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シリーズ対談 TVメディアと子ども(2)
テレビは子どもたちのために何ができるのか
佐藤二雄[メディア評論家]×佐野竜之介[NHK学校放送チーフディレクター]

 「宅急便だって玄関口にしか置いていかないのに、茶の間の中に断りもなしにずかずかと入ってくる。その横暴さというか、傍若無人さにテレビの特徴があるわけです」。テレビに対して厳しい批判の目を向ける佐藤氏は、テレビは「中身を考えなければただの箱」だという。その認識がないままに「空間を埋めるための存在」として無批判にテレビをつけっぱなしにする若者や子どもが増えていることに、氏は懸念を抱く。一方、NHKの学校放送番組のディレクターである佐野氏は、テレビ番組の作り手であってもテレビに批判的な目を持たずに埋没してしまったり、いったん見る側に回ってしまうと何も考えずに浸ってしまうところにテレビの危うさがあると語る。

 また、両氏は、大人と子どもの見る番組がボーダレス化しているのにもかかわらず、作り手には、テレビ番組が子どもにどのような影響を与えるのか、本当に子どもに見せる内容としてふさわしいかどうかをチェックする姿勢がないことを指摘する。とくに、佐藤氏はビートたけしの番組を例に取りながら、「差別あるいは人権という考え方の基本の基本の部分が崩れてしまうような番組が最近やたら多い」と問題視する。

 両氏が共通に感じているのは「テレビと子どもの間に介在する第三者」の必要性だ。佐藤氏は「世の中には『お笑い番組であれ、エログロナンセンスであれ、教育的価値はあるんだ』という大変もの分かりのいい人がいますね。けれども、そういう理屈はそこに第三者が介入して初めて成り立つ」のだという。また、佐野氏は学校放送番組を例に取り、「一番大事なのは、先生が一緒に画面を見つめる目なんです」「さらに言えば、子どもは先生の表情を見ながらテレビも見ている部分がある」という。子どもにとってもっとも身近な第三者である「親たる者、教師たる者に望まれるのは、核心まで導くだけのアシストをする」ことだと、佐藤氏はひとつの方向を示す。

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