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廣瀬通孝(ひろせ・みちたか)


マルチメディアのいま 〜VRの世界〜


 コンピュータという機械がこの世に生まれて約50年の年月が経過した。この機械の特色を一つあげろといわれれば、その進歩のはやさと答えたい。最近のコンピュータの能力向上の割合は年々倍増の勢いだそうである。単純計算では10年で1000倍という信じがたい数字になる。

 マイコン元年とか言われた1980年ごろのコンピュータの記憶容量は、数K(キロ) byteであったし、データの伝送速度は数K(キロ) bit/sであった。それが1990年に入るとワークステーションが登場する。その能力は、M(メガ)のオーダである。従って現在は「メガの時代」ということができる。21世紀の初頭には、Gという単位が登場すると言われている。「ギガの時代」は目前である。

 このとんでもない量的な能力拡大は、当然の結果として質的変化をひきおこす。キロの時代に、文字や数字しかとりあつかえなかったコンピュータは、メガの時代には、写真すなわち静止画がとりあつかえるようになった。ギガの時代には動画情報がコンピュータで処理される。つまり、コンピュータとテレビの区別がつかなくなるであろう。

 マルチメディアとは、すべての情報がコンピュータ上で統合されることを意味する。以上のコンピュータの進化を考えれば当然の帰結であろう。

 マル チメディア技術の中で、もっとも最先端なもののひとつがバーチャル・リアリティの技術である。コンピュータによってつくり上げられた仮想空間の中で人間はさまざまな活動をし、自らの体験しうる世界を広げることができるのである。今や、コンピュータは、われわれにとっての活動空間の生成装置なのである。

 生育過程における子どもにとって、この新しいコンピュータ世界は、良きにつけ悪しきにつけ、気になる存在である。さまざまな新しい体験を、きわめて強力な仕方で子どもに与えることになるであろう。

 バーチャル・リアリティの技術の発明を、コロンブスのアメリカ大陸発見になぞらえる人もいるくらいである。この新しい大陸に足をふみ入れて、子どもたちはどう育っていくのであろうか。

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