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小林登文庫


新・こどもは未来である
掲載:2001/01/19

<母と子の人間関係が乱れる−2>

母親の愛情はわが子の生体リズムをととのえる

 母親の愛情にめぐまれない子どもは、前に申し上げましたように低身長になることがありますが、その理由は精神的なストレスが作用し、生体のリズムがみだれ、とくに成長にとって重要な内分泌(ホルモン分泌)のパターンがみだれるためと理解されています。体の成長には、とくに成長ホルモンが重要なのです。
 成長ホルモンというものは血液の中に一定の濃度で常に維持されているのではありません。睡眠にはいって数時間後に、パルス(注1)となって脳下垂体から流血中に放出されるのです。すなわち、成長ホルモンは、生体リズムに律せられて流血中に分泌され、成長・発達を支配しているものなのです。
 おとなのわれわれが精神的ストレスによって睡眠が妨げられたりすると、下痢をしたり、胃潰瘍になったり、etc・etcしますが、それとおなじように子どもも母親の愛情に恵まれなければ、前に申し上げましたように、それなりに苦しい状態となり、体のリズムがみだれるのは当然のことでしょう。
 母と子の関係は、いつもうまくゆくものではありません。ときと場合によっては、全くうまくゆかず、このように小児科医の前に病気として現われることがあるのです。それは胎児と母親という免疫学的な関係から、母親と乳児・幼児というもっとも人間くさい関係まで、いろいろとあるものなのです。しかし、人間関係の場合は、母親が努力したり、周囲がサポートするとかして、殆んどの場合は切り抜けているのです。



(注1)パルス
脈搏のひと打ちのように瞬間的な波、すなわち濃度が急激に上昇して、また下降する状態。


このシリーズは「こどもは未来である」(小林登著・メディサイエンス社1981年発行)の原稿を加筆、修正したものです。





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