・教育を考える場合、子どもの心と体のプログラムの仕組と来たるべき新しい時代の流れへの鋭い洞察力に基づいて、それを働かせる場のデザインをどのようにするかが求められている。そのような場にとって必要な人間関係の情報のあり方とともに、プログラムを働かせる生活の場の情報のあり方も考えなければならないのである。

 子どもの「育ち」については、親による育児(parenting)と保育士などの専門家による保育(care)をどう組合わせて、より良く機能させるかであろう。また、子どもの「学び」について言えば、学びの場としての学校をどのようにするかである。特に、乖離した「あそび」と「まなび」を組合わせる工夫も必要であろう。

 いずれにしても、子どもの心と体のプログラムをフル回転させて、「生きるよろこび一杯」"joie de vivre"にする方法を考え出さなければならない。子どものことを考える人々の英知が求められているのである。



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