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小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:2000/01/14

<よく泣く子と泣かない子−2>

泣き反応テスト

 赤ちゃんに乳首をくわえさせておいて、静かにそれを引きだして口からはずしますと、いったいどんな反応をしめすでしょうか。赤ちゃんは、しばらくの間静かにしていますが、そのうち手や足をゆっくり動かしはじめます。
 その動きは、次第にはげしくなり、泣き声にかわります。「おしゃぶり」を利用して、この反応を定量的に測定して、新生児・乳児の精神機能を評価しようというのがRISテスト(注1)とよばれる方法です。
 乳首をとりあげ、30秒から135秒間のあいだにみられる体動と泣き行動の強さ、さらにそれが発現するまでの時間を測定するのです。
 生まれてからの1カ月までの、新生児にたいしておこなったRISテストの3つのパラメーター、すなわち体動のはげしさ、泣き方の強さ、その発現時間は、おたがいに関係がふかく、乳首をとりあげるという吸啜中断にたいして強く反応する赤ちゃんは、体の動きもはげしく、強く泣くのです。

泣き反応の強さとこどもの将来

 RISテストにたいする反応の強い赤ちゃん(よく泣く子)と弱い赤ちゃん(静かな子)とは、どうちがうのでしょうか。
 出生後の間もない時点でみると、静かな赤ちゃんは笑いが少ないのです。しかし、生後3カ月になると逆転がおこり、静かな新生児は、笑いの豊かな赤ちゃんに成長します。もちろん、生後1カ月ころの笑いにくらべると、この時点での笑いは母親の語りかけに反応するものであり、より高度の感情に関係するものなのです。やがて、この静かな赤ちゃんは大きくなって幼児園にはいると、先生のおはなしに目を輝かせて、じっとききいり、お遊戯や先生の言葉をきちんとおぼえるこどもに成長するというのです。
 逆によく泣く赤ちゃんは、生活力がたくましく、となりのこどものお菓子でもとりあげるようなこどもになるのではないでしょうか。
 「栴檀は双葉より芳し」というべきでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんの泣き方にも、その人間の未来を示唆する特性がしめされています。



(注1)RISテスト Response to Interruption of Sucking Test
乳首などを吸っている乳児から、その乳首をゆっくり引き出したときおこる乳児の反応の時間ならびに程度を分析して行なう乳児の性格テストとでもいうべき方法。


このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。






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