東海大学医学部助教授 榎本知郎
マスターベーションや同性愛が、サルの子どもにも見られる――つまり、繁殖に結び付かない子どもの性行動も、生物学的な基盤を持った、長い進化の過程で選択されてきた「遊び」の要素を含む行動様式であることを榎本氏は示していく。 |
天理大学文学部助教授 川村邦光
いつの時代にも子どもは存在する。しかしながら、子どもという存在のとらえ方によって、「子どもの性/セクシュアリィティ」は時代によってさまざまな解釈がされてきた。川村氏は明治以降から戦後にかけての「子どもの性」を紐解いていく。 |
精神科医 香山リカ
子どもの好むテレビアニメや漫画の中に、大人の世界では「性的倒錯」と見なされる同性愛、露出狂、近親相姦、フェティシズムといった要素が潜んでいる |
教育評論家 斎藤次郎
「ペニスやウァギナということばは、子どもたちの性の現実とイメージからかけはなれたところから、突然やってきた記号である。いくつかの記号の組み合わせによって、スムーズに性の事実を子どもに伝えることは、確かに簡単である」。斎藤氏は、学校の性教育などの場面での性に関することばを、羞恥もしのび笑いもまとわりついていない「記号」だという。そして、記号化され与えられた性をなまなましい実感のレベルへと、子どもたち自身が翻訳していくプロセスに、氏はまなざしを向けている。 |
京都教育大学助教授 松浦賢長
アメリカについて語る場合、「多様性」と「両極端」のパワーを前提にする必要がある ある一面だけを見て過大評価をしてしまう危険性を、松浦氏はまず最初に指摘する。それは性教育やエイズ予防教育についても同じで、学校での性教育を公式に義務づけているかどうかも州によっても異なるし、性に対して「進歩的」な層もいれば、エイズ予防教育の最も効果的な方法として「禁欲教育」を推し進めようとする「保守的」層もいる。性そのものを禁じるという思想は、日本にいるわれわれには説得性に欠けて見えるが、アメリカでは10代の妊娠や中絶、エイズ患者やHIV感染者は、子どもたちにとってごく身近な問題であるという各国の状況の違いがあることを氏は指摘する。「このような状況の下では水際作戦をとるしか良い方法がなく、“とにかくセックスにはノーと言え”と、コトをダイレクトに運んだ方がうまくいくかもしれないのだ」。 |