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小林登文庫


21世紀は子どもの世紀にしよう、新しいミレニアムのために

掲載:1999/10/01

 平成12年は、新しいミレニアム(千年紀)の始まりであり、20世紀最後の年でもある。千年紀も世紀も、17世紀以後の考えでキリスト教文化に基づく。キリスト誕生から100年を1単位とするのが世紀、1000年をそれとするのが千年紀は御存知の通り。1000年はキリストの到来(復活)から再来(再臨)までの期間である。

 ミレニアムについて言えば、紀元前の歴史のない神話の時代を脱却して、キリスト教を初め世界的宗教が体系づけられ、エジプト・ギリシャの古典文化が築かれたのが第1である。勿論、キリスト誕生からと厳しくとれば、紀元前の神話時代を第1とすることも出来よう。それに続く第2(?3)の国家が組織され、文化が文明化したミレニアムが終わった。

 第2のミレニアムで人権が確立したことは、近代国家の成立にとっても重要であった。そもそもは、800年程前、イギリスでマグナカルタによる貴族・僧侶の権利主張が始まりで、アメリカの独立戦争やフランス革命によって、200年前にそれが市民の権利に拡大した。しかし、それは男性の権利にすぎなかった。第2次世界大戦後やっと女性の権利(1975)、最後に子どもの権利(1989)が、いずれも国連によって確立され、やっと新しいミレニアムに間に合ったのである。

 この新しいミレニアムの始まりの年が、20世紀最後の年というのは、子どもの権利からみても意義がある。20世紀冒頭に、スウェーデンの女性社会学者・教育者のケイは、「20世紀を子どもの世紀にすべき」と述べているからである。

 20世紀に近くなって、やっと子どもは社会的地位を持ち、アイデンティティが認められ、子どもにとって今世紀は明るく見えたのである。しかし、前半では2つの大戦、しかも子どもや女性を巻き込む悲惨な戦争であった。後半になって先進国は、科学・技術の力で豊かな社会を享受したものの、子どもの心の苦しみや悩みはかえって強くなっている。さらに、後進国にいたっては、民族戦争が相次ぎ、貧困と飢餓で、子どもの心と体の健康は損なわれている。子どもの世紀とは、ほど遠い現実なのである。

 21世紀こそ、子どもの権利を尊重し、真の子どもの世紀にして、新しいミレニアムの基盤を創り上げなければならない。子どもに関心をもつ全ての大人は、子ども達に何をすべきか、それぞれの立場で世紀末の混乱に学び、20世紀最後の年にあたり熟考すべきである。




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