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1月
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〜新しい「隣人」の大切さ(6/6)〜

<今月の本>宮沢賢治作 『セロひきのゴーシュ』



◆隣人が芸術家を育てる◆

 もう20年も前のことですが、作曲家の林光さんが、宮沢賢治が好きで、ことに『セロひきのゴーシュ』は大好きだと語っておられました。そして、この物語は「民衆が芸術家を育てる、育むことを教えている」ことに感銘を受けると言っておいででした。

 その頃に私たちが創設した「ジルベルトの会」(子どもの本を楽しむ会)の会報、月刊『風のたより』に書いたこともありますが、私には、民衆という大がかりなものよりは、もっと身近に、「隣人が」という気がします。

 当時、私はあるつらい体験から、自分の知らない間に、いかに私がたまたまめぐり合った「隣人」ともいうべき多くの人に支えられ、助けられているかを思い知ったからでもありました。「汝、隣人を愛せよ」という聖書のことばにも繋がるのかもしれません。
 ゴーシュを訪れた三毛猫も、かっこうも、たぬきも、野ねずみも、ゴーシュが意識しないで出会っていた、まさに、彼の隣人たちではありませんか。

私の言う「隣人」とは、必ずしも自宅の近くの隣人だけではありません。職場にも隣人がいます。遠く離れた実家にも、学生なら学校にもいるはずです。要するに、自分の意図とは必ずしも関係なく、たまたまめぐり合い、出会った人々といってもいいでしょう。

 ここで「芸術家」ということばを「子ども」と置き換えてみてもいいのではないでしょうか。親の愛や兄弟姉妹との生活が、子どもの成長に欠かせないのはいうまでもありません。しかし、それらだけでは、やはり何かが足りないように思います。
 私たちが気づかないだけで、実は身近に、ユーモラスな三毛猫や生真面目なかっこうやおしゃまな子だぬきや、野ねずみのおばさんがいるのではありませんか?


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