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Vol. 19, No. 1, January 2003
1. オンライン治療
2. ADHDのための国立情報センター設立
3. 子供の大衆文化:商品となった子供時代

オンライン治療

 カリフォルニア州サンノゼに本拠地を置く治療施設と、そのオンライン支局で、国内で唯一インターネットによるドラッグとアルコール治療を認可されたイーゲットゴーイングは、最近国内初のインターネットによる双方向のオーディオとビデオによるドラッグ、アルコール中毒の治療とカウンセリングのサービスを10代の若者に向けて始めることを発表した。「ティーン・ゲットゴーイング」は従来のグループ療法と最近のインターネット技術を組み合わせ、10代の若者にオンラインによるドラッグとアルコール中毒のグループ治療を行う。治療を受ける若者は12週間、週2回のオンライン治療プログラムに8人から10人のグループで参加する。詳細は(866)Help999 もしくはwww.teengetgoing.comwww.egetgoing.com へ。

ADHDのための国立情報センター設立

 米国疾病対策センターは近頃、「注意欠陥多動症障害をもつ児童と成人の会」(CHADD)に対し、ADHDのための初めての国立情報センターを設立、運営する資金として75万ドルを授与した。国立情報センターは、CHADDが家族支援組織としての役割を果たすと共にADHDを持つ人々の利益にかなう新しい政策のイニシアチブをとること、無料の情報サービスを提供することなどを支援するものである。「CHADDにとって記念すべき進展であり、ADHDの人々が直面する課題を認識するといった点で非常に意義のある画期的な出来事である。」とCHADDの事務局長、クラーク・ロス氏は語っている。連邦政府第一公衆衛生局は、ADHDはそれが病であると言えるだけでなく、国立情報センターによる科学に基づいた調査と情報の収集、そしてその普及が当然行われるべき重大で深刻な病であると言明した。詳細はCHADDコールセンター(800)233-4050、あるいはwww.chadd.org へ。

子供の大衆文化:商品となった子供時代
医学博士 マイケル・ブローディ


 11才の太った男の子スタンリーは、学業不振と社交性に欠けるという理由から精神科の診察を受けに来た。3人兄弟の長男である彼は、自分の寝室の床に座り込んだまま、プロレスラーの人形に囲まれ、テレビのマンガを見たり、ビデオゲームをして一日を過ごしていた。そして、その間ひっきりなしに母親に向かって金切り声を上げ、次から次へとお菓子をねだるのだった。

 近頃は、子供の1日の時間の中で学校生活と友達が占める割合はほんの少しでしかない。家には電子音や映像が流れ込み、子供達は1日4、5時間もメディア漬けになっている。芸能人によって駆り立てられた大衆文化、つまり大衆を魅了し、子供時代の本当に大切な事柄を脇に追いやってしまうような文化が子供達を取り巻き、家計だけでなく、子供の行動にも影響を与えている。子供達は、バスケットボール選手のアレン・アイバーソンが履いているのと同じ靴を履いて、彼そっくりの態度をとったり、アイドル歌手のブリトニー・スピアーズが出演しているCMを見てペプシを買い、彼女のセクシーなヘソ出しルックを真似たりするのだ。

 子供達の大衆文化の根底にあるのは商品の大量販売である。

 子供による商品の大量消費は産業革命から生まれた。おもちゃを作る材料(ゴムや板金など)が安く手に入るようになったからである。また、この頃から家族の一員としての子供の存在価値がより高まり、南北戦争後、「ウールワース」や「メーシーズ」のようなチェーン店やデパートが、おもちゃの販売を始めた。1800年代後半にクリスマスが法律で定められた祝日となってから、サンタは「良い子悪い子」リストに応じて子供達におもちゃをプレセントすることが習慣になり、良い子を持つ親は子供におもちゃを与え過ぎてもそれが正当化されたので、子供を対象にした市場は爆発的に拡大した。

 新聞や雑誌などの「連載マンガ」に次いで、ラジオが当時の子供達への大量販売の主な媒体になった。『バスターブラウン』や『ローンレンジャー』、そして、私も大好きだった 『キャプテンミッドナイト』の番組キャラクターがついているだけで、新聞だけでなく、チョコレート牛乳飲料やシリアルなども売れた。子供向けテレビ番組で初の高視聴率を記録した 『ハウディードゥーディー』によって、50年代前半にはチョコレートキャンディーや番組キャラクターのついた靴が大量に売りさばかれた。また、この番組の司会者であったバッファロー・ボブは、「マテル社」や「ハスブロ社」のような玩具メーカーに、クリスマスは1年中起こりうるという発想を与えた。バービーは子供番組のCMに欠かせない存在となり、今でも世界一の売り上げを誇るおもちゃであり続けている。少女たちが痩せることに対して病的なまでに執着するのは、バービー人形だけのせいとは言わないまでも、少なからず影響を与えていることは確かである。

 1928年には子供を対象とした市場に一匹のネズミを引き連れてディズニーが参入した。そして、すぐに彼はそのネズミに自らの王国を与えた。発明者であり芸術家であるディズニーは、アニメの中に新しい技術や音楽、色彩を用いただけでなく、あらすじや登場人物にも注目した。彼の偉大な才能は、グリム童話の残虐性(『シンデレラ』の話の「義理の姉達が足を削ってまでガラスの靴を履いた」というくだり)をもっと受け入れられ易い「ディズニー版」に描き変えたところにある。ディズニーランドやディズニーワールドのような大規模プロジェクトはアメリカの大衆文化の金字塔であり、毎年数えきれないほどの人々がアナハイムやオーランドへ繰り出している。今や、まさに「マジック・キングダム(魔法の王国)」と化したウォルト・ディズニー社の統治者となったマイケル・アイズナー会長は、80年代前半に会社の大規模な垂直的、水平的拡大を図った。その中には大型旅客船や「教育関係の」ソフトウェア、映画会社「ミラマックスフィルム」、ケーブルテレビ局(ESPN、Lifetime、E、A&E)、テレビ局ABCなどが含まれている。昨今の東京やパリのディズニーランドでも見られるように、世界中の人々がミッキーの耳をつけている様子は、もはや一人の男性の子供っぽい空想ではなく、その空想が現実のものとなった証なのである。

 『スターウォーズ』とその数々の「続編」の作者であるジョージ・ルーカスは、大衆文化の経済に一役買ったもう一人の立て役者だ。彼は神話学者ジョセフ・キャンベルの概念を取り入れ、デススターやジェダイ騎士団が存在する幻想的な宇宙を作り上げた。最も感嘆すべき事例は、ルーカス映画『スターウォーズ』の登場人物全てに特許がついていることだ。ルーカスは特許を持つことが「フォース」よりも強い力を持ち、確実に大金が舞い込むという意味で、「自分は映画のプロデューサーではなく、玩具メーカーだ」と言っている。

 70年代には、「ストロベリーショートケーキ」という女の子とその仲間達のキャラクター人形が作られ、その人形やグッズを売るための宣伝として「彼女とその仲間達」を主人公にしたマンガ『ストロベリーショートケーキ』がテレビで放送された。70年代の代表作としては、他にもジム・ヘンソンの人形劇『セサミストリート』のキャラクターやマテル社のミニカー『ホットホィール』が挙げられる。 10代の子供向けの映画やMTVは、彼らのファッション、そして流行のビデオや音楽を提供する重要な位置を占めるようになり、90年代に放送されたドラマ『アンジェラ・15歳の日々』("My So Called Life") や、それよりも長い期間放送された『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』("Beverly Hills 90210") 、そして映画『スクリーム』や『アメリカン・サマー・ストーリー / アメリカン・パイ 2』などの物語は、思春期における物質主義とティーンエージャーの真の姿とを関連づけた。

 今日、莫大な額の資金を投入し、数々の子供向けケーブルテレビ局、やプロレス番組の放送局が、主に広告、ファストフード、おもちゃを通して市場を拡大している。元来『セサミストリート』や『ミスターロジャース』のような幼児向けの良質の教育番組を放送してきたテレビ局PBSでさえ、金の力に屈し、たった1才の乳児を対象に『テレタビーズ』を大々的に宣伝した。子供向けケーブルテレビ局「ニッケルオデオン」で放送されている新番組『スポンジボブ』や、最新版の『パワーレンジャー』そして人気はあるが暴力的な日本のアニメなどが次々とグッズの販売競争を巻き起こしている。

 こういった大衆文化は子供の精神面に影響を与える。子供の心は、浅はかな大量消費社会の餌食になった無抵抗の受け皿も同然だ。子供時代は今、想像力に欠けた暴力的なストーリーと、肥満の元のスナック菓子、無作法な言動、そして、感動も創造性もない物語であふれかえっている。

 医学博士マイケル・ブローディは American Academy of Child and Adolescent Psychiatry(米国児童青年精神医学会)テレビ/メディア委員会の委員長と Popular Culture Association(ポピュラー文化研究会)芸能人部門の委員長を務めている。



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, January 2003
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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