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小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:1999/12/24

<よく泣く子と泣かない子−1>

 おとなにいろいろな違いがみられるように、よくみると赤ちゃんにもいろいろな違いがみられます。顔や体ばかりでなく、心や行動にも。それこそ前に申し上げたように、赤ちゃんも多様なのです。

泣き行動のピークは夕方

 おとなの日常の社会行動に、いろいろな違いがあるように、赤ちゃんの社会行動である「泣くこと」(泣き行動)にもいろいろな違いがみられます。大きくみれば、よく泣く子とあまり泣かない静かな子という、個人個人のちがいから、1日中での時間によって変動、さらに日齢・月齢によるちがいまで、その泣きかたは、きわめて多様なのです。
 赤ちゃんの生活時間の中では、睡眠時間のしめる割合は大きいのですが、泣き行動でも相当の時間をついやしているものなのです。泣き行動についやす時間は、生まれて間もない赤ちゃんで1日約1時間、生後4〜5カ月の間に急激に短かくなって約15分間になり、お誕生のころには10分以下になってしまうのです。
 首がすわり、手を開いたり閉じたり、目で物を追うようになり、笑ったりすることができるようになるとともに、泣き時間が少なくなっていくのはとうぜんです。
 さて、赤ちゃんの泣き時間の山が1日の中でどこにあるかについても、個人差があるものなのです。その赤ちゃんの生体リズム、あるいは母親の生活リズムに大きく支配されるのでしょう。
 しかし生後1〜2カ月の乳児では、午後に山があり、ピークは夕方というのが一般的なようです。

世界のこども

 よく泣く子と静かな子、そのちがいの本質はいったいなんでしょうか。なんらかの方法で検討したいと思っているのですが、わたくしにはそのちがいの本質を理論的に説明することはできません。
 よくいわれていることは、よく泣く子は指しゃぶりが少なく、あまり泣かない静かな子は、指しゃぶりが多いといわれています。また一般的にみても、月齢がすすむにつれて、泣き時間が少なくなるとともに、指しゃぶりの時間が多くなる傾向がしめされています。指しゃぶりの本質がなんであるかが明らかにならないかぎり、指しゃぶりと泣くことの逆関係の本質も不明なのです。
 指しゃぶりは、乳児期では生理的であり、歯の生える歯ぐきの感覚的な刺激に反応するとか、あるいは、口唇・舌という感覚の敏感な部分で、みずからたのしんでいるとも理解されているのです。しかし、いろいろなことがいわれているものの「泣くこと」といろいろな行動との関係には、不明のてんが少なくないのです。
 乳児の「泣き行動」の民族差について研究が報告されていますが、その中にアメリカの白人と東洋人など、ほかの民族の赤ちゃんとのあいだの泣き方を比較したものがあります。白人の赤ちゃんのほうがよく泣くというのです。
 ほかの民族の中でも、中国人の赤ちゃんは白人の赤ちゃんとあまり差がないのですが、母親や周囲のおとなのだいたりあやしたりする行動に反応して、泣きやみかたが早いのです。
 日本人の赤ちゃんも、あまり泣かないし、泣きやみが早いほうですが、中国人の赤ちゃんほどではないようです。しらべた白人以外の民族では、オーストラリアの原住民の赤ちゃんは、もっとも泣かないし、泣きやみが早いと報告されています。


このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。





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