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Vol. 15, No. 3, March 1999
1. 家庭生活:米国の子どもにとっての時間の変化(1981−1997年)

家庭生活:米国の子どもにとっての時間の変化(1981−1997年)

サンドラ・L・ホファース博士

 家庭生活は、1980年以来著しく変化した。1997年では、小学校入学前の子どもを持つ母親のうち、働いている母親の割合は3分の2であった。その数字は1980年では47パーセント、1950年では12パーセントである。これは、注目すべき数字である。若い子どもの母親たちの雇用は、家庭生活に対して大きな影響を与えた。それはあたかも、産業革命の初め、父親たちが家での仕事から賃金雇用へとシフトしたときのようだ。

 1981年と1997年に行われたミシガン大学の研究において、われわれは、1981年から1997年までの16年間の、家庭生活における子どもの経験の変化に注目した。双方の研究とも、同時日記方法を使った。われわれの研究調査結果における重要点は、ひとつは子どもの自由時間が減少していること、そして自由時間がますます構造化されていること、の2点である。1981年と1997年に、こどもにはどのくらいの自由時間があったかを見い出すために、食事、身だしなみ、睡眠、学校にいる時間以外の任意の時間を足し上げ、これを168時間(1週間の総時間)で割った。結果は、1981年の子どもの自由時間は、週の38パーセント(63時間)を占めていたのが、1997年の子どもでは30パーセント(51時間)と、16年間で自由時間は16パーセント減少していた。

 この減少の主要因は、学校で費やされる時間の増加である。1週間当たり21時間から29時間へと、8時間増加した。事前の予想のとおり、最も大きい増加は、小学校入学前の子どもや保育園の子どもたちに見られた。もちろん、学校に通う子どもの間でも増加している。授業の前や放課後の時間も、学校の時間に含まれている。加えて、身の回りの時間も増加している。すなわち入浴や身繕い等に費やされた時間や、荷造りやどこかへ行く準備にかかる時間もここに含まれる。おそらく、外出している時間が長いということは、同様に外出の準備をするのにも多くの時間を必要とする。

 1981年から1997年の間に、食事の時間も減っている。1週間当たり約1時間の減少である。これは、母親の雇用の増加と一致している。睡眠時間にはわずかな増加がみられた。

いかに自由時間が変化したか

 1981年、1997年ともに、子どもの自由時間の半分は遊びやテレビに費やされる。自由時間が減少したと仮定すると、大部分の活動の減少が予想されるであろう。遊びは、自由時間の全体の減少を超える25パーセントの減少となり、テレビを観る時間は13パーセント減少した。教会に行く時間は、16年間で40パーセント強減少した。散歩やハイキング、キャンピングなど、戸外の活動は50パーセント減少した。最後に、家庭での会話、すなわち単に座って会話する時間は、もともとたいした時間を占めているわけでもないのに、100パーセントもの減少となった。

 子どもの時間は、いくつかの重要な活動、特にスポーツ、訪問、家事、及び他の受動的レジャーにおいて増加した。スポーツとはサッカー、野球、バスケットボール、及び水泳のような標準的チーム運動を含む。スポーツに子どもが費やした時間は、16年間でほぼ2倍になった。1981年に2時間20分だったものが、1997 年には4時間20分になった。1997年には、子どもは多種多様にスケジュールが組まれ、組織化されたスポーツ活動に参加している。少女の参加も少年と同様に増加したが、1997年では、それでもまだ、少年は少女より2倍多くの時間をスポーツに費やした。

 訪問は、16年間で200パーセント増加した。これには、友人と話す電話に費やされる時間を含む。また、われわれを混乱させる発見の1つに、1981年から1997年の間に家事が占める時間が2倍になったということがある。最終的に、子どもの生活構造に変化があったという結論と合致するものとして、他の受動的レジャー −その子どもが参加者ではなく、観客としてショーやスポーツ大会に行くこと−に費やす時間が5倍に増加したことが挙げられる。1981年に、子どもが他の受動的レジャー費やす時間は30分だった。その数字は、1997年には3時間6分であった。

これらが意味するところ

 私たちは、家族が今日多忙であるということを認識する。働く両親と子どもは、各自それぞれの活動に忙しい。子どもさえもが、自分の手帳を必要とする。家庭生活は、非常にタイトな日程を必要とする。家庭料理を持ち帰る、またはそこで食事できる外食産業は、労働人口増加により急速に発達した。家族は、家にいる状態よりも、むしろ店を行き来したりして時間を過ごすのかもしれない。これは、子どもの家事の時間の増加として反映される。但し、それは伝統的な雑用や掃除というより、むしろ金を使うショッピングの時間増で説明できてしまう。

結論

 現在の子ども世代が青年期へと成長すれば、私たちは、家庭や家庭生活に関する予測の結果を見るかもしれない。確かに、私たちは、若い女性の大学入学増加を見て、将来女性が職業に携わっているであろうことを理解する。社会は適応し続ける。

 テレビを観ている時間は増加していなかった。実際それは、自由時間全体の低下と同程度ではないけれども、むしろ減少している。テレビは、子どもの総合的読み取り学力テストの点数に対して、少なくとも統計上有意な影響を与える受動的活動である。読書の時間は1週間当たりわずか約1時間で、16年間を通じて変わらなかった。われわれが調査した活動のうちで、読書の時間は読解力と密接な関連があり、将来の学校や人生での成功につながる。学習時間は1981年から1997 年の間に50パーセント増加したものの、子どもが学習に費やす時間のトータルはまだ少なく、1週間当たり2時間のみである。加えて、勉強することは、学校でうまくいくことと必ずしも関連しているとは限らない。なぜなら、よりたくさん勉強する子どもの中にも、学校で問題を持っている子どもが含まれるからだ。

 最終的に、われわれは、自宅で遊ぶ時間が比較的少ない子どもには、行動や読み書き、算数のテストなどに問題があるとの結果は得られなかった。おそらく、子どもは登校前のプログラムで遊んでいるか、もしくは、学校でいくらかの自由時間を持っているのかもしれない。このように、この研究は、子どもの時間の部分的分析のみ提供しているに過ぎない。

 さらに、われわれは、家庭の外で働く母親が子どもを無視しているという証拠はなかった。母親が働いている場合とそうでない場合、子どもと接している時間の差は1週間当たりわずか3時間であった。

 ここで1つの警告をする。われわれは、食事時間をほとんど取らない子どもが、より高いレベルの攻撃的な行動問題を持っているということがわかった。われわれは、まだどちらが原因かわからない。しかしながら、食事時間は、子どもと親が日中何が起こったかを見い出すことができる重要な時間ある。食事時間は、親子が会話する唯一の時間ではないが、ただ座って会話する時間が1981年から1997年の間に著しく減少したことが、われわれの懸念のもととなっている。

 われわれは、その後追加分析を行なっており、まさに2001年に向けてデータ収集を行なっている。より詳しい情報は http://www.isr.umich.edu/src/child-development/home.html まで。



サンドラ・L・ホファース博士は、ミシガン大学社会調査院の上級研究者である。連絡先: (734) 647-4575



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, March 1999
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Source; The Brown University, Adolescent Behavior Letter.
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