CONTENTS HOME
●HOME●
●図書館へ戻る●
●タイトルへ戻る●


NEWS LETTER HEADER
Vol. 13, No. 12, December 1997
1. デイケアに預けるべきか否か
2.あなたの子どもにふさわしいデイケアを探すには・・・

デイケアに預けるべきか否か
( CRN事務局 注: アメリカのデイケア(day care)とは保育施設、学童保育のような役目をしており、日本のシステムとは異なっております。 )
ルイス・リプシット博士

 子どもをデイケアに預けるべきか。預けるとしたらどのようなデイケアに預けるべきか。

 これはとても不思議な問題だと思う。もちろん、昔からある問題であって、親が子どもを産み続ける限り続くであろう。

 米国での、このデイケアに関する葛藤はたいへん深いものである。デイケアというと家庭の外のものを指しているようだが、そうでない場合も考えなければならない。結局、片方の親か両親が外で働いている場合、祖父母や親戚、または父親が子どもの世話をしていることもあるのである。これはもちろん、母親が昔からやっていることである。

 デイケアの制度が進んでいる国、例えばフランスやスカンジナビア諸国では、米国人の悩みがわからない。なぜかというと、家庭以外での安全なチャイルド・ケアが可能だからである。これらの国では、経済的状況や両親の技能を活かすために、デイケアが、オプションではなく現代の必需品となっている。

 デイケアが育児に必須と考えられている国では、すでに経済的、個人的な多くの問題を解決し、膨大なエネルギーと能力を費やして、親にとって働きやすい環境を作り出している。なかには家庭でのチャイルド・ケアを好む人もいるし、デイケアに預けたいと思う人もいる。さらには、近所の人3、4人で面倒を見てもらいたいと思う人もいるようだ。

 米国では、デイケアの種類の増加が急速だったので、親は十分に対応できていない。しばしば選択肢を理解していない場合があり、子どもを預ける以前にデイケアの基準設定を十分に判断できていない。

 多くの個人がデイケアを始めた結果、それらのいくつかのセンターや家では、とても劣悪で、危険さえもある状況がみられる。ここでは、よくマスコミで報道されるような最悪の例は取り上げないが、家のなかのチャイルド・ケア(専門のベビー・シッターなど)でも、完全な安全は保証されていない(訳者注:例えば虐待)。そうはいっても、親戚や母親によるチャイルド・ケアでさえも、必ずしも子どもはいつも十分に安全とは言えない。

 今月のブラウン大学ニュースレターはデイケアを特集しており、その質、安全性、知りうる限りの危険性に焦点を当てている。なかには、家庭外のデイケアに預けることに猛反対する人もいる。ただし、デイケアに預けるのは、米国の親たちの現実である。米国の母親の60%は、産後数ヶ月で職場に戻る。デイケアは乳幼児にとって次善の策であるが、もっとも現実的である。だから、親や地域社会の責任者が監視することが極めて重要である。

 さらに大切なことはデイケアの研究に資金援助を与えること、その結果を米国の家庭に伝えることである。内容は、デイケアの種類、環境の質や特色、子どもの発達に与える影響などについてであろう。

 現在行われている優れた研究は、国立児童保健および人間発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development,NICHD)で行われている。ここでは、デイケアに預けられている様々な子どもの、発達に関するデータを収集している。それは現在も進行中だが、もうすでに多数の文献が発表されている。デポラ・バンデル博士は、この分野でもっとも著名な研究者であり、このニュースレターのなかでもインタビューを受けている。筆者は、この研究の実行委員のひとりとして、米国ホワイトハウスで行われたチャイルド・ケア学会に参加した。クリントン大統領夫妻も参加し、この国のチャイルド・ケアの研究を政府が援助する重要性を確認した。こういった多くの人々の努力によって、米国でも質の高い、経済的にも恵まれたチャイルド・ケアを、すべての親が利用できるようになることを望んでいる。






あなたの子どもにふさわしいデイケアを探すには…

 働いている親が必ず思うのは、自分の子どもを預けていいのかどうかである。専門家のなかには両論ある。デイケアの研究は、つい数年前に始まったばかりだ。

 質の高いデイケアに預けている子どもは問題ない。ここでたいせつなのは「質」である。多数のコミュニティーではデイケアの空きを探すことでさえ難しいのに、質を問うのはもっと難しい。デボラ・バンデル博士(ウイスコンシン大学教育心理学教授)は、「デイケアの質を上げることは努力するに値する。各デイケアのプログラムの質を研究したところ、デイケアの質は子どもの学問的、社会的成功につながることがわかってきた」と言う。

 良いデイケアを探すために、以下のことをお勧めする。

訪問すること

 できれば2日にわたって1、2時間過ごすこと。バンデル博士は「2日は無理でも、1日は行う方が良い」と言っている。デイケアは慌ただしいので、初めて訪問した人は圧倒されてしまう。バンデル博士によれば、訪問した際すべきことは、ひとりの子どもを選んで15分間その子の行動を追い、次の15分間は別の子どもを追いながら、スタッフの行動や周囲の状況、スタッフや友人に対する子どもの反応、カリキュラムなどを観察する。訪問には自分の子どもを連れて行き、あとで本人に感想を聞いてみればよい。

子どもの年齢を考慮すること

 年齢の低い子どもには、時間やカリキュラムがきちんと体系だっているプログラムが良い。ただし3、4年生になると子どもは個人的な趣味、例えば演劇やスポーツなどをやりたくなる。バンデル博士によれば「中学生になると、自分のやりたいことをやっていれば、デイケアに通っているという意識もなくなる。現実にはデイケアであるが、クラブ的存在であることによって自立性を育てる」ということだ。3年生以上の子どものデイケアを探す場合は、基本的に、学校では経験できないカリキュラムを探すと良い。放課後の活動は、子どもにとってとても良い経験になりうる。

スタッフの特徴を見ること

 デイケアのスタッフが子どもとどう接するかは、デイケア選びの決定的要因である。「子どもの要求に暖かく、きめ細かく応えているスタッフを探すべきだ」とバンデル博士は言っている。スタッフと良い関係を持つ子どもほど、学校で学問的にも社会的にもよくできる。そのデイケアの子どもの人数とスタッフの人数を調べるべきである。乳幼児は、小さなデイケアでスタッフが十分な注意を払える環境が良い。バンデル博士は、「子どもが大きくなるにつれて、スタッフと子どもの比率は大きくなっても良いが、子どもが増えるほどスタッフと子どもの関係は薄れる。働いているスタッフ全員は、その年齢層にあった保育ができるようトレーニングを受けているべきである」と言う。

子どもの友人がどこに預けられているか調べること

 子どもは友人と一緒の所にいた方が楽しい。ほかの親と相談し、一緒に預けられる方法を考えると良いかも知れない。

子どもの言うことを注意深く聞くこと

 バンデル博士の研究によると、子どもがデイケアについて語ることは、専門家が語ることと同じである。もし自分の子どもが、デイケアのスタッフやカリキュラムについて不満を持っているなら、真剣に聞いてあげることが大切である。バンデル博士は「子どもは知識があり、よくわかっている」と言っている。






The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, December 1997
Reproduced with permission of Manisses Communications Inc,
publisher for subscription information contact Manisses at:
208 Governor St Providence, RI02906 USA
Phone 1-401-861-6020
Fax 1-401-861-6370
e-mail: ManissesCS@bdol.com


Source; The Brown University, Adolescenet Behavior Letter.
Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All right reserved