8月 |
〜わが子に願いを持たないなんて!(5/5)〜
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<今月の本>ミヒャエル・エンデ作 『オフェリアと影の一座』 |
《今月のファンタジー絵本》ミヒャエル・エンデ作『オフェリアと影の一座』
(矢川澄子訳/F・ヘッヘルマン絵/岩波書店) 物語は、ここで終わってもよいようなところから、始まります。 実は、この影法師は「だれのものでもない影」なのです。オフェリアさんは、さびしがる影法師をわが身に引き受けて、影が2つになります。うわさをきいた「だれのものでもない影」や「だれのものにもなりたくない影」たちが、つぎつぎにオフェリアさんのところへやってきます。狭い部屋が影たちでいっぱいになり、とうとうケンカまで始めたから大変。オフェリアさんは自分が覚えた世界の名作を影たちに教えて、芝居をさせます。−−これがほんとの「影絵芝居」というわけ。 ところが、しだいに、気味が悪い人だと怪しまれたオフェリアさんは、部屋を追い出されてしまうのです。トランク一つと影たちを折り畳んで詰め込んだハンドバックをもって、オフェリアさんは、当てもなく旅にでます。ついに、浜辺までたどり着くと、絶望と疲労でしゃがみこんでしまうのです。−−この海辺の光景がとても美しいのですが、小学校2年生の男の子が、「きれいだねえ……」とつぶやいたそうです。子どもには、こんな絵は難しくてわからないだろう、なんて、おとなの勝手な思い込みです。 絶望は希望の始まりです。影法師たちは、オフェリアさんに、いまこそ恩返しをしようと決心します。さて、どうしようというのでしょう。ヒントは、影たちがオフェリアさんに教わった「特技」を活かすこと。こうして、「オフェリアと影の一座」が誕生します。村々を旅して公演を続けていきます。これで、めでたしめでたしかと思いきや、オフェリアさんをとんでもないものが待ち受けていました。 私はオフェリアさんの一生を思いながら、親が子へ心を伝えることの難しさと大事さ、そして、生きることの光と影を、つくづく考えました。 |
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