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2001.1.12
ポスト・モバイルインターネットの世紀
CRN顧問・東京大学名誉教授
石井威望

 21世紀は、IT・ゲノム・ナノテクが渾然一体となった新しい技術文明の世紀になるであろう。その担い手になる子どもたちには、伝統的な文化や技術文明を継承する「学び」の環境を支援することに加えて、新しい技術文明に適応できる能力を「育てる」環境が必要である。
 新しい技術文明における不可欠の構成要素の1つは、明らかにITであるが、これはグーテンベルグ以来の大変革いわゆるパラダイム・シフトではないかと思われる。現在進行しているITの技術革新は、「ドッグ・イヤー」と呼ばれる程のスピードをもっている。中でも、モバイル・インターネットの領域が21世紀開幕に際して最先端(リーディング・エッジ)となり、在来のパソコンから主役の座を奪い始めた。日本に於いては、世界に先駆けて携帯電話でインターネットを使う「iモード」などが爆発的に普及し、2001年3月にはiモードだけでも2000万の加入者が予測され、iモード以外を加えれば3000万近くになるに違いない。要するに、子どもたちの「育ち」の場が決定的に変化してきたわけであり、極言すれば「iモード」を抜きにした「育ち」も「学び」も現実味を失い始めた。いわば、iモードは新しい紙、無線通信機能付きの紙の登場とも考えられる。この紙は、瞬時に世界中と交信できる手紙「電子メール」でもある。子どもたち(小学生中心に)とこの新しい紙との相性は、滅法良いことが実験してわかった。この巨大な潜在能力を適切に育て、顕在化することが新しい学びかも知れない。いずれ、ポスト・モバイル・インターネットの時代には、衣服と一体化したウェアラブル・インターネットも必要になる筈だ。このように、外見は目まぐるしく変って行く(流行)であろうが、中味(コンテンツ)は不変(不易)な古典などが絶対に残り続けるに違いない。



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