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クロスカルチャー

 現在、日本には「日本の子どもたち」と一括りにできないほど、多様な背景をもった子どもたちが生活している。在日外国人の子ども、国際結婚の子ども、一時的な滞在中の外国人の子ども、そして海外からの帰国生。民族・出身国はもちろんのこと、彼らがもつ文化は多様である。こうした流れに伴って、学校や地域における多民族化・多文化化も実際に起こってきてはいるが、現場での彼らへの対応は、日本文化に同化することを強いるか、逆に「お客様扱い」をしているかのどちらかであろう。

 今回の特集「クロスカルチャー」では、まずは多様な現状をそのまま受け止めることから始めている。ここで言う「クロスカルチャー」とは「異なるものと同じものの両方を含めて文化と文化をクロスする」という意味をもっており、「異文化」という言葉の語源でもある。さまざまな背景を背負った子どもたちを「異なる存在」としてのみ認識したり、「外国人」「帰国生」というあらかじめ固定化されたフィルターを通して見るのではなく、彼らがそれぞれもつ個人のヒストリーをみつめていくための視点を提示することこそが、本特集の意図である。

 この号には、いつになく多くの子どもたち、現場の教師、親たちのリアルな姿が登場する。また、地域のNGOで活躍するソーシャルワーカーや帰国子女の適応のプロセスを追い続けたTVプロデューサーなども執筆陣に加わっている。子どもたちの多彩なストーリーや周りの大人たちの取り組みは、これまでの学校文化や社会の価値観を問い直すための示唆に満ちている。そして、クロスカルチャーを生きるのは彼らだけではなく、実は我々自身なのだというメッセージをも彼らは伝えてくれているのである。

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