CONTENTS HOME
●HOME●
●図書館●
●タイトルへ戻る●


NEWS LETTER HEADER
Vol. 15, No. 7, July 1999
1. 母親の喫煙が犯罪行動に影響を及ぼす恐れ
2. 怒りの源

母親の喫煙が犯罪行動に影響を及ぼす恐れ

 研究者たちは、デンマークのコペンハーゲンにおいて1959年9月から1961年12月の間に産まれた4,169人の男性を対象とした研究を行い、彼らの母親の出産前喫煙と彼らの犯罪行動の間に相関関係があることを発見した。

 妊娠の第3期において、彼らの母親が喫煙した煙草の数を自己申告させた。その母親が産んだ男児が34歳になった時点での犯罪歴を、デンマークの国立犯罪機構でチェックした。加えて、母胎の拒絶、社会経済的状態、母体の年齢、妊娠期間の麻薬の使用、その他の要因に関してのデータを収集した。

 母体の出産前喫煙の量と、非暴力あるいは暴力的犯罪の間に因果関係があることがわかった。母体の出産前喫煙は、とりわけ思春期のみに発生した犯罪というより持続的犯罪行動とリンクしていた。潜在的な人口統計や親についての変数を制御したとしても、出産前喫煙と犯罪行動の間の関係は有意であった。研究者たちは、妊婦が喫煙するとき、胎児の中枢神経系統にダメージがあるかもしれず、そして、それは結果的に犯罪行動に関与するかもしれないと仮定する。

 研究者たちは、「母体の出産前喫煙は、男児において持続的犯罪行動を起こす要因になりかねない」との結論を下している。この場合、親の特性の問題は原因とはならなかった。妊娠期間の母体の喫煙と、産まれた子どもの犯罪行動の関係については、更なる研究を必要とする。この研究結果は、妊娠期間に喫煙しないよう公衆衛生努力で奨励することの重要性を強調する。

Brennan, P.A.; Grekin, E.R.; Mednick, S.A.:Maternal smoking during pregnancy and adult male criminal outcomes. Archives of General Psychiatry 1999;56:215-219. For reprints, contact Patrick A. Brennan, Ph.D., Department of Psychology, Emory University, 512 N. Kilgo Circle, Atlanta, GA 30322, e-mail: pbren01@emory.edu.




怒りの源

 怒るという行動は、恐ろしい。これは理解できる。というのは、怒るという行動は、しばしば辛口であったり、苦痛を与えたり、攻撃的であったりするからだ。

 私が思うに、怒りは、赤ちゃん、または新生児にさえも存在する。予防接種されている間の彼らの激しい反応から、いつ悲鳴をあげ泣くかわかる。呼吸がふさがれるとき、怒った状態になる。毛布を取られたときも同じだ。赤ちゃんは、握りこぶしをきつく作り、背筋をぴんと張り、脚を胸へ引きあげる。これらは、幸福な状態への脅威に対する赤ちゃんの正常な反応である。大人が、怒りのあまり暴力を振るう寸前の状態において発見される類似のパターンで、怒った「戦闘的」メッセージを発する、というのがある。新生児期間から始まる、大人が赤ちゃんを抱擁して慰めることは、赤ちゃんの怒りを軽減するプロセスの重要な部分である。

 怒りは、しばしば状況または傾向とあわせて語られる。しかし、人が怒りを明らかにするときは、常にそれを引き出している刺激がある。社会の大部分は、人間が怒りの原因に触れた状況に対して、怒りの感情を取り除くように設計されている。

 怒りの行動のパターンの多くは、早期の経験によって得られる。子どもが怒っているとき、どのような反応をするかは非常に重要である。これらのパターンは、怒りを引き起こす事柄をあつかう子どもの、終生のパターンを示している。

 「ほかの子どもをぶってはいけません」と言いながら、子どものお尻をたたいている親を描いた漫画が思い出される。防御の行動は、人間性の発現と同じくらい古い。また、実に有機体の歴史と同様に古い。進化の過程で生物は、自らを守る際、それらの有機体のなかで最も良いものを保護したように思われる。この行動の真実は、精神分析の理論においても重要である。すなわち、抑制と否定のような心理学的防衛の仕組みは、フロイトによって、攻撃に対する基礎的かつ生物学的な防衛の症状の発現であると言われた。

 人間は、攻撃に対して防御する反射神経を持って生まれる。大部分の新生児は、窒息する恐れがある口と鼻孔から物を遠ざけ、有害な音から遠くに頭を向け、そして毒性の物質には口を閉じる。

 生きた有機体は、楽しい気持ちを活発に求め、傷を回避もしくは消去する。進化するに従い、感情的反応が回避行動に付随してくるのがわかる。

 トイレを使うとか、「お願いします」と言うことを学ぶことなどの社会的トレーニングの初歩の側面は、社会や家族が、社会的に受容しがたい行動に対してどのような行動をとるか、ということに起因する。われわれが子どもをしつけたり誉めてきた歴史が、受け入れられる社会行動を形成する。

 怒りの行動は、思春期の子どもにおいてより、幼児において容易に確認できる。したがって、社会は、子どもが起こす、予期せぬ激しい出来事に呆然となる。児童が起こした、怒りの行動による最近の事件をみても、怒った若者が他者を殺したいと思うほど激しく怒っていた、ということを正確に確認するのが難しい。

 われわれは、この数十年間の不満や怒りの行動について多く研究してきた。しかし同様に、われわれは発達に関するこの決定的な側面を理解するにはほど遠い。変化の速い世界において、危険性に関する通常の指標は安定していない。小児期に見られる、他者を傷つける傾向の指標も安定していない。怒りや暴力を研究するという、強く根気のいる公約を実現するには、われわれは、まだ知らないことが多い。加えて、われわれが心理学的に優れた技術を持つまでは、他者の生命をおびやかす少数の個人を予期することはできないであろう。

 他人の精神的幸福を監視することは、われわれが尊重する自由を侵害することかもしれない。自由を尊重する親に生まれる全ての子どもに、代替があるとは限らない。

 子どもが、正常な発達過程で、怒りを引き起こす状況にぶつかったときには、大人が子どもの感情や状況を理解し、慰め、守ることが大切である。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, July 1999
Reproduced with permission of Manisses Communications Inc,
publisher for subscription information contact Manisses at:
208 Governor St Providence, RI02906 USA
Phone 1-401-861-6020
Fax 1-401-861-6370
e-mail: ManissesCS@bdol.com


Source; The Brown University, Adolescent Behavior Letter.
Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved.